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王子サマのワガママ。(討伐隊兵士の呟き)

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おそらく今日の野営で、我等が尊敬するシュバルツバルト候爵一行と別れる事となる。
雷狼の一件以来、あの第三王子は少し腰が引けたのか最早ぴったり候爵一行の野営地にくっついて設営する事にした。
まぁ、それも今日でおしまいだけどな。
男ばっかりでこまめに討伐に来ているこの辺りは、増えやすいゴブリンやスライム……後は角兎が殆どで、牙猪はもとより雷狼なんて普段は出て来ない。
牙猪はあのクソッタレなオキゾク様の所為だし、雷狼も偶々だろう。
今回の討伐の旅は色々といつもと違う、隊列の組み方も常とは違う……だいたいがシュタイン隊長は中型討伐が多くて、こちら側の街道は殆ど来ない。来ても年に1回あれば良い方だ、それ位こちら側の街道は滅多に強い魔物は出て来ない。
シュバルツバルト候爵一行の残してくれた、焼き台と四阿も普通の貴族なら作る事すらしない。あれ程立派な物を作って、更に誰もが安心して使えるように簡易型の魔物除けを施して野営出来るようにしてくれて有難い事この上ない。この先、余程の事がなければ使い続ける事が出来る。
それにしても、さっきの王子サマの発言には笑った。

『あの馬車がエリーゼのに違いない、あの馬車の近くに私の天幕を張るように』

だって、あの馬車はシュバルツバルト候爵夫人の馬車だろ。
ちゃんと馬車の紋章を見れば分かる事なのに、丸っきり見もせずに決め付けて命令して行った。側に居たシュタイン隊長はヤレヤレと笑って、小声で張ってやれと言って王子サマの後を付いて行ってしまった。
エリーゼ様の馬車は真っ黒だけど、繊細な装飾が施された馬車だろうに……誰も言わないのは言いたくないからなんだよな。
ま、王子サマの天幕が端っこだと俺達は楽なんだけどな。

「おい、そろそろ張っちまうぞ。」

「おう!」

「なぁ、こんだけ端っこだと馬車から丸見えじゃねえ?」

「むしろ馬車の中、見たかったりしてな!」

「はっはっはっ!怖い物知らずだな!俺なら絶対見ない!」

「お黙り!さっさと天幕を張っておしまいなさい!」

「「「「「ひゃいっ!」」」」」

皆で恐る恐る声のした方を見れば、体の線が丸分かりな恰好の候爵夫人の侍女が立っていました。その後ろで先端が金属の鞭を持ってる、同じような恰好の候爵夫人が立っていました。
冷え冷えとした視線を受け、俺達はブルブル震えながら無言でちゃっちゃと天幕を張りました。
天幕を張った後は、皆して離れました。
その時に出た言葉は「候爵夫人、オッカネェ」と「あの候爵夫人を妻にしてる候爵様スゲー!」でした。
雷狼なんて目じゃない怖さでした。
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