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帝国皇室悲話 皇帝サイド

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帝国皇帝が住まう皇宮はこの数日重苦しい雰囲気が漂っていた。なぜなら皇帝陛下が急な体調不良になり、寝所から出られぬ身となったからだった。これまでその様な事はただの一日も無かった。

「陛下のお側に居させて下さい。」

「私と陛下の御子とお側に!」

たった二人の側妃と二人の幼い子供達三人の五人が伏せった皇帝陛下の寝所へと来ていた。皇帝陛下には大勢の側妃達がいた。帝国後宮は皇帝陛下の住まう寝所と広く豪奢な廊下で繋がった女達が住まう巨大で豪華な檻……城で形成されている。
皇帝陛下の寝所から長く伸びる堅牢な廊下が政務を行う城へと繋がっており、そちらは引っ切りなしに従者や召使いが往き来している。
五人は後宮へと繋がる豪奢な廊下で、一際大きく豪華な扉の前で剣を携えた近衛兵の前で懇願していた。多くの女達……正妃を含めた側妃達やその子供達は誰一人皇帝陛下を直接見舞う事も無く、後宮から出る事も無く暮らしている。最もだからと言って後宮が静かだとは到底言えなかった。何故なら女達は未だ次期皇帝となるべく皇太子が決められてなかった故に男児を持つ母親たる正妃・側妃達は各々の実家へ連絡を取り自分達の警護の為の兵士を呼び寄せていたからだった。

「お待たせ致しました。陛下は是非ともお側にと……」

「「ありがとう御座います!」」

二人の側妃は宰相に深々と頭を垂れた。宰相に案内されるまま子供達を促し皇帝の寝所へと入って行く。驚く程広い部屋の中央、大人の男が何人も横たわれそうな大きなベッドにまだ若い皇帝は青い顔色、紫色の唇で荒い息で五人を見つめた。

「済まぬ……心配を掛けておる……」

「いえ……陛下がご無事であれば私……」

「そうですわ。陛下のお側に居たくて……早くお元気になって下さいまし。」

「もっと……近くに……」

皇帝の寝所に椅子やソファ等は無い。困る五人に宰相は告げる。

「どうぞ、ベッドに上がって下さい。」

困惑するが手を差し出され、上がるように促されれば従うしかなかった。宰相はシルヴァニア家本邸のあるシルヴァニア山山頂で暮らす里へと、正妃側妃の全てを調べるように依頼していた。里で暮らす女達は闇に紛れるように移動し、様々な事を調べ上げる術に長けている。無論それだけでは無いが……そのシルヴァニア家の調べにおいて側妃二人は後ろ暗い所も、欲に取り憑かれている訳でも無いと報告されていた。その為に寝所へと招き入れる事にしたのだ。
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