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春
中条神社の祭りの夜 4
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ひとしきり撫でられた後、白様は俺の隣に戻って座っていた。
どれだけの時間そうしていたのか分からなかった。
「隼、こんなトコでどうしたよ?」
呑気な様子で優輝が声を掛けてきた……
「どうもしてない。ただ……何となくだよ。」
言える訳ないだろ、好きな子といた……とか。どこにいんだよ?ってツッコまれるのがオチでさ……俺、痛い子扱いされるじゃん。
「ふぅん……さっき、母さんがまっすぐ帰らずにどっかでお茶する?って言ってたぞ。」
「そっか……どうせマックかミスドだろ?」
「だな。俺はどっちでも良いし。隼は?」
「俺もどっちでも良い。」
てか、途中で降ろしてくれれば歩いて帰るのに……白様の前で俺だけお茶すんの?そんなの嫌に決まってるじゃん。
「とりあえず、母さん達に隼も茶ーするって伝えてくる。」
優輝は微妙な顔で、くるりと踵を返して行った。
「隼、せっかくの友人がつまらなさそうだったぞ。友人が一緒ならば、友人と楽しめば良かったではないか。」
白様の言う事は最もだ、そんなの分かってる!でも言われたくない!
「おっ……俺は、シロと見たかったんだっ……」
「そうだったな。すまない。でも、隼には友人と楽しく過ごして貰いたかったんだ……つまらぬ事を言った。」
シュンとした白様の顔を見て、そんな顔をさせたかった訳じゃないのにそんな顔をさせた自分自身にイラつく。
「ゴメンッ……シロが俺の事考えてくれてるの、分かってる……でも、それよりも俺の気持ちの方……優先して……」
ギュッと白様の手を握る力が強くなる。
キュッと俺の手が握り返された。
「すまなかった。今日は隼と手筒花火が見れて楽しかった。」
一発しか見てないのに、そう言って笑う白様の笑顔はとにかく可愛くて可愛くて夢に見そうだった。
「おーい!隼!」
人混みをかき分けて、慌てて来たのは優輝だった。
なんだよ雰囲気ぶち壊しだよ!
「隼!お茶すんの、コスタリカだってよ!珍しくね?」
「おう、珍しいな。」
本当に珍しい、どうかしたんだろうか?
「美香さんが、今日はコスタリカって言いだしたんだよ。」
母さんが……?珍しいな。いっつも主導権は智子さんに任せてるのに。
「ふぅん……珍しいけど、マッタリしたかったんじゃね?」
「かな?でもラッキーだな!何か食おうぜ。」
「んー、行ってから決める。」
「じゃあ、俺母さん達んトコいるわ。隼はここにいんの?」
ソワソワしっぱなしだな、分かるけど。
「おう、暫くはここにいるよ。居なかったら電話して。」
「おう!」
返事もそこそこに、ワタワタと人混みに紛れた優輝はあっという間に分からなくなった。
「隼、乱玉をやるみたいだぞ。」
白様の言葉にハッとする。なんで『お茶』なのか、乱玉が終われば祭りも終わりだ。夜は基本的に出歩かない、だから『お茶』して気晴らしをしようって事だ。
「シロ!乱玉は一緒に見よう!」
俺は立ち上がって、白様の手をグイッと引っ張って少しだけ移動する。
人混みの隙間から見ればイイ!もう一度グイッと引っ張って俺の前に立たせ、後ろから抱き締めて乱玉の色取り取りの花火を見た。
仄かに香る白様の匂いは、なぜか木々の匂いだった。
どれだけの時間そうしていたのか分からなかった。
「隼、こんなトコでどうしたよ?」
呑気な様子で優輝が声を掛けてきた……
「どうもしてない。ただ……何となくだよ。」
言える訳ないだろ、好きな子といた……とか。どこにいんだよ?ってツッコまれるのがオチでさ……俺、痛い子扱いされるじゃん。
「ふぅん……さっき、母さんがまっすぐ帰らずにどっかでお茶する?って言ってたぞ。」
「そっか……どうせマックかミスドだろ?」
「だな。俺はどっちでも良いし。隼は?」
「俺もどっちでも良い。」
てか、途中で降ろしてくれれば歩いて帰るのに……白様の前で俺だけお茶すんの?そんなの嫌に決まってるじゃん。
「とりあえず、母さん達に隼も茶ーするって伝えてくる。」
優輝は微妙な顔で、くるりと踵を返して行った。
「隼、せっかくの友人がつまらなさそうだったぞ。友人が一緒ならば、友人と楽しめば良かったではないか。」
白様の言う事は最もだ、そんなの分かってる!でも言われたくない!
「おっ……俺は、シロと見たかったんだっ……」
「そうだったな。すまない。でも、隼には友人と楽しく過ごして貰いたかったんだ……つまらぬ事を言った。」
シュンとした白様の顔を見て、そんな顔をさせたかった訳じゃないのにそんな顔をさせた自分自身にイラつく。
「ゴメンッ……シロが俺の事考えてくれてるの、分かってる……でも、それよりも俺の気持ちの方……優先して……」
ギュッと白様の手を握る力が強くなる。
キュッと俺の手が握り返された。
「すまなかった。今日は隼と手筒花火が見れて楽しかった。」
一発しか見てないのに、そう言って笑う白様の笑顔はとにかく可愛くて可愛くて夢に見そうだった。
「おーい!隼!」
人混みをかき分けて、慌てて来たのは優輝だった。
なんだよ雰囲気ぶち壊しだよ!
「隼!お茶すんの、コスタリカだってよ!珍しくね?」
「おう、珍しいな。」
本当に珍しい、どうかしたんだろうか?
「美香さんが、今日はコスタリカって言いだしたんだよ。」
母さんが……?珍しいな。いっつも主導権は智子さんに任せてるのに。
「ふぅん……珍しいけど、マッタリしたかったんじゃね?」
「かな?でもラッキーだな!何か食おうぜ。」
「んー、行ってから決める。」
「じゃあ、俺母さん達んトコいるわ。隼はここにいんの?」
ソワソワしっぱなしだな、分かるけど。
「おう、暫くはここにいるよ。居なかったら電話して。」
「おう!」
返事もそこそこに、ワタワタと人混みに紛れた優輝はあっという間に分からなくなった。
「隼、乱玉をやるみたいだぞ。」
白様の言葉にハッとする。なんで『お茶』なのか、乱玉が終われば祭りも終わりだ。夜は基本的に出歩かない、だから『お茶』して気晴らしをしようって事だ。
「シロ!乱玉は一緒に見よう!」
俺は立ち上がって、白様の手をグイッと引っ張って少しだけ移動する。
人混みの隙間から見ればイイ!もう一度グイッと引っ張って俺の前に立たせ、後ろから抱き締めて乱玉の色取り取りの花火を見た。
仄かに香る白様の匂いは、なぜか木々の匂いだった。
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