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第三王子宮にて(マリアンヌ)
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この数日、階下が騒がしい。
多くの人が行きかってるような物音が窓から漏れ聞こえる。
夜が騒がしい訳ではなく、昼間の……朝しばらくしてから、夕方になるかな?って位までの間。
寒いから窓は開けないけど、音は聞こえる……床は石だからか、聞こえないけど気になる。
「ねぇ、ちょっと!下が煩いんだけど、どうにかならないの?」
侍女長とか言うオバサンに声を掛ける。
ニコリともしないし、何か楽しい事の一つも言わない。
ソファに腰掛けると、侍女がやって来て紅茶を出してくれる。
……学園に通ってた頃から使ってるカップでだけど。私、正妃なのよ!なんで私に相応しいカップで出さないのよ!
この部屋だって備え付けらしいソファとテーブル以外何一つ家具や調度品が無い。ドレスだってアクセサリーだって、何一つ貰って無い。
おかしいんじゃないの?部屋の壁だって……言いだしたら切りが無いけど、ヒドくない?
「正妃様、階下の音は側妃様方が入られるお部屋の支度で御座います。」
「支度?何よソレ!」
ホント、何よ!キョトンな顔すんじゃないわよ!
「側妃様方のお家から、それぞれ遣わされた者達です。室内の誂えを整えている最中で御座います。」
「誂え?何よ、ソレ?」
「……家具や調度品、床の敷物や絵画等様々な指示を側妃様から受けて整えているのです。これらが済むと側妃様のお使いになる物が次々と運びこまれます。それら全ては側妃様のお輿入れの前までに済まさねばならないので、遣わされた者達も早急に仕上げなければならないので騒がしくとも堪えて下さいませ。」
「え?ちょっと待って……何で家具とかって王様が用意してくれるんじゃないの?」
「いえ……王室典範に全て書いてあるはずです。輿入れする者は各貴族家にて全てを整える事……と。輿入れ後、宣言なされた王子殿下をお産みになった後、後宮にお移りしたのち全ての物は王家から出される事とする。とも明記されております。後宮に移る前の全ては各貴族家から出すのが決まりとなっております。……いかが致しました?」
「……そんな話知らない……」
ガランとした部屋、調度品の一つも無い……ドレスだって何だって、私の持ち物以外無い……
宣言……私、男の子三人産むまでここで暮らすの?こんなしょぼくれた部屋で?
「何よ!何なのよ!そんな話知らないし、聞いたことないのよ!何でよ!」
「ですが、ドゥルテ男爵家には王室典範や改定された事柄や注意事項が書かれた書類等が、婚約が決まったその日の内に届けられたと報告が上がっております。これは使者殿が複数名行っており、虚偽の報告は出来ません。」
「そんな……」
「正妃様はすぐさま離宮に入られたのは、男爵家では何かあっても対処出来ない為と聞いております。以前にも下位貴族家のご令嬢が輿入れ前に暴漢に襲われ、証立ての儀に乙女の純血を捧げる事が出来なくて輿入れ出来なかった事もありましたから……侍女達は余程正妃様をお迎えしたいのだと噂する程でした。」
「王室典範なんて、見た事無いもの……」
「えっ!少々お待ちを!」
何で、そんな慌ててんのよ。侍女長は早歩きで、どこかに消えた。それにしても、知らない事ばっかり……男爵家って言われても、あのケチ親父が用意なんて出来る訳が無い。暴漢に襲われたってのもありそう。それにあの……証立ての儀だっけ、あれだっておかしいじゃん……マトモじゃないよ、皆に見られてヤルとかサイテーだよ。普通、初夜とか二人っきりでするんじゃないの?そりゃあ体洗って貰ったりとか気持ち良いけどさ!
