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シルヴァニアの里で

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バサバサと主持ちのハーピーが忙しなく飛び立ったり、舞い降りたりしているのは幾久しく見てなかった光景だった。
里長が留守の間は最長老であるコレットが里を預かっているのだが、この数日は忙しいの一言に尽きる。未だ目通る事無い己の孫娘であるフェリシアの生んだ娘、遠く離れた王国貴族に属する曾孫の娘が帝国皇子を見初め半年後には皇子が王国貴族に婿入りする。フェリシアからの報告ではこの世とは違う記憶を持つ特別な娘だった。帝国生まれであれば里に連れて来て大事に大事に育てる所なのに、王国貴族の生まれとあれば連れて来る事すら容易ではない。
既に幾つもの新しい知識や技術を王国貴族にもたらした事もコレットからすれば面白くもなく羨ましくもある事だった。これ程のハーピーが忙しないのは帝国皇太子が無理を押して王国で行われる婚姻式に出ると決めたからだった。又皇太子だけでなく次期皇太子である第一皇子までもが参列表明したのだ。

「来れぬのならば妾が行けば良い。」

特に考えもせず、呟いた言葉にコレットはホホ……と笑った。そうだ、自ら赴けば良かったのだ。幸い自分はまだまだ元気だ、馬にだって乗れるしこの広い里の中で歩き回っているのだ。

「誰ぞ!」

「お呼びで?」

たまたま通り掛かった若い娘がコレットの前に膝をついて頭を垂れる。

「半年後に行われるフェリシアの娘の婚姻式は分かるかや?妾もその婚姻式に出向く故、支度せよ。」

「はっ!……え?」

キョトンとコレットの顔を見上げた若い娘は、掛けられた言葉を理解すると共に目を見開き慌てて立ち上がるとどこぞへと走って行った。コレットはやれやれと軽い溜息を吐いた。きっと娘がやって来て、やれ危ないだの何だのと言って王国に行くのを止めるのだろうか?
遠くから娘が気に入りの着物を翻して走って来る。

「お母様!王国へ出向くとは本気ですか!」

すっかり貴族言葉に戻ってしまった愛娘アリスティアにフン!と鼻息荒く頷いた。

「本気なのですね。では私も一緒に参ります。胎を痛めて生んだ娘の子の婚姻式ですからね!お母様、共に参りましょう!」

若い娘は止めて貰えると期待していたが、この二人は紛う事無く母子である事を失念していた。二人は意気投合して半年後の婚姻式に行く事にしてしまった。この事を聞いていた周りの里の者達は密やかな溜息を吐き出し、どれ程の里の者が同行出来るのだろうか?と考えながら己のハーピーをまた飛ばさねばならないのかと苦笑いした。
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