上 下
343 / 753

夜が明ける前に!(エルフ&ドワーフ嫁連合)

しおりを挟む
ムクリとまだ夜が明ける前の暗い内に起き出す。私は本来なら、このエルフの集落の長の妻としてのんびり過ごしたい所だがそうはいかない。
外は暗く寒い。もう冬なのだから寒くて当たり前なのだが、恐らく夜通し飲んだくれた男達は火照る体を持て余して真っ裸の素っ裸になってそこら中に寝転がっているだろう。
動きやすく汚れても良い簡素なドレスを纏い、我が家から出れば多くの妻達が同じような姿で出て来ていた。

「おはよう。毎度毎度、宴の後始末は大変だけど明るくなる前には回収致しましょう。」

子供達や年若い嫁入り前の娘達に見せる訳にはいかないので、なるべく声を抑え気味に告げ顔を見合わせて領主館の前庭へと歩いて行く。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ガバッと起きて、冬用の温かい服を身につけ家から飛び出る。あっちからもこっちからも女達が飛び出て来る。一所に集まり、起きて来れなかった嫁がいないのを確認して昨日の宴の場所へと歩いて行く。
酒好きでならしてるドワーフだが、飲み過ぎて真っ裸で踊り出したり大声で歌い出すような連中ばかりだ。明るくなればお目汚しこの上ない。夜明け前の寝転けてる男達を叩き起こして、それぞれの家に帰すのが嫁の仕事だ。昨日の宴は小さな子供達も一緒に食べたり飲んだりして、楽をさせて貰った。後片づけを少し位やった所でバチは当たらないだろうとドワーフの長の嫁は考えていた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

この領主館の前庭は魔法の灯りが夜の間中灯される為明るい。無論領主館の周りもそれなりに明るいのだが、前庭に比べればその明るさは大した事がない。

その煌々と照らされた前庭に着いたそれぞれの嫁達は毎度毎度の光景にウンザリしながら、それぞれの夫や息子達の服を拾い上げ男達を叩き起こして服を渡す。叩き起こされた男達はモゾモゾと服を着込み、ヨタヨタと帰路につく。
寝床が多少汚れても、領主の家族の目に留まるよりは良い。歩き出した男達の後ろ姿を一瞥すると嫁達はあちこちに散らばるカップや皿を集める者とそこら中を簡単に掃除をする者と使われた食器を持って水場に行って洗う者と手分けして片付けていく。
一通り片付けるとワイン樽を確かめていく。見落としてしまうのか、先に酔い潰れるのか何樽かは手付かずのまま残るのだ。確認すれば何と四樽も手付かずだった。互いの嫁達は無言で手振りだけでやり取りし二樽ずつ集落に持って行く事にした。ワイン樽を上手に転がしそれぞれの集落へと戻る。
こうして夜が明ける前、エルフとドワーフの嫁達はあれこれ片付けて戻って行くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

処理中です...