「正妃様、王室典範が運び込まれておりません。ドゥルテ男爵様は何故、運び込まれなかったのか……」
「持って来て貰えば良いじゃない。」
「誰にですか?ドゥルテ男爵家には女人のご家族がおりません。正妃様のお部屋は男子禁制です。ご家族であろうと入室する事は許されません。勿論、側妃様のお部屋だとて男子禁制なのです。」
「え?……ナニソレ……」
「妃になられたのです、たとえ親兄弟でも王子殿下以外の殿方が入る事はあってはならないのです。正妃様が王子殿下以外の殿方と同じ部屋になれるのは、唯一夜伽の間……王子殿下のお付きの者だけです。こちらの正妃様がお住まいになられている部屋に入れる殿方は王子殿下只お一人です。」
「ナニソレ……何よソレ!そんなの知らなかった!部屋からも出られない!お友達も呼べない!贅沢も出来ない!自由も何にも無いじゃん!どうしろって言うのよ!」
「輿入れなさった方は、皆様経験している事です。お友達は女性であれば、お呼びする事は可能です。勿論、身上調査をされた上に入室なさる時には検査もされますが。贅沢は……ご実家に頼れば出来るのではありませんか?後宮に移るまでは、ご実家に頼るしか贅沢は望めません。自由は、お早く王子殿下をお産みになれれば……としか。」
「女の友達なんかいないわよ!気分悪くなるようなのばっかり!アレはするな!コレははしたないって!いちいち小煩いったら!何なのよ!」
「……正妃様、それは正妃様が覚えなければならない事では?」
「分かってるわよ!学園で言われてたコト、ここでも言われてさぁ!」
「ならば……「うっさい!どっか行きなさいよ!どいつもこいつも煩いコトばっか!行けっ!行けよ!」……畏まりました。失礼致します。」
侍女長のオバサンも侍女も、誰一人居なくなってホッとする。
ソファの上、膝を抱えて座る。
「想像してたのと全然違うし、ゲームとも全然……」
ゲーム……ゲームでは結婚して終わりだった……大広間で一緒に歩くスチルだけで、他には何にも無かった……だいたい、結婚式もスチルと全然違ってた。
皆からのお祝いも無かったし、パレードも無かった。ゲーム通りじゃない……ゲームじゃないの?
「もぅ、ヤダ……帰りたい……」
何もかも不便な暮らしも、何もかも……
多くの人が行きかってるような物音が窓から漏れ聞こえる。
夜が騒がしい訳ではなく、昼間の……朝しばらくしてから、夕方になるかな?って位までの間。
寒いから窓は開けないけど、音は聞こえる……床は石だからか、聞こえないけど気になる。
「ねぇ、ちょっと!下が煩いんだけど、どうにかならないの?」
侍女長とか言うオバサンに声を掛ける。
ニコリともしないし、何か楽しい事の一つも言わない。
ソファに腰掛けると、侍女がやって来て紅茶を出してくれる。
……学園に通ってた頃から使ってるカップでだけど。私、正妃なのよ!なんで私に相応しいカップで出さないのよ!
この部屋だって備え付けらしいソファとテーブル以外何一つ家具や調度品が無い。ドレスだってアクセサリーだって、何一つ貰って無い。
おかしいんじゃないの?部屋の壁だって……言いだしたら切りが無いけど、ヒドくない?
「正妃様、階下の音は側妃様方が入られるお部屋の支度で御座います。」
「支度?何よソレ!」
ホント、何よ!キョトンな顔すんじゃないわよ!
「側妃様方のお家から、それぞれ遣わされた者達です。室内の誂えを整えている最中で御座います。」
「誂え?何よ、ソレ?」
「……家具や調度品、床の敷物や絵画等様々な指示を側妃様から受けて整えているのです。これらが済むと側妃様のお使いになる物が次々と運びこまれます。それら全ては側妃様のお輿入れの前までに済まさねばならないので、遣わされた者達も早急に仕上げなければならないので騒がしくとも堪えて下さいませ。」
「え?ちょっと待って……何で家具とかって王様が用意してくれるんじゃないの?」
「いえ……王室典範に全て書いてあるはずです。輿入れする者は各貴族家にて全てを整える事……と。輿入れ後、宣言なされた王子殿下をお産みになった後、後宮にお移りしたのち全ての物は王家から出される事とする。とも明記されております。後宮に移る前の全ては各貴族家から出すのが決まりとなっております。……いかが致しました?」
「……そんな話知らない……」
ガランとした部屋、調度品の一つも無い……ドレスだって何だって、私の持ち物以外無い……
宣言……私、男の子三人産むまでここで暮らすの?こんなしょぼくれた部屋で?
