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ある日の帝国皇室 5

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その日、第三側妃ノーマは自分の住まう後宮でいつものようにお茶と焼き菓子を楽しんでいた。
子供を三人産み、側妃としての責務は果たしたとばかりにのんびりとした暮らしへと移っていた。
忙しいのは正妃様とその補佐的お立場である、第一・第二側妃。第三の自分と第四のフルーレは、はっきり言えば政略結婚の駒になる子供……特に女児を産めば良いという立場だった。
ノーマは二人の女児と一人の男児に恵まれた。ただ男児は悩ましい存在であった。
だが、幾つの時だったか忘れてしまったが自分から大人になったら除籍されて冒険者になるんだ!と言い出し父親であるジョルジオ様にまで言ってのけた日からノーマは悩むのをやめた。
ジョルジオ様からも第五皇子ともなれば、本人の資質によるだろうと言われ冒険者になりたいのならそれも良いと言葉を掛けられたのだ。
大事なのは娘である。何処に出しても皇女らしい美しくたおやかであるように。と言われ、娘達はジョルジオ様の望むような美しくたおやかな娘に育ち高位貴族の元へと嫁いで行った。

「ルークは王国へ行ったと聞いたけど、元気かしら?」

ノーマは幼い頃から共に側に居た侍女へと問いかけた。

「そうですねぇ……お噂すら流れて来ませんねぇ……」

コリ……と焼き菓子を齧るノーマの顔に不安も心配も無い。ルークが驚くほど努力し、剣技も武技も人並み以上……帝国軍人の精鋭に引けを取らぬ程鍛えていると報告されたからだ。加えて頭も良く、余程の事でなければ危機に瀕する事は無いだろうと言われていた。

小走りで侍女に耳打ちする若い侍女をチラリと見やり、何事かと思った。

「ノーマ様、ロバート様の配下の方が来られたと。」

焼き菓子へと伸ばし掛けた指がピタリと止まった。ジョルジオ様が来る事は殆ど無い、なのにジョルジオ様の腹心であるロバートの配下の者が来た?何か宜しくない事でもあるのか?そろそろと指を引っ込め、落ち着く為に紅茶を一口飲む。

「ノーマ側妃殿下、急に来てしまい申し訳ありません。先程アーネスト宰相から至急の伝達がありまして、ノーマ側妃殿下のお産みになったルーク殿下がオーガスタ王国シュバルツバルト侯爵家令嬢エリーゼ様と半年後に婚姻する事となりました。ルーク殿下があちらに行かれる事となりますが、婚姻式にはジョルジオ皇太子殿下も参ります。母君であるノーマ側妃殿下は必ず行かれるように、とのお達しです。」

伝えられた言葉にノーマは驚き、ロバートの寄こした配下の者を凝視した。
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