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春
中条神社の祭りの夜 3
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……鈴木拓也、5斤をあげます。
奉納花火の持ち手とあげる手筒の紹介が少しだけ聞こえた。
「「拓也-!頑張れ-!」」
母さんと智子さんの応援が左側から聞こえた……キョロキョロと捜すと、左側の持ち手の人達が居る場所の近くに二人揃って手を振っていた。
……母さんは良くいるユニクロババアだけど、智子さんはいつでも可愛い恰好をしている……優輝いわく『アクシー』だかららしい。俺には良く分からない。
「ここは5斤をあげるのか。」
白様のちょっとだけ驚いた声が聞こえた。最近は良い竹が無いから、中々大きいのは見かけなくなっている。
やっぱ、太さが全然違う……あれだけ大きいと重さもかなりあるし、持ち手は凄いな!と正直思う。
独特な掛け声と種火を振り上げる動作が、今から奉納するって感じがしてワクワクする。
足で押さえられた手筒の吹き出し口に種火が近づき、シューッと音が立ち始める。
落ち着いた動作で手筒を持ち上げ、片足を前に出し体をぴったりと手筒に付けている。
手筒からは金色の火花が高く高く吹き出し金色の火柱のようだ。
手筒は自分で火薬を詰める。
持ち手の人はどれだけ詰めたんだろう……ゴォォォォォっと音を立てて吹き出す花火の高さと時間の長さに感動する。
その金色の火柱が徐々に小さくなる……最後が来る……
シュパァァァァァァンンン
ハネコの爆ぜる音と同時に吹き出し口とは逆の下から、新聞紙が燃えながら吐き出される。
ワァァァァ!と歓声と拍手が惜しみなく贈られる。
今までは俺も同じように大声をあげ、拍手をしていた……優輝も母さんも智子さんも拍手している。
俺は白様の手を離したくなくて、握ったままだった。
「隼、お前は拍手はしないのか?」
「しない。シロの手を離したくないから、しない。」
「そうか。」
グイと白様の手を握ったまま、中条神社から出ようとした。
白様は何も言わず、俺に付いて来てくれる。
鳥居を抜け、神社の石垣に沿って歩いて人混みから離れる。
と1鳥居から20歩歩いただけで、神社の喧騒が少し遠く感じる。
手を繫いだまま石垣に腰掛けると、白様は隣に同じように腰掛ける。
手筒花火の火花が吹き出る音が聞こえる……
「俺……ただ、シロと一緒に手筒が見たかったんだ……」
「そうか。私は隼と一緒に見れて、嬉しいぞ。ここの手筒花火は兎足とは趣が違うな。」
趣……?考えた事なかった……白様に言われて、中条神社の手筒と兎足神社の手筒が何か違う事に今初めて気がついた。
「俺……シロに言われるまで、気が付かなかった……」
白様はククッと笑うと、繫いだ手はそのままに石垣から降りて俺の前に立って俺の頭を撫でた。
「普通は分からぬ。だいたいが奉納する神が違うのだ、その神が好むように変わって行くものだ。」
「神が違う……俺、そこまで考えた事無いや……」
ちょっと凹む。
「ふむ……考える者なぞ、居るかな?まぁ、居たとしても少ないだろうなぁ。」
頭をゆっくり撫で続ける白様の優しい手に涙が出そうになる。
ずっと撫で続けてほしい……
シロ……白様……俺さ……俺、白様のコト好きなんだよ。
好きな女の子に、頭を撫でられるってご褒美なんだよ……
「そっか……そうなんだ…………」
神様……この優しい時間をありがとうございます。
奉納花火の持ち手とあげる手筒の紹介が少しだけ聞こえた。
「「拓也-!頑張れ-!」」
母さんと智子さんの応援が左側から聞こえた……キョロキョロと捜すと、左側の持ち手の人達が居る場所の近くに二人揃って手を振っていた。
……母さんは良くいるユニクロババアだけど、智子さんはいつでも可愛い恰好をしている……優輝いわく『アクシー』だかららしい。俺には良く分からない。
「ここは5斤をあげるのか。」
白様のちょっとだけ驚いた声が聞こえた。最近は良い竹が無いから、中々大きいのは見かけなくなっている。
やっぱ、太さが全然違う……あれだけ大きいと重さもかなりあるし、持ち手は凄いな!と正直思う。
独特な掛け声と種火を振り上げる動作が、今から奉納するって感じがしてワクワクする。
足で押さえられた手筒の吹き出し口に種火が近づき、シューッと音が立ち始める。
落ち着いた動作で手筒を持ち上げ、片足を前に出し体をぴったりと手筒に付けている。
手筒からは金色の火花が高く高く吹き出し金色の火柱のようだ。
手筒は自分で火薬を詰める。
持ち手の人はどれだけ詰めたんだろう……ゴォォォォォっと音を立てて吹き出す花火の高さと時間の長さに感動する。
その金色の火柱が徐々に小さくなる……最後が来る……
シュパァァァァァァンンン
ハネコの爆ぜる音と同時に吹き出し口とは逆の下から、新聞紙が燃えながら吐き出される。
ワァァァァ!と歓声と拍手が惜しみなく贈られる。
今までは俺も同じように大声をあげ、拍手をしていた……優輝も母さんも智子さんも拍手している。
俺は白様の手を離したくなくて、握ったままだった。
「隼、お前は拍手はしないのか?」
「しない。シロの手を離したくないから、しない。」
「そうか。」
グイと白様の手を握ったまま、中条神社から出ようとした。
白様は何も言わず、俺に付いて来てくれる。
鳥居を抜け、神社の石垣に沿って歩いて人混みから離れる。
と1鳥居から20歩歩いただけで、神社の喧騒が少し遠く感じる。
手を繫いだまま石垣に腰掛けると、白様は隣に同じように腰掛ける。
手筒花火の火花が吹き出る音が聞こえる……
「俺……ただ、シロと一緒に手筒が見たかったんだ……」
「そうか。私は隼と一緒に見れて、嬉しいぞ。ここの手筒花火は兎足とは趣が違うな。」
趣……?考えた事なかった……白様に言われて、中条神社の手筒と兎足神社の手筒が何か違う事に今初めて気がついた。
「俺……シロに言われるまで、気が付かなかった……」
白様はククッと笑うと、繫いだ手はそのままに石垣から降りて俺の前に立って俺の頭を撫でた。
「普通は分からぬ。だいたいが奉納する神が違うのだ、その神が好むように変わって行くものだ。」
「神が違う……俺、そこまで考えた事無いや……」
ちょっと凹む。
「ふむ……考える者なぞ、居るかな?まぁ、居たとしても少ないだろうなぁ。」
頭をゆっくり撫で続ける白様の優しい手に涙が出そうになる。
ずっと撫で続けてほしい……
シロ……白様……俺さ……俺、白様のコト好きなんだよ。
好きな女の子に、頭を撫でられるってご褒美なんだよ……
「そっか……そうなんだ…………」
神様……この優しい時間をありがとうございます。
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