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初陣 30 (ルーク)

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赤竜の脚の付け根は低いが狙える位置だった。
俺とキースは片脚を攻め続けた。どこか遠くで獣の様な叫び声が聞こえる。

「尾が落ちたぞ!」

不意に耳に入った声。斬る事だけに集中してる頭には落ちたと言う事実しか分からない。

「ルーク様!」

俺の一撃で赤竜の片脚がズルリとずれて行く。慌てて巻き込まれない位置へと体をずらす。

「もう片方もやるぞ!」

「はいっ!」

「ルーク様!脚よりも腹を狙って下さい!今なら仕留められます!」

バートンの叫びが俺の頭を冷静にさせる。
尾も落ち、片脚となって身動きは取りづらくなった赤竜を俺が仕留める。これは前隊長だったバートンからのバトンだ。

「離れろ!目一杯斬り込む!」

誰も彼も離れ俺は全力で赤竜の腹へと斬り込んで行く。

「落ちろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

俺の剣が赤竜の腹に吸い込まれるように埋まり、そのまま力任せに切り下げる。
耳をつんざく様な断末魔とあちこちから聞こえるしょうさんの声と臓物が落ちていく音と真っ赤な視界だけが俺を包んだ。

「ルーク様!おめでとうございます!討伐の難しい赤竜の討伐成功です!」

声が掛けられ、ゆっくりと其方に顔を動かす。目に入ったのは血塗れの顔で興奮を隠しもせず跪き何か眩いものでも見るかの様に俺を見るキースだった。

「ああ……ありがとう……」

キースの肩を抱き「クリーン」と唱える。互いに血塗れで血生臭かったがすぐに綺麗になる。土埃もついてない。

「お見事でした!誰の目から見ても申し分ない討伐でした。此度の難しい初陣を無事乗り切りましたな!」

近付いて来たバートンとルシウスの目が優しく、そして潤んでいる事に気付く。

「ありがとう、手柄を譲って貰った形だが正直嬉しい。厄介な相手だったが早々に討伐し赤竜も無事討伐出来た。これはひとえに優秀な隊員がいたからだと思う。ありがとうバートン、ルシウス。これからも俺を支えて欲しい」

二人は血溜まりの中、跪き頭を垂れた。

「有難きお言葉!総大将がお認めになったルーク隊長を支えるのが私の本望!今日この時、そのお力を我等に指し示した御方なれば二心無くルーク隊長を信じ支えその道を共に致す所存!」

バートンの口上に胸が熱く震える。

「我等ルーク隊長に忠誠を!」

「「「「「「忠誠を!」」」」」」

いつの間に集まったのか隊員達が跪き声を合わせ叫んだ。
嬉しさと何とも言えない……魂が震えるかの様な熱さに涙が零れそうになる。

「その忠誠受け取った!お前達に恥じぬ生き方をここで誓おう!」

おおーー!と大きな叫びを受け俺は仁王立ちになり片手を天へと突き上げた。
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