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お部屋でお留守番(ノエル&ルチル)

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キンダー侯爵領主館の客室の一つに、この部屋に泊まる方の為に一人の使用人が回された。彼は従者見習いでとりあえず一通りの事は出来るようになっていた。彼はこの客室に泊まる人物の手伝いを思うほど出来てなかった。
なぜなら、この客室に泊まる人物は帝国皇室の皇子だとは思えない程自分の事は自分で出来てしまう人物だったからだ。普通、貴族家の令息ですら自分の支度は出来ないものだ。それが皇子と言われる立場の者が自分自身で湯あみも着付けも、何もかも出来てしまう。それは彼にとって驚きであり、悲しい事でもあった……自分の存在意義を揺らがせる出来事でもあった。
だが、皇子は言ったのだ「お留守番を見守ってくれる君がいてくれるおかげで、安心して晩餐に向かえれる。助かるよ。」と。お留守番とは目の前のソファで両前足を合わせて鼻歌を歌ってる二匹のお留守番を見守る仕事だった。

「ご主人かっこよかったにゃ!」

「ほんとピカ!ご主人はすごくかっこよかったピカ!」

茶色の大きな革張りのソファは二匹にとって、とても大きなソファらしくちんまりとした二匹にはまるでベッドのようだと感じる。

「ルチルはつかれたにゃ?」

「ノエルにいにはつかれてないピカ?」

「まだ、だいじょうぶにゃ!ボクはにいにだから、まだだいじょうぶにゃ!」

「すごいピカ!ノエルにいにはオトナピカ!かっこいいピカ!」

なんだか、見てるだけで頬が緩みそうな可愛さです。

「そうかにゃ?ルチルにいわれると、てれるにゃ!」

見てるこっちも照れてます。小さな兄弟のようで、実にほのぼのとした可愛さです。

「ノエルにいに……ボク、ねむいピカ……」

「ねていいにゃ!ご主人がかごをおいてくれてるにゃ!いっしょにいくにゃ!」

ソファの端っこに置かれた籠の底には柔らかそうな布が敷かれ、小さな雷ネズミが寝るには丁度良い大きさです。
モゾモゾと雷ネズミのルチルが入り込みクルンと一度丸くなりましたが、何か不満らしくピョコッと頭を出してます。

「どうしたにゃ?」

「さみしいピカ……」

ノエルはうーんと考えると、部屋の片隅に居る若者を呼びました。

「手伝ってほしいにゃ!手助けしてほしいにゃ!」

「はい、どうしましたか?」

「かごをたおしてほしいにゃ!なかのひいてあるのもすこしなおしてほしいにゃ!」

どうやら籠を横倒しにして、敷いていた布を移動させて欲しいようです。若者は頷くと、籠の中に居る雷ネズミに声を掛け一度出て貰うと籠を横倒しにし布を丁寧に敷直しました。

「向きはこちらで宜しいですか?」

「こっちむきにしてほしいにゃ!」

立ち歩きネコの言われるままに向きを変えました。

「ルチル、かごのなかでねるにゃ。」

モゾモゾと籠に入り、再びクルンと丸くなる雷ネズミ。その籠を抱えるように立ち歩きネコが横になりました。

「ボクがここにいるにゃ!さみしくないにゃ!」

「ホントピカ!さみしくないピカ!ノエルにいに、だいすきピカ!」

丸くなったままゴソゴソと頭の位置を変えた雷ネズミの頭は、立ち歩きネコの体に密着してます。
若者は可愛らしい二匹の眠る姿を見守る為に、この部屋に来たのか!と自分の幸運に感謝しニマニマと部屋の片隅で見つめていました。
勿論、この客室に泊まる皇子が来るまでの間だけですが……ね。
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