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遠い世界で
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「母さん、支度は出来たかい?」
「お花もお供え物もお線香も持ってますよ」
大きな戸建ての駐車場、シルバーのレクサスに初老の夫婦がやって来る。
駐車場の端に停めてある白いUSVタイプのレクサスに目をやり、寂しげに眉を寄せる男性。
かつて次男が里帰りの度に乗り回した車は、今ではたまに帰って来る長男へと名義変更した。
「貴方?」
「ん?ああ……何でもない」
女性は夫の気持ちを慮り何も言わずに手荷物を持ったまま助手席へと乗り込んだ。
男性も運転席へと乗り込み、静かに滑るように駐車場から車道へと車を走らせた。
彼等の子供はかつて三人いた。
皆、自慢の子供達だった。
個性的で頭が良く、人の痛みが分かる……でも、ある日子供達は三人から一人になった。
不幸な事故だった。
三人兄妹の下二人は東京で働き、恋人も出来、明るい将来が待ってると思っていた。
なのにその二人が一緒に出掛けた先で事故にあい、次男はほぼ即死。娘は意識不明の重体だったが、一年の闘病虚しく亡くなった。
「ねぇ……もう三回忌なのよね……一緒に亡くなったお嬢さんだって、まだお若かったのにね……」
この事故で次男と年若い少女が死亡し、その後で娘も死んだ。
イギリス留学していた長男は大急ぎで帰国して泣きに泣いた。
近くにいた者達は殆どが若者で軽傷者ばかりではあったものの、大きな事故としてニュースにもなった。
「ああ……あちらさんは何だか素っ気なかったな。今思えば大分変な感じだったな」
「ええ……落ち着いてらっしゃったしねぇ……綾ちゃんが亡くなった時、私本当に寂しくてズイフ泣いたわ……」
「そうだな。龍のやつが死んで、俺も親父も随分泣いたし相手の事を恨んだよ。特に親父は龍が跡取りだったから、ガックリしてたな」
「ペダルの踏み間違いでなんてねぇ……そう言えばお義父さん、源ちゃんの子供を養子にするって言ってたわね。凛々花さんも納得したのね」
幹線道路を走る車の操作には淀みは無い。何度となく通った道だった。
「ああ、元々は龍の恋人だったし事情も聞いていたのも大きかったからだろうな。まさか源のやつが口説き落とすとは思いもしなかったがな」
「そうねぇ。凛々ちゃん、凄く良いお嬢さんだから源ちゃんのお嫁さんになってくれるなんてねぇ……」
「そうだな。女っ気無かった源が泣いてる凛々花さんを慰めて、口説くなんて思いもしなかったからな。大切にしないとな」
「ええ、本当に。ねぇ……二人の新居どうします?うちに来て貰うんですし、ちゃんと用意しないと恥ずかしいものねぇ」
「最近出来た大きい病院の近くはどうだ?新興とは言えスーパーも近いし、開発もかなり進んで来たしな」
「ああ!あそこね!良いんじゃないかしら?一度、聞いてみて問題無ければ手を打って下さいな」
「任せとけ。こう言うのは早い方が良いからな」
「ええ!」
車は幹線道路から外れ、大きな寺院へと走る。
今はもういない二人の子供が眠る墓地へと。
「お花もお供え物もお線香も持ってますよ」
大きな戸建ての駐車場、シルバーのレクサスに初老の夫婦がやって来る。
駐車場の端に停めてある白いUSVタイプのレクサスに目をやり、寂しげに眉を寄せる男性。
かつて次男が里帰りの度に乗り回した車は、今ではたまに帰って来る長男へと名義変更した。
「貴方?」
「ん?ああ……何でもない」
女性は夫の気持ちを慮り何も言わずに手荷物を持ったまま助手席へと乗り込んだ。
男性も運転席へと乗り込み、静かに滑るように駐車場から車道へと車を走らせた。
彼等の子供はかつて三人いた。
皆、自慢の子供達だった。
個性的で頭が良く、人の痛みが分かる……でも、ある日子供達は三人から一人になった。
不幸な事故だった。
三人兄妹の下二人は東京で働き、恋人も出来、明るい将来が待ってると思っていた。
なのにその二人が一緒に出掛けた先で事故にあい、次男はほぼ即死。娘は意識不明の重体だったが、一年の闘病虚しく亡くなった。
「ねぇ……もう三回忌なのよね……一緒に亡くなったお嬢さんだって、まだお若かったのにね……」
この事故で次男と年若い少女が死亡し、その後で娘も死んだ。
イギリス留学していた長男は大急ぎで帰国して泣きに泣いた。
近くにいた者達は殆どが若者で軽傷者ばかりではあったものの、大きな事故としてニュースにもなった。
「ああ……あちらさんは何だか素っ気なかったな。今思えば大分変な感じだったな」
「ええ……落ち着いてらっしゃったしねぇ……綾ちゃんが亡くなった時、私本当に寂しくてズイフ泣いたわ……」
「そうだな。龍のやつが死んで、俺も親父も随分泣いたし相手の事を恨んだよ。特に親父は龍が跡取りだったから、ガックリしてたな」
「ペダルの踏み間違いでなんてねぇ……そう言えばお義父さん、源ちゃんの子供を養子にするって言ってたわね。凛々花さんも納得したのね」
幹線道路を走る車の操作には淀みは無い。何度となく通った道だった。
「ああ、元々は龍の恋人だったし事情も聞いていたのも大きかったからだろうな。まさか源のやつが口説き落とすとは思いもしなかったがな」
「そうねぇ。凛々ちゃん、凄く良いお嬢さんだから源ちゃんのお嫁さんになってくれるなんてねぇ……」
「そうだな。女っ気無かった源が泣いてる凛々花さんを慰めて、口説くなんて思いもしなかったからな。大切にしないとな」
「ええ、本当に。ねぇ……二人の新居どうします?うちに来て貰うんですし、ちゃんと用意しないと恥ずかしいものねぇ」
「最近出来た大きい病院の近くはどうだ?新興とは言えスーパーも近いし、開発もかなり進んで来たしな」
「ああ!あそこね!良いんじゃないかしら?一度、聞いてみて問題無ければ手を打って下さいな」
「任せとけ。こう言うのは早い方が良いからな」
「ええ!」
車は幹線道路から外れ、大きな寺院へと走る。
今はもういない二人の子供が眠る墓地へと。
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