婚約破棄されまして・裏

ムカつく新入り

俺の名前はクワイ。
栄えあるシルヴァニア産の雄馬だ。
若い男を主に据えて、日々それなりの充足感を味わい生きている。
ここ最近、多くの仲間と共に旅路を走り俺たちの扱いに長けた者による手入れで非常に満足のいく毎日を送っていた。
主に仕える魔物だか何だかが出来たが、主は大層気に入ったようで愛でている。
まぁ、新入りらしく大人しくしているし目障りでも何でもないから気にしてはいなかった。
だが、だが新たに入った新入りは巫山戯てやがる！
俺の頭の上に乗ってくるとは！許せん！
……むっ？頭から降りたか、全く邪魔な新入りだ！
どうやら主にくっついてるようだな。
あのネコと一緒に主にくっついておれば良いのだ！なんと言っても愛でるには良い大きさなんだからな！
ふふっ……誰に邪魔される事もなく走る楽しさよ！

ビリビリビリ！

ぬっ！体がっ……痺れ……る！いかん……列から出ねば……
………くっ………なんたる恥辱！…………この俺が！
なぜ、いきなり……

「くっ……クワイ……大丈夫か？」

首を撫でられ俺を気遣う主……なんと優しい出来た人なのだ……

「ルチルが済まない。俺も体がまだ痺れてるよ……」

ルチル…………あの新入りかぁっ！
もう、許さん！絶対に俺の頭に乗せたりはしないぞ！
俺だけで無く、主まで痺れさせるなぞしもべとして有り得ぬ態度！

「ごめんピカ……」

許さん！ドカッドカッと足を荒く踏み鳴らす、許さないと言う俺の心を表してやったわ！

「クワイ、あんまり怒るな……な。」

主！主は優しいので、舐められてるのだ！このようなこわっぱ、俺が踏んで躾けてやる！

「わざとじゃないピカ……」

わざとだったら、この場で決闘だ！
ぬぬぅ……仲間達も俺が怒ってるから、落ち着けとばかりに寄ってくるしだな……

「落ち着け……クワイ………」

主……クソ！

ヒヒッヒヒーンッ！（俺の頭に乗るなよ！）

「わかったピカ……」

俺の体からやっと痺れが取れ、体がきちんと動く。
すでに多くの仲間はかなり先に行ってしまった。
主が俺の背に乗り、仲間達と一緒に先に行った仲間の元に戻る！
ムカつく新入りは俺の頭に乗らずに、主にくっついたりか何かしたようだ。

ふん！せいぜいふり落とされないよう、しっかりつかまっとけ！

俺は地面を蹴り走り出す。
勿論、少しゆっくりめにだ！仲間を置いとくなんてダメだからな！