上 下
512 / 754

sweet pain 5 (アナスタシア)

しおりを挟む
初夜の支度が調えられ、大きな寝台へと案内される。

「寝台にお上がりななってお楽な姿勢でお待ち下さい」

侍女にそう言われ、何も言えずに頷いて寝台に上がる。
私が公爵邸で使っていた寝台よりも遥かに豪華で緊張が増す。
思い返せば婚約者としてシュバルツバルト家の客間に何度も泊まったけど、扱いの何もかもが違う。
食事だけが同じで、侍女の振る舞いが違った。
今まで湯浴みと言えば浴槽に湯を張って、その中で布で体を優しく擦るのが当たり前で普通だった。
でも、ここでは違った。
まるで本当のお姫様のように体を磨きあげられた。
煌々と明るかった寝室の灯りが落とされ、淡い灯りの中侍女が寝室から出て行く姿を見送った。

程なくマクスウェルがやって来た。マクスウェルは湯浴みしないのかしら?
じっと見つめられ、胸が苦しくなる。
あんまりにも見つめられ、恥ずかしさで体中が熱を帯びる。

「マクスウェル……」

つい小さく抗議の呟きが漏れる。

「済まない」

そう告げたマクスウェルの瞳は爛々と光、まるで……そう、子供の頃一度見た……獲物を狙う魔物のような目で私を見つめた。
……初夜……今宵、私はマクスウェルの手で破瓜される……
怖い……でも、私に逃げ帰る場所は元より逃げ帰るつもりもない。
私はいつの間にかマクスウェルの妻になるのだと、私の全てを委ねるのはマクスウェルただ一人だと……
私の愛しい人はマクスウェルになった。
微かに胸が傷む。
けれど……けれど私は死んでまで追いかけたいとは思わなかった……

無言で私の側に腰を下ろしたマクスウェルは誰よりも男らしく王のようだった。
しおりを挟む
感想 3,408

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

処理中です...