婚約破棄されまして・裏

寒い夜だから…… （ラーラルーナ）

年が開けた。
お正月は近しい領民を呼んでお祝いしたりして騒がしかった。
そして令嬢としてスマイル零円を売りまくった。
全くお金にならないかと言えば、大局的にはお金に繋がるので正しくは零円では無い。
でも笑顔の大安売りは表情筋が疲れるので嬉しくない。
でも帝国貴族として人脈作りには必要不可欠！幾ら王国貴族に輿入れするとは言え、帝国貴族から完全に離れる訳じゃない。
谷一つ、正確に言えば谷は国境なのだけど言わば谷一つ挟んだお隣さんに嫁ぐので近くて遠い隣人と言う訳なのだけど……お隣さんはシャレにならない大きな魔物……兄貴なら喜んだであろうモンスの宝庫。
もし兄貴がこの世界に転生していたら冒険者になって王国でリアル一狩りやってただろうなって思う。
初夢は良かったし、春になったら婚約者であるキャスバル様に会えるし良い事尽くめだけどやっぱり前世の家族が恋しくなる。
家族だけじゃない、美味しい食事やスイーツの数々が懐かしくて恋しい。
こっちのスイーツはただ甘いだけで、それ以外の味がしない。
季節のフルーツタルトや味わい深いチョコレート、生キャラメルにアイスクリーム。
何もかもが懐かしい。
令嬢だと兎に角出された物に文句も付けず、食事をしなければならない。
高位貴族故、変な物は出ない。でも単純な味付けで正直飽きる。でも誰も文句も言わないし、注文をつける訳でも無い。
ちょっとは何かしら工夫するべきじゃないの？ただ教えられた物だけ作ってれば良いと思ってんの？！巫山戯てんの？そう言いたい。
でも所詮令嬢の立場だとそんな事言ったら駄目なのよね。
あーあ、美味しい食事とスイーツ誰か食べさせてくれないかしら？
輿入れしても同じような食事だろうし、うちよりも豊かでお金持ちだと聞いてるけどその辺りは期待出来ないのよね。
唯一期待出来るのは公式でBLが許されてる事位かしら？義理母は元帝国貴族で宰相様の令嬢だったってのは知ってるけど、あそこも謎の多い一族って言うか何か昔に日本人が関わったんじゃないかと思うんだけど……でも昔の話しだと思うのよね……
あーあ、女の身で小難しい事言うと詰まらない事言われるから面倒だし……
外は寒いからたまり場にも行けないし、刺繍もやり尽くした感でいっぱいだし。
テレビ見ながらお餅食べて、おこたでゴロゴロって贅沢だったのね。
願いが叶うならあの頃に戻りたい。