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初陣 8 (ルーク)

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俺専用の馬車として急ぎで仕立てて貰った馬車はエリーゼの馬車に良く似た黒い外装に金の装飾が至る所に施された馬車で大きさもかなり大きい。
尤も装飾に見えるあれらは魔物除けが施された特別な装飾だ。
この馬車一台で一体幾らするのか……帝国皇族ですら持ち得ないぞ。
そんな馬車に近付くとドアからカリカリと軽く引っ掻く音がする。
良く猫がドアや壁にやるやつだな、と思いクスリと笑ってしまう。

「ノエル、開けるからカリカリしない」

そう、声を掛け馬車のドアを開けるとノエルが飛びついてきた。

「さみしかったにゃ!」

片手で縦抱っこして、いまだ馬車にいるルチルへと片手を伸ばす。
身軽なルチルはちゃんと分かっていて、伸ばした腕の上を駆け上って肩の上に立つ。

「クワイにのりたいピカ」

「そうだな、お昼食べたら一緒に行くか?」

ノエルもルチルも甘えモードだ。

「いくにゃ!」

「いくピカ!」

どっちも即答だった。だが、何にも無しじゃあ俺がつまらない。

「じゃあ、お昼食べてそれから武装を身につけてからだぞ」

「にゃっ!」

「ピッカァ!」

どっちも問題無さそうだ。

「バートン、案内してくれ」

「はい!」

……えらく嬉しそうだな。それとチラチラと殺気めいた視線を感じるぞ。大丈夫か?

「そうしてるとノエルとルチルはルーク様の子供みたいで可愛いですね」

キースの言葉にノエルとルチルが喜んでるようだ。
ノエルの小さな小さな呟きが聞こえる「ご主人がパパにゃ?ウレシイにゃ!」だって。尻尾も嬉しそうに揺れてる。
ルチルも小さい前足が俺の髪を掴んで「ピッカァ!ピッカァ!」と小さくリズムを刻んでる。
然程大きくない集落だからか、すぐに宿屋に辿り着く。
広場に面した小綺麗な二階建ての宿屋の中へと入ると、すぐに食堂へと案内され食事が出された。
しかもノエルとルチルも食べやすいように椅子の上に四角いクッションが置かれた椅子が二脚用意されていた。俺とキースの隣に。

「参ったな……」

椅子の配置を見たノエルとルチルがケンカしないか気になったが……

「ボク……ご主人のとなりがイイにゃ……ダメにゃ?」

瞳をウルウルさせて、軽く爪を立てて俺を見て来るノエル。

「ボクじゃダメピカ?」

キュ!と俺の頭にしがみつくルチル。
どっも可愛くおねだりしてるが、俺は一人なんだよな……ここは心を鬼にしよう。

「ノエル、ルチル。ちゃんと聞いて欲しい。今回は俺はキースと食べる。ノエルとルチルは一緒にいるバートンとルシウスと一緒に食べて欲しい」

ガーン!って顔するけど、そんなのダメだ。

「バートン、ノエルを頼む。ルシウスはルチルを頼む」

そう言ってそれぞれの腕の中へとノエルとルチルを託す。
問題なんか何一つ無い。六人掛けの食卓に俺の対面にキース、キースの隣にルチル、その隣にルシウス。
俺の隣にノエル、その隣にバートン。
結局、俺の側近くなんだから大袈裟にし過ぎなんだよ。全く。
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