「何よ!何なのよ!そんな話知らないし、聞いたことないのよ!何でよ!」
「ですが、ドゥルテ男爵家には王室典範や改定された事柄や注意事項が書かれた書類等が、婚約が決まったその日の内に届けられたと報告が上がっております。これは使者殿が複数名行っており、虚偽の報告は出来ません。」
「そんな……」
「正妃様はすぐさま離宮に入られたのは、男爵家では何かあっても対処出来ない為と聞いております。以前にも下位貴族家のご令嬢が輿入れ前に暴漢に襲われ、証立ての儀に乙女の純血を捧げる事が出来なくて輿入れ出来なかった事もありましたから……侍女達は余程正妃様をお迎えしたいのだと噂する程でした。」
「王室典範なんて、見た事無いもの……」
「えっ!少々お待ちを!」
何で、そんな慌ててんのよ。侍女長は早歩きで、どこかに消えた。それにしても、知らない事ばっかり……男爵家って言われても、あのケチ親父が用意なんて出来る訳が無い。暴漢に襲われたってのもありそう。それにあの……証立ての儀だっけ、あれだっておかしいじゃん……マトモじゃないよ、皆に見られてヤルとかサイテーだよ。普通、初夜とか二人っきりでするんじゃないの?そりゃあ体洗って貰ったりとか気持ち良いけどさ!
「正妃様、王室典範が運び込まれておりません。ドゥルテ男爵様は何故、運び込まれなかったのか……」
「持って来て貰えば良いじゃない。」
「誰にですか?ドゥルテ男爵家には女人のご家族がおりません。正妃様のお部屋は男子禁制です。ご家族であろうと入室する事は許されません。勿論、側妃様のお部屋だとて男子禁制なのです。」
「え?……ナニソレ……」
「妃になられたのです、たとえ親兄弟でも王子殿下以外の殿方が入る事はあってはならないのです。正妃様が王子殿下以外の殿方と同じ部屋になれるのは、唯一夜伽の間……王子殿下のお付きの者だけです。こちらの正妃様がお住まいになられている部屋に入れる殿方は王子殿下只お一人です。」
「ナニソレ……何よソレ!そんなの知らなかった!部屋からも出られない!お友達も呼べない!贅沢も出来ない!自由も何にも無いじゃん!どうしろって言うのよ!」
「輿入れなさった方は、皆様経験している事です。お友達は女性であれば、お呼びする事は可能です。勿論、身上調査をされた上に入室なさる時には検査もされますが。贅沢は……ご実家に頼れば出来るのではありませんか?後宮に移るまでは、ご実家に頼るしか贅沢は望めません。自由は、お早く王子殿下をお産みになれれば……としか。」
「女の友達なんかいないわよ!気分悪くなるようなのばっかり!アレはするな!コレははしたないって!いちいち小煩いったら!何なのよ!」
「……正妃様、それは正妃様が覚えなければならない事では?」
「分かってるわよ!学園で言われてたコト、ここでも言われてさぁ!」
「ならば……「うっさい!どっか行きなさいよ!どいつもこいつも煩いコトばっか!行けっ!行けよ!」……畏まりました。失礼致します。」
侍女長のオバサンも侍女も、誰一人居なくなってホッとする。
ソファの上、膝を抱えて座る。
「想像してたのと全然違うし、ゲームとも全然……」
ゲーム……ゲームでは結婚して終わりだった……大広間で一緒に歩くスチルだけで、他には何にも無かった……だいたい、結婚式もスチルと全然違ってた。
皆からのお祝いも無かったし、パレードも無かった。ゲーム通りじゃない……ゲームじゃないの?
「もぅ、ヤダ……帰りたい……」
何もかも不便な暮らしも、何もかも……
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