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懐かしい味(マリアンヌ)

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アンネローゼ様とミネルバ様のご懐妊ではないかと知った日、アンネローゼ様からいただいた飴は懐かしい前世で食べた飴と同じような味がした。
リンゴ味。わざわざ指定した味。きっと他にも味があるんだ……
作って贈ってくれたのはエリーゼ様だって言ってた。きっとエリーゼ様も転生者だ。

「ザマァも何にもなくて、優しくして貰ってばっかで……」

夜になるとどうしても考えてしまう。ここはゲームの世界じゃないの?でもゲームだったら、婚姻式の時にルーク様に会えた。婚姻式もスッゴい地味でパレードも何にも無かった。ゲームじゃあったのに。お披露目のパーティーだって無くてゲームと違う事ばっかりだった。王宮での暮らしも想像したのと違って大変な事ばっかり。何にも知らなかった。ジーク様が地味な格好ばかりと言ってたけど、ドレスの色は決まっていて派手に出来る部分なんて決まってて……エリーゼ様はずっとその決まりを守ってただけだった。エリーゼ様から貰ったドレスや小物はどれも良いお品で、寒々しいお部屋なのに寒さを感じなくなった。

「飴……舐めたいなぁ……でもそんな数無いし……私が頼んだ所で貰えるかどうか分かんないし……でも……アンネローゼ様に聞いてみよっかな……」

うんと温かくなったベッドの中、コロコロと寝返りを打ってみる。えっと……明日侍女に先触れを頼んで……


起きて支度して朝食をとって少し待ってから侍女を先触れに出す。本当はこの待ってる時間がもったいないな……とか思ってたけど、この待ってる時間も必要なんだと知った。侍女が帰ってきてから立ち上がってアンネローゼ様の所に向かう。
すぐに紅茶が出され、王室典範を勉強する。帰る前にアンネローゼ様に飴の事をお願いしてみる。
アンネローゼ様からはエリーゼ様にお手紙を書いて聞いて下さると言ってくれた。

「先日のリンゴ味の飴はあって?入り用かし……「お願いしますっ!」……ばあや、持って来て頂戴。」

ばあやさんが持って来たのは、この間の倍はあろうかという程の量だった。
エリーゼ様は私に飴を下さるだろうか?アンネローゼ様もミネルバ様もこのまま出産すれば……もし、それが男の子ならこの王子宮から出て後宮で子育てをしてしまう。そしたら……そしたら私はこの王子宮においてかれてしまう……友達もいない私は本当に一人ぼっちになっちゃう。

「アンネローゼ様、ありがとうございます。あの……私もエリーゼ様に手紙を書いても良いですか?」

「構わないわ。ご自分の気持ちや感謝を伝えるのは良い事だわ。」

「ありがとうございます。」

「書いたら持ってらっしゃい。シュバルツバルト家へ届けさせるから。」

「はいっ!」

「返事は短く丁寧に!」

「はい。」

「宜しい。」

「では失礼しますわ。」

「ええ。その調子ですわよ。」

ニッコリと微笑んで軽くカーテシーをしてアンネローゼ様のお部屋から退室する。退室する時に飴を入れた器を受け取り自分の部屋へと戻る。
懐かしい味……懐かしい想い出……きっと、この世界はゲームじゃない。
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