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春
為当神社の祭りの日(日曜日) 8
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賑やかなはずの周りの音が遠い。
優輝と連携を取りながら、サクサククエストを攻略していく。
分からない事も、大抵は優輝に聞けば答えてくれる。
どれだけこなしたか分からないけど、ザワザワと人の波がこちらにやって来る。ちょうど今、クエストクリアして一通り終わった所だった。
「優輝、そろそろじゃね?」
「おぅ、今からチビ達だな。」
小さな子供達がこぞって、足場を組まれた高い餅投げをする場所の前へと走って行く。
ゲーム機をオフにしてポーチにしまう。
優輝も同じようにゲーム機をポーチにしまった。
盛り上げ隊の人達が、集まっている小さな子供達を守るように立っている。
母さんや智子さんから聞いた話だと、昔子供達を押し退けて餅拾いをした大人がいたらしい。それから子供達を守る為に、怖い思いをさせない為にそういった強引な大人が入らないように人の輪でガードする事になった……って。
大人げないとも思うし、カッコ悪い。
俺も優輝も餅投げ待ちの大人達にまじる。ウロチョロしている見るからに小さい子供に声をかけて前に押し出すのも、大人の役割だと思う。
「すいませーん!参加のチビちゃん通して下さーい!」
「子供が前に行きまーす!」
智子さんと母さんの声が聞こえて、人垣が少し開く。
「ほら、こっち。すいませーん!開けて下さーい!」
優輝が小さな子供の背を押して、前に進ませる。
「すいません、子供が通るんで開けて下さい。」
目の前の大きな男性に声をかけると、ムッとした顔で少しだけ体をずらした。ちょっとだけ怯えてる子供に前を指差す。
少しだけ開けた隙間から見える場所に立っている盛り上げ隊の人に向かって声をかける。
「すいません!すいませーん!こっちです!子供が行きます!」
「おっ!おおっ!ありがとな!ちょっと!そこ、開けて!」
チッ!と舌打ちが上から聞こえたけど、なんで舌打ちなんかするんだよ!デカイ図体で通せんぼするからだろ!舌打ちしたいのは、こっちだよ。子供の背を押し、盛り上げ隊の人に渡す。
あちこちから遅れて来た子供達も前に集まったところで、合図が鳴って餅投げが始まった。楽しそうな必死そうな子供達の声、せがむ声も当然あちこちから聞こえる。クジ付きで景品目当ての子供達は一生懸命だ。
そんな騒がしさもあっという間に終わってしまう。
準々に子供達がはけていく……盛り上げ隊の人達は動かない。はけ終わるまで危ないからだ。マイクで台の上からも注意が飛ぶ。
やがて子供達がはけると盛り上げ隊の人達が一斉にはけて、場所あける……あっという間に大人達が場を埋め尽くす。当然俺達もいた。人並みもあるから、逆らう事も出来ず前に押し出される。さっきのデカイ奴は俺達の少し後ろに居た……けど、母さんがその真横位に居た……え?智子さんはデカイ奴の真ん前……どんな布陣なの?そしていつの間に?直視出来なくてパッとそらしたけど、何……何なの?母さん達何考えてるの?
合図が鳴って餅投げが始まった。俺も優輝もジャンプしてタオルや手拭いを何とか掴む。藁包みも飛んでくるけどちょっと方向が違うから、手は伸ばさない。始まってしまえば、やっぱり取ってしまう!餅投げがある以上ビニール袋はついつい持参してしまうのは、既に習性と言っても良い。腕に通したビニール袋に手早くどんどん受け取った餅を突っ込んでいく。そこら辺は優輝も一緒だ。
あっという間に餅投げは終わり、それぞれ家族で纏まって餅チェックが始まる。
俺も優輝も母さん達に合流して……って母さんが藁包みを取っていた。
餅を真剣な眼差しで見ていく……これは俺だけじゃなくて、この場にいる全員がだ!
「あっ!あった!」
優輝が嬉しそうに見せてくる、タオルを解いて入っていた餅に……あった!
