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松露の壺

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私はガラス壺である。名は無い。
私には口から溢れんばかりの松露が入っていた。
小さくコロコロとした松露は色はともあれ、どことなく可愛らしく気に入っていた。
気に入っていたのだが、毎日毎日減っていく松露に心が痛んだものだ。
ガラス壺が何を言っているのかと思うだろう。
私の前で右往左往し、考え込みながらブツブツと呟き「一つだけなら大丈夫よね。」そう言って松露を一つ摘まみ出す美しい女性。
これを一日何回も行うのだ。

「フェリシア様、一息入れましょう。」

一日に二度この言葉が出るが、たまに私から松露を取り出す時がある。
その時はいつもの様に一つではなく、幾つもの松露を取り出し一緒にいる女性達と食べるのだ。

どれ程たったのだろう。
松露はあと僅かで無くなってしまう……そんな時だった、女性達は慌ただしく動き回り外はとても賑やかになった。

「エミリ!エリーゼが戻って来たから残ってる松露は食べきってしまうわよ!」

とうとう私の中に残ってる松露は全て取り出され、女性達に食べられてしまった。

「何も無いって寂しいものね。また、この壺一杯に松露を詰めて貰いたいわねぇ。」

「そうですね。ではジムに言ってみましょう、彼ならば作れる筈ですから。」

「ええ、そうね。言っておいて頂戴。」

「はい。」

再び私の中が満たされるのだろうか?


私はガラス壺、名は無い。ついでに言うと中身も無い。



やがて、このガラス壺は松露の壺と言われるようになる……かもしれない。
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