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大婆様張り切る

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「おや?何ぞ旦那様より使いが来たわ」

アーネストの妻であり、フェリシアの母でもありこのシルヴァニアの里で婆様と呼ばれるアリスティアは青いハーピーを指先に停めて微笑む。

「陛下と私は今暫く長生きせねばならぬ、秘薬を頼む」

青いハーピーの言葉にアリスティアは仕方ないとばかりに笑う。

「ほんに仕方ない旦那様よ。だが長生きは賛成じゃ、どれ母上に言うて参ろう」

アリスティアは何重にも重ね着した着物……いわゆる十二単の裾を翻し里の奥に建つ長の奥屋敷へと向かった。
白木造りの日本家屋にしか見えない奥屋敷に上がり、奥へ奥へと衣擦れの音を立てながら廊下を進む。
最奥の一つ手前の部屋の障子を開け、目当ての人物がいる事を確認し部屋へと入り込む。

「アリス、どうしたのじゃ?」

そのまま部屋の上座に大座布団を敷き、悠然と座る母である大婆様・コレットへと飛びつく勢いで歩み寄る。

「母上、旦那様が陛下と共に長生きしたいと申してきたのじゃ。秘薬を作って欲しいのじゃ!」

母子の甘ったれた会話だが、内容は甘くない気がするのは気のせいではない。
だがコレットは愛娘にねだられれば母としては嬉しくてしょうが無かった。
アリスティアは余り甘えない性格であったから尚のことである。

「良い良い。上等なのを作ろうぞ。そうじゃな、元気で二・三十年は達者に過ごせる秘薬を作ろうかの」

「ありがとうなのじゃ、母上!」

娘の喜ぶ様を見てコレットはニコニコと笑いながら立ち上がり、アリスティアを連れて術者のみが入れる花園へと向かう。
無人の石扉の前に来れば石扉は勝手に開く。術者以外は開かない扉故に番人を置く必要も無い花園だった。
手入れをする若い術者のみがあちらこちらにいるだけの花園でコレットは必要な物を摘んで歩いて行く。

「後は呪いだけじゃ、案ずるでない。妾にドンとまかせておくのじゃ」

「はい」

コレットはアリスティアと別れ自分専用の小さな部屋へと向かう。
その部屋は花園に近い石造りの部屋でコレット以外は入れぬ部屋だった。

「ホホホ……婿殿の為にも良い秘薬にせねばな……」

そう言って作り上げた秘薬の効果は絶大で、飲んだ陛下と宰相(アリスティアの夫)が元気溌剌になったとかならなかったとか……
コレットの張り切り具合が凄すぎてアリスティアは少しだけ反省した。

どっとはらい。
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