上 下
274 / 754

青氷の薔薇・学園編 3 要注意!要注意ですぞ!

しおりを挟む
「確かに。ですが我が侯爵家には、そのような不埒な者は来ませぬ。どうぞ、ご安心を。」

生真面目なお返事。でも、そんな貴族……いえ、あのような大きな魔物が出るような地域ならば不埒な者なぞ魔物にくれてやれば良いのだから楽なものか。

「それは素晴らしいですね。早くハインリッヒ様と婚姻して、共に暮らしたいですわ。」

ええ、本当に手間が省けるだけではない。宝の山のような領地、最も領民が減らないように頭を使わねばならないけど。でも私の旦那様になる位だもの、きっと領民を守り私も守って生きて下さるでしょう。
紅茶を飲み干して立ち上がり、部屋から出ようと歩き出した時不意に手を掴まれる。

「お送りしましょう。」

紳士らしく掴んだ手をスルリと下に回してエスコートして下さる。フフッ……剣ダコの大きな手、私のお気に入りなのですよハインリッヒ様。
……?……ドタドタと騒がしい足音。嫌だわ。

バァン!

「ハインリッヒ!ここに居たのか!探したぞ!」

「ジャスティン。俺は用事があるから会えないと言った筈だが。」

チッ!心の中で舌打ちする。フワフワとした金髪の青い瞳の優男。やたらかったらハインリッヒ様に纏わり付いてくるこの国の第二王子。今もハインリッヒ様が言った事も、頭の中から弾き飛ばしたに違いない。

「ごめん、ごめん!でも会いたかったんだよ。」

どこの女よ!男のクセに女みたいな言い訳して邪魔にしに来るなんて、仕留めてやろうかしら。

「フェリシア嬢!済まない!」

あら、嫌だわ。私ったら殺気でも垂れ流したかしら?最もハインリッヒ様が気が付いた殺気に気付かないなんて間抜けも良い所だわ。

「今日の所は帰ります。エミリ、行きましょう。」

「悪いねぇ、でも婚約者でも無いのにこんな所で会ってるなんて帝国令嬢は違うね。」

悪意もなくさらりと告げた言葉に僅かな殺気を乗せて見やる。
特に怯える事もなくヘラヘラと笑うこの国の王子は愚か者か、それとも見た目と違い豪胆な男へと育つのか。まぁ、良い。
笑ってやろうじゃないか。淑女らしく顔の下半分を扇子で隠し笑顔で見つめながら。

「ジャスティン殿下、私何と言われようと構いませんわ。だって私とハインリッヒ様は婚約致しますもの。王国国王陛下に否とは言わせませんわ。」

ホホホ……と笑い扉まで進む。顔だけ振り返って見る。

「では、お先に失礼致しますわ。」

申し訳なさそうなハインリッヒ様とアレックス。気にも止めないジャスティン。全く邪魔な男の。前を向きエミリの先導で部屋を出て、この折檻部屋のある建物から遠ざかる。
しおりを挟む
感想 3,408

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...