「俺も!」
見せ合った餅に入った色紙は同じ色だった。
「あっ!入ってたぁ!ラッキー!」
「私も~!当たり~!」
母さんと智子さんも当たりが入ってたらしい……って見えた色紙は俺達のと同じだった。
「一緒だったな。」
「あれじゃね?ティッシュとかだろ。」
結局貰ったのは、やはりティッシュで優輝んちが計四個。俺んちが三個だった。母さんはホクホクだったようだ。
「沢山拾っても、一個も貰えない人もいるんだよ!二人で三個なら上等でしょ!」
そう言って智子さんと笑い合う母さんは、いつでもポジティブで良いなぁと思った。
「良かったな!」
白様に声を掛けられ、母さんは白様の方を見てニッコリと笑った。小さく「はい。」と囁くように呟いて……俺もペコリと頭を下げて、誰にも聞こえないように「ありがとうございます。」と呟いた。
優輝と連携を取りながら、サクサククエストを攻略していく。
分からない事も、大抵は優輝に聞けば答えてくれる。
どれだけこなしたか分からないけど、ザワザワと人の波がこちらにやって来る。ちょうど今、クエストクリアして一通り終わった所だった。
「優輝、そろそろじゃね?」
「おぅ、今からチビ達だな。」
小さな子供達がこぞって、足場を組まれた高い餅投げをする場所の前へと走って行く。
ゲーム機をオフにしてポーチにしまう。
優輝も同じようにゲーム機をポーチにしまった。
盛り上げ隊の人達が、集まっている小さな子供達を守るように立っている。
母さんや智子さんから聞いた話だと、昔子供達を押し退けて餅拾いをした大人がいたらしい。それから子供達を守る為に、怖い思いをさせない為にそういった強引な大人が入らないように人の輪でガードする事になった……って。
大人げないとも思うし、カッコ悪い。
俺も優輝も餅投げ待ちの大人達にまじる。ウロチョロしている見るからに小さい子供に声をかけて前に押し出すのも、大人の役割だと思う。
「すいませーん!参加のチビちゃん通して下さーい!」
「子供が前に行きまーす!」
智子さんと母さんの声が聞こえて、人垣が少し開く。
「ほら、こっち。すいませーん!開けて下さーい!」
優輝が小さな子供の背を押して、前に進ませる。
「すいません、子供が通るんで開けて下さい。」
目の前の大きな男性に声をかけると、ムッとした顔で少しだけ体をずらした。ちょっとだけ怯えてる子供に前を指差す。
少しだけ開けた隙間から見える場所に立っている盛り上げ隊の人に向かって声をかける。
「すいません!すいませーん!こっちです!子供が行きます!」
「おっ!おおっ!ありがとな!ちょっと!そこ、開けて!」
チッ!と舌打ちが上から聞こえたけど、なんで舌打ちなんかするんだよ!デカイ図体で通せんぼするからだろ!舌打ちしたいのは、こっちだよ。子供の背を押し、盛り上げ隊の人に渡す。
あちこちから遅れて来た子供達も前に集まったところで、合図が鳴って餅投げが始まった。楽しそうな必死そうな子供達の声、せがむ声も当然あちこちから聞こえる。クジ付きで景品目当ての子供達は一生懸命だ。
そんな騒がしさもあっという間に終わってしまう。
準々に子供達がはけていく……盛り上げ隊の人達は動かない。はけ終わるまで危ないからだ。マイクで台の上からも注意が飛ぶ。
やがて子供達がはけると盛り上げ隊の人達が一斉にはけて、場所あける……あっという間に大人達が場を埋め尽くす。当然俺達もいた。人並みもあるから、逆らう事も出来ず前に押し出される。さっきのデカイ奴は俺達の少し後ろに居た……けど、母さんがその真横位に居た……え?智子さんはデカイ奴の真ん前……どんな布陣なの?そしていつの間に?直視出来なくてパッとそらしたけど、何……何なの?母さん達何考えてるの?
合図が鳴って餅投げが始まった。俺も優輝もジャンプしてタオルや手拭いを何とか掴む。藁包みも飛んでくるけどちょっと方向が違うから、手は伸ばさない。始まってしまえば、やっぱり取ってしまう!餅投げがある以上ビニール袋はついつい持参してしまうのは、既に習性と言っても良い。腕に通したビニール袋に手早くどんどん受け取った餅を突っ込んでいく。そこら辺は優輝も一緒だ。
あっという間に餅投げは終わり、それぞれ家族で纏まって餅チェックが始まる。
俺も優輝も母さん達に合流して……って母さんが藁包みを取っていた。
餅を真剣な眼差しで見ていく……これは俺だけじゃなくて、この場にいる全員がだ!
「あっ!あった!」
優輝が嬉しそうに見せてくる、タオルを解いて入っていた餅に……あった!
「俺も!」
見せ合った餅に入った色紙は同じ色だった。
「あっ!入ってたぁ!ラッキー!」
「私も~!当たり~!」
母さんと智子さんも当たりが入ってたらしい……って見えた色紙は俺達のと同じだった。
「一緒だったな。」
「あれじゃね?ティッシュとかだろ。」
結局貰ったのは、やはりティッシュで優輝んちが計四個。俺んちが三個だった。母さんはホクホクだったようだ。
「沢山拾っても、一個も貰えない人もいるんだよ!二人で三個なら上等でしょ!」
そう言って智子さんと笑い合う母さんは、いつでもポジティブで良いなぁと思った。
「良かったな!」
白様に声を掛けられ、母さんは白様の方を見てニッコリと笑った。小さく「はい。」と囁くように呟いて……俺もペコリと頭を下げて、誰にも聞こえないように「ありがとうございます。」と呟いた。
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