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討伐の旅 19

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領地に帰る長い隊列の後を付いて、弱い魔物を討伐しながら進む。
草原の有り様がどんどん変わって、辺り一面の草がどんどんまばらになってきた。

「もう、そろそろこの辺りの休憩所になります。」

シュタインの言葉に無言で頷く。

「先行しているシュバルツバルト候は、通り過ぎて休憩するようです。私達は休憩所を使わせて頂きましょう。」

「ああ……分かった。」

俺の不義理を責めるでもなく、こうやって今も気を使って貰っている。この討伐隊より遙かに多い人数で進むエリーゼ達、時折馬や人が駆けて行くのを見た。
俺達より先に討伐してゆっくり進んでいる。

ざわつく兵士達が休憩所の竃を使って、湯を沸かしている。馬から降りて竃の近くに行くと、兵士達の様子が少しおかしかった。

「どうし……た?」

何だ?えらく良い匂いがする……どこから?

「何か腹が減る」「何だよ!スゲェ美味そうな匂いさせやがって!」「干し肉とかツラい」

そんな兵士達の言葉があちこちから聞こえる。

「ああ、殿下!まいりましたな!どうやらシュバルツバルト候は何か料理を作っているみたいで、その匂いがこちらにまで流れて腹が減りますな!」

シュタインの言葉に俺はちょっとだけ、恨めしい気持ちになった。

「それにしても初めて嗅ぐ匂いですな!いったいシュバルツバルト候はどんな料理人を抱えているのか……」

確かに初めて嗅ぐ匂いだ……クルルと腹が鳴ってきた。
竃は幾つかあって、その1つに鉄串に刺した肉が炙られ始める。そうすると空いている竃に次々と鉄串肉が焼かれ始める。俺は湯を貰いに鍋の近くに行くと、見ず知らずの兵士が湯を注いだカップを差し出してくれた。

「ありがとう。」

兵士はびっくりした顔で俺を見ると、あぁ……とかうん……とか言っていた。何の味も無い、ただの湯をゆっくり飲んで体を温める。
今、焼いている肉は昨日の牙猪だ。
ワイワイと肉が焼けるのを待つ兵士達を責めたい気持ちはある、だが肉は俺達の命を繋ぐ糧だ。
責める事なんか出来ない、だいたいが昨日俺達は殆ど何もせず肉だけ貰っている……どこに責める所があるのか俺には分からない。

「殿下、肉が焼けました。お腹が空いたでしょう、どうぞ食べて下さい。」

そうシュタインに鉄串肉を差し出され、俺は受け取り一口齧る。

「ありがとう、シュタイン。美味い肉だな。」

シュタインは一瞬驚き、その後笑顔で俺を見つめた……今まで見たことのない笑顔だった。
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