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お帰りなさいが言いたくて

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パチパチとまばたきをして、ノソリと体を起こす。
マスターの帰って来ない部屋だけど、そこかしこに大好きなマスターの匂いが残っている。
マスターが帰って来なくても、毎日そうじがされる部屋だけど!マスターが寝ない場所だけど!でもマスターの匂いが一番残ってるマスターが寝てた場所!
そこに鼻面を突っ込むと思いっきり匂いを嗅ぐ。
大好きなマスターの匂いに包まれ、幸せな気分になる。

クゥゥゥン
(マスター、いつになったら帰ってくるの?)

マスターが帰って来ると聞いて、嬉しくなった。
いつもマスターの部屋をそうじする女の人が、私の前に来て言ってくれた。
私は忘れない。

「ユキちゃん、エリーゼ様が帰って来られるのよ!嬉しいわね!」

マスターがエリーゼ様と言うのは、ちゃんと覚えている。
あの女の人はマスターの部屋に良く居て、私を部屋に入れてくれる人だ。

のんびり歩いて扉へと向かう、片方の前足で出っ張った所を引っ張れば扉が開く。
マスターに教えて貰った事!
私はゆっくり歩く、走ってはイケないと教わった。
唸ったり吠えたり……そういうのも、なるべくしてはイケないと教わった。
マスターの部屋から出て、外に通じる大きな扉のある場所に来ると必ず誰かが居る。

「おや、ユキちゃん。もう外に行くのかい?」

今日はマスターのお父様って人と同じ位の男の人が居た。
私に声をかけると大きな扉が開いた。

外に出て思い切り走る。
お気に入りは馬達が走る草原だけど、馬達はおっかない。
特におっかないのは「チョロギー」だ!
あいつは私より大きい。
しかも私を見ると追いかけて来る!
良く追いかけっこをするけど、大きいからおっかないのだ。

私はうっかり草原に入り込んでしまった。
朝もやの中ドカッドカッって音が響いてくる……

ーユキー!遊ぼう!ー

チョロギーだ!チョロギーの遊びは追いかけっこだ。
私は草原の中、全速力で逃げる。
追いかけて来るのはチョロギーだ。
時々振り返って見るチョロギーの姿は、真っ白でたてがみや尾が日の光を浴びてキラキラして美しい。
走りすぎて喉が渇く……湧き水が出る泉に向かってゆっくり走る。
チョロギーもゆっくり走って来て、一緒に泉に行く。

一緒に泉に行って、水を飲んで木陰に行く。

ーマスター、いつ帰ってくるかな?ー

ー待ち遠しいなー

私達は念じるだけで話が出来る。
おっかない友達のチョロギーとたっぷり遊ぶ。
マスターに早く会いたい。
私もチョロギーもマスターに会いたいのだ。

マスター、早く帰って来て。

思い出すのはマスターの笑顔ばかり。
マスターの優しい声、優しく撫でてくれる手……何もかもが大好き!
マスター!マスター!お帰りなさいって早く言いたいの!
だから、早く帰って来て!マスター!
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