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夫婦の時間 2(ハインリッヒ&フェリシア)

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フェリシアの細い体はしなやかで、一見すると普通の女性と何等変わらないように見えるが実はかなり鍛えられしっかりと筋肉がついている。
己の剣が大きいのは側近であるアレクのモノと見比べた時に初めて知ったのだが、あまりの違いに内心驚いたものだ。
最初の頃は大変だったが、やがて慣れてくるとその大変さも苦にならなくなった。
フェリシアの細い体から三人もの子供が生まれたなぞ女体の神秘でしかないとハインリッヒは心の底から思っていた。
そうして愛し合い求め合って汗だくの体を互いに抱き締めあい熱い息が収まるまでそのままでいた。
やがて密やかな吐息へと変わった頃、ピッタリと密着していた体を少しだけ離した。

「フェリシア、少し良いだろうか?」

フェリシアは汗でしっとりとしたハインリッヒの胸板をソッと撫で、クスリと笑った。

「勿論よ、なぁに?」

ハインリッヒはフェリシアの額に張り付いた髪の毛をソッと撫でるように後ろへと流す。

「三人もの子供を生んでくれてありがとう」

フェリシアはキョトンとハインリッヒを見つめた。

「俺と父上は兄弟を亡くしてるからな、子供達が強く育ってるというのは有難いものだ」

「兄弟……?」

フェリシアは知らなかった。
ハインリッヒは遠くを見つめるように、どこかを見つめていた。

「俺には兄がいた」

チラリとフェリシアを見つめ、一つ息を吐く。

「兄は生まれて程なく、母上の目の前で食い殺された……と言われてる」

「食い殺されたと?」

「ああ……母上は見えてなかったが大型に襲われ、気がついた時にはどこにもいなかったそうだ」

「では、生きてる可能性だって……」

フェリシアの言いたい事は分かっていた。

「母上は倒された馬車の中、投げ出された兄が……泣き叫ぶ赤子が大きな魔物によって消えたと……それまで見えてた姿も聞こえていた泣き声も消えたのだと……」

フェリシアは眉根を寄せ、ハインリッヒを見つめた。

「何でお義母様は……」

「一刻も早くご実家の父君や母君に見せて安心させたかったのだと……」

「愚かな……」

ハインリッヒの溜息がフェリシアの耳には大きく聞こえた。

「母上は元々は父上の兄の婚約者だった……」

「え……?」

アナスタシアの年を考えれば、婚約者に死なれでもすれば先行きは不安この上無かったろう。帝国はまだしも当時の王国は更に厳しかったのだろう事は想像出来た。
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