お狐様にお願い!

竹本 芳生

文字の大きさ
上 下
46 / 57

為当神社の祭りの日(日曜日) 7

しおりを挟む
母さんの言葉に頭の中はぐるぐるしてたけど、オムソバは普通に美味しかったしおにぎりもまぁまぁ食べれた。

「……うん……母さんのが美味い…………」

「隼、お前そーゆー事言うなよ。確かに美香さんのご飯美味いけど!」

たまーに弁当のおかずを奪われて、優輝は母さんの料理の味を知ってる。
食べるたんびにブチブチ言われるから、ウンザリする。
食べ終わってゴミを持って優輝と一緒に厨房?に向かう。ゴミ袋はあっちにあるからだ。

「優輝そろそろ和室から出て、向こうに行ってね!」

「あっ!隼も行きなよ-!こっち、そろそろ巫女ちゃん達来るから!」

「「はいっ!」」

俺達は返事をすると、和室に戻って荷物を持って集会所を出る。
道中、巫女ちゃん達とそのお母さん達とすれ違った。

「隼、向こうでゲームしようぜ。」

「ん?ああ……分かった。」

多分、優輝の最大のお目当ての餅投げまでやる気だな……思わず、ジト目で見る。ハハハ……と笑う優輝。

「俺のコト分かってくれてる隼には、感謝感謝だよ!母さんの目につくトコだと怒られるからさぁ。」

「優輝がちゃんと勉強してれば、智子さんもあんまり怒らないと思うぞ。」

「んー勉強かぁ……」

「成績とかテストとか……その辺をある程度キープしとけば良いんだよ。素行は悪くないんだし、ちょっと頑張れよ。成績良いと親も優しいぞ。」

「マージかぁ……頑張るかな……」

神社について玉垣の辺りまで歩いてく。

「マジだって。俺、ソフト自分で買ってないもん。」

「ハアッ!マジか!」

優輝は自分のお小遣いから買っている。しかも中学からだ……俺は今までずっと買って貰っていた。母さんいわく『ちゃんと勉強してるご褒美かなぁ?』らしい。

「マジです。俺が持ってるソフトもゲーム関係全部、親からだよ。」

「スゲー羨ましいんですけど。」

「母さん、学生の本分は勉強でその結果が成績だったりテストだから結果を出してる以上認めないと!って父さんを説き伏せてた。父さんの本分は仕事で結果を出してるからお給料とかボーナス貰って来るでしょって……そう言う所は子供だからとか大人だからってのと違うでしょ!だって。お母さんはそんな父さんや俺が毎日つつがなく過ごせるようにするのが本分なので、やってます!そのご褒美はちゃんと父さんから貰ってますよ!父さんは仕事して私達を養ってくれる社長さんみたいなもんだけど、社員を大事にしない会社からは社員は逃げちゃうから大事にしてね!だって……」

「なる程なぁ……」

「母さんの考え方ってちょっと一般的じゃないかもって思ったけど、それぞれに立場とか役割があるからいきなり理解しろとは言わないけど知ってるだけで違うって言われた。隼は子供で学生だから、勉強をちゃんとする事と親の意見はとりあえず耳に入れておきなさいって……聞く聞かないは大きくなれば判断出来ると思うけど、お父さんもお母さんも隼の事を考えてるし心配してる事を知っていて欲しい……って。今は学生だから子供だから良いけど、大人になって社会に出たら自分の結果がお金とか評価とか信頼とかリアルにダイレクトに分かるようになるわよって言われてさぁ……それからかなぁ、マジで頑張らないとって思ったのはさ。」

チラッと見た優輝はマジな顔で、俺の事を見ていた。

「…………隼の母さんてスゲェな…………」

「だってマジで恐くない?学生のうちに頑張った分だけ、社会に出た時に評価されて生活が変わるって言われたらさぁ……勉強だけじゃないぞぉ~とかも言われたしさぁ……」

「えっ!」

「勉強だけなら学校の必要性は少ないって気が付け~!だって、集団生活や人付き合いとかもだな!って笑ってた。上下関係や集団の中での事も勉強の内かな?…………母さんはいじめられっ子は助けても良いと思うけど、やり方はちゃんと考えろって言ったな……いじめっ子は付き合うなって言った。」

「普通、逆じゃね?」

「俺もそう思った。でも……いじめっ子は社会に出たらアウトローか犯罪者になる確率が高いからダメだって。本人は上手くやってるつもりでも、すぐにバレて人が離れる…社会はそんなに甘くないって。」

「コエーよ……」

「学生でやってけるのは十数年だけ、社会は何十年もあるそれこそ死ぬまでだよ。縛りなんて会社か地域位のペラッペラなもので、気に入らない人間を切る事に躊躇う人は少数派だよって。だいたい卒業したら、自分の好きな人間としか連絡取らないでしょっ!って……確かに俺、同中の奴で連絡とってるの仲の良かった数人だけだもん。納得するしかないよ。」

「確かに……そっか……そうだな。俺、もうちょっと頑張るわ。」

「でも、今はゲームしたいんだろ?日曜だし。」

「おぅ、餅投げまでの間だけな。」

ひとしきり笑い合い、ゲームを始めた。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない

めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」 村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。 戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。 穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。 夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。

ハピネスカット-葵-

えんびあゆ
キャラ文芸
美容室「ハピネスカット」を舞台に、人々を幸せにするためのカットを得意とする美容師・藤井葵が、訪れるお客様の髪を切りながら心に寄り添い、悩みを解消し新しい一歩を踏み出す手助けをしていく物語。 お客様の個性を大切にしたカットは単なる外見の変化にとどまらず、心の内側にも変化をもたらします。 人生の分岐点に立つ若者、再出発を誓う大人、悩める親子...多様な人々の物語が、葵の手を通じてつながっていく群像劇。 時に笑い、たまに泣いて、稀に怒ったり。 髪を切るその瞬間に、人が持つ新しい自分への期待や勇気を紡ぐ心温まるストーリー。 ―――新しい髪型、新しい物語。葵が紡ぐ、幸せのカットはまだまだ続く。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

迷子のあやかし案内人 〜京都先斗町の猫神様〜

紫音@キャラ文芸大賞参加中!
キャラ文芸
【キャラ文芸大賞に参加中です。投票よろしくお願いします!】 やさしい神様とおいしいごはん。ほっこりご当地ファンタジー。 *あらすじ*  人には見えない『あやかし』の姿が見える女子高生・桜はある日、道端で泣いているあやかしの子どもを見つける。 「”ねこがみさま”のところへ行きたいんだ……」  どうやら迷子らしい。桜は道案内を引き受けたものの、”猫神様”の居場所はわからない。  迷いに迷った末に彼女たちが辿り着いたのは、京都先斗町の奥にある不思議なお店(?)だった。  そこにいたのは、美しい青年の姿をした猫又の神様。  彼は現世(うつしよ)に迷い込んだあやかしを幽世(かくりよ)へ送り帰す案内人である。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...