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男ばかりの元旦の食堂

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「行ったな」

「はい、父上」

お正月の食堂でエリーゼ達女性陣がサロンへと向かった後、前領主マクスウェルはギラリと目を光らせ扉を見やってハインリッヒに声を掛けた。

「ルーク……と呼ばせて貰う。あれ程までにエリーゼと仲良くやるとは中々の傑物だと見た」

今まで和やかに酒を酌み交わしていたが女性陣の前だからこそ……だったのだろう。

「いえ。私はまだまだです」

「だが話しには聞いておる。既に大型に立ち向かった事もな。帝国には殆ど大型は出ないと聞いておるのに、その胆力認めぬ訳にはいかぬ。我がシュバルツバルト家は常に大型と戦ってきた一族だ。大型を見て腰を抜かすような腰抜けは要らぬ。それ故既に対峙し戦ったのならば儂に否やは無い。殿下の婿入り、心より迎え入れる所存です」

酔っているとは言え貫禄たっぷりのマクスウェルの言葉にハインリッヒもキャスバルもトールも何一つ言う事は無かった。
一方のルークも酔ってはいたが堂々とマクスウェルの言葉を受け止め、また皇子として生きてきた故の態度と前世ではまり込んでいたゲームがリアルになった喜びがない交ぜになっていた事で少しおかしげな発言をした。

「お認め下さりありがとうございます、マクスウェル前領主殿。私は以前から大型と対峙する事を夢見て鍛錬して参りました。エリーゼ嬢に見初められ、私も彼女を愛し気持ちを通わせました。強く美しい彼女との婚姻が待ち遠しいです」

明け透けな告白にその場にいる者達が内心で驚いていたが当のルークは何一つ恥じる事無く胸を張っている事から、これ程の気持ちでもってエリーゼの元に婿入りするのだと理解した。
帝国の皇子として甘やかされ育った訳ではないのだとマクスウェルは理解した。

「ならば安心した。殿下程の方ならばエリーゼは泣く事もあるまい、以後儂の事はマクスウェルと。無論、お義祖父様と言ってくれて構わんぞ!」

そう言うと豪快に笑った。

「ありがとうございます。ではお義祖父様と呼ばせて頂きます」

ハインリッヒもキャスバルもトールも内心、胸を撫で下ろした。
領主の座を降りても、いまだ絶大な人気と発言力を持つマクスウェルの存在は今でもシュバルツバルト領に多大な影響を与えるからだ。
尤も認める所か気に入ったかのような素振りに、ハインリッヒは嬉しくもあった。
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