上 下
541 / 754

新年のお祝いへと 4

しおりを挟む
やがて次期様と弟君様が来られ、親方様の挨拶と乾杯の合図に新年の夜会が始まった。
最初は簡単な挨拶を各々行う。
その後俺達は候補者達を連れて挨拶に出向く。
段前に行き挨拶と報告をする。
当然、俺は最後だ……

「候補者が決まりました」

「一名と伝えた筈だが?」

「実力は拮抗しており選べませんでした」

「そうか……別室で聞く」

「畏まりました」

短い会話だが親方様の視線でどこでどう動くのだと理解する。
気配を消して姿を消す親方様。

「皆様はこちらに」

同じ様に気配を消し声を掛けてきたのは親方様を支える執事となったハインツ殿だった。
俺達は静かにハインツ殿の後をついていく。
すぐさま裏の通路へと案内され、長い静かな廊下を進む。
やがて一つの扉を開け、室内に入るように促される。
室内ではアレク殿が親方様へお茶を淹れていた。

「来たか。アレク、全側近と専属侍女を連れて来い」

「畏まりました」

窓の前、革張りの一人掛け用のソファに座る親方様の視線は厳しい。

「推薦者はご苦労だった。本来ならば三名の候補者であった筈だが、四名になったのも運命だろう。……ふむ、迷うのも当然か。良い目をしてるな」

親方様の言葉に深々と頭を下げる。

「では、推薦者は大広間へと戻るが良い」

俺達全員一礼して室内から出る。
出た所で側近殿達と侍女殿達がいたが、互いに軽く頭を下げてその場は別れる。
廊下で待っていた給仕の一人が先導して大広間はと戻った。
給仕とも別れてワインを受け取り、並べられた大皿から食べたい物を取り皿な乗せていく。

「この先は誰が選ばれるかだな」

どれもこれも美味そうでついつい取り皿に乗せていく。

「一番選ばれそうなのはお前の所のイワンとキースかな?」

「だな。俺が選んだのはちょっと実力不足かも知れんなぁ……」

「だが、俺は二人で迷って選び切れなかった」

「後で呼び出しかもな」

「おう!呼び出しだろうな」

「やっぱり呼び出されるのかな……」

軽口のつもりかも知れないけど、呼び出されて叱られるのか……

「なら景気付けに飲んでやる」

「ははは!飲め飲め!」

「今の内だ!飲んどけ!」

俺は呼び出される前にとワインをがぶ飲みして、次々と出て来る料理をたらふく食べた。
その後、やっぱり親方様に呼び出されたが酔っぱらいの俺を見て特に叱る事もなく簡単な説教で済んだ。
困った顔で笑って「まぁ、あれは迷うよな」そう言って貰って内心助かった!と叫んだ。
再度、大広間に戻った時には家族の姿も無く見知った顔ばかりが残っていた。
しおりを挟む
感想 3,408

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話

はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。 父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。 成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。 しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。 それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。 (……なぜ、分かったの) 格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。

処理中です...