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躾けの時間です(フェリシア)

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朝食を取り終え私は専属侍女達と合流した。

「エミリ。職人達に同道していた連中全員を地下へ。エリーゼが随分と心を痛めていたわ。身の程をわきまえないというのは宜しくないわ。」

「畏まりました。」

エミリはシンシアを連れて足早に使用人通路へと消えて行った。

「ソニア、支度を手伝って頂戴。久し振りに躾けるのだから念入りにね。」

「畏まりました。」

ソニアを連れて自室へと戻る。
髪をきっちりと纏められ、黒い翼竜の翼皮膜で作られたドレスを身に纏う。ドレスと言っても、華美な所は一切無い。ただ膝の辺りから切れ目が入れられ動きやすくなってるだけの物だ。同じ素材で作られたブーツを履き手袋を嵌める。

「お支度整いました。」

頭を下げ私の言葉を待つソニアにニコリと微笑んで立ち上がる。

「良いわね。重めの扇子を。」

無言で私に差し出されたのは黒い扇子。ただ最も太い骨は鉄を使っているだけだけど。

「では参りましょうか。」

そのまま地下へと進んで行く。ソニアは無言で私の後を付いてきている。
……躾けるのに最適な部屋に近付くにつれ、キャンキャンと煩く吠える女の子の声が聞こえる。
部屋の前につけば、ソニアが扉を開く。

「何で私達が繋がれなければならないのよっ!」

「お黙りなさい!」

エミリの止める声に逆らおうとしていたが私の姿を見て無言になった。

「随分と威勢が良いわね。」

暗く地上に声の届かないこの部屋で、重い鎖で手足を壁に繋がれた六名の同胞の顔を順番に見つめる。
室内の灯りは僅かで、薄暗い。この灯りが無ければ真っ暗闇となる。
コツコツとワザと足音を立てて近寄る。

「エミリから聞いたわ。ローズ、自分が年上だからと言って年下でも位の高いアニスを責め立てるのはいかがなものかしら?」

私達は全て位によって立場が変わる。
今、繋がれている者は全て位は低い。
エミリもシンシアもソニアもアニスより高位の存在だ。でなければ私の手足として使えないから。
アニスも素質はあるが、エリーゼが里に行ってない以上位を上げる事は出来ない。
この位というものに対して彼女達は私達に逆らう事も意見する事も許されない。

「貴女達はいったいいつから位が上がったのかしら?そんな話しは聞いて無かったのだけれど。」

繋がれてる彼女達は皆俯き無言になる。

「聞いているのよ。答えなさい。」

ビクリとローズの頬が引き攣った。

「……上がってません。」

彼女達の中で最年長のローズの顎を扇子でグイと上げる。

「では何故楽しい席で詰め寄ったの?」

逸らした目が面白く無いと語ってる。そんな風だから位が上がらないのよ。
待っていても返事は出て来なさそうだと判断して、扇子を顎から外し頬を軽く打つ。

「フグッ!……」

「聞いてる事に答えられないとは、どう言う事かしら?」

怯えた顔で私を見るローズはまだ返事をしない。
軽い溜息をついてみせる。

「今度はもう少し力を入れなければならないのかしら?」

唇の端を上げて微笑んでみせる。
ローズはカタカタと震えだした。全くみっともない。
この程度ならばアニスは黙って耐えられるというのに。
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