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討伐の旅 12
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食事も済んで、一人安いベッドでゴロリと横になる。
今頃マリアンヌは一人寂しく過ごしているだろう……愛し合って婚姻してのに、早々に討伐隊として旅立った俺を心配してるだろう………
薄暗く埃臭い安宿は、酷く惨めな気分になる。
…………?ドカドカと激しい足音がする……一体何事だ?
ーシュタイン、重要な案件だ。野営地に女は入れるな!魔物からすればご馳走らしい。それと俺達の野営地から村を挟んだ向こうに魔物の群れが居るとの情報だ、心当たりはあるか?俺は今から向かう所だ。ー
ーキャスバル様!女が魔物を呼ぶと言う事ですね、心当たりはあります。同道しているクズイ子爵令息がこの村の娼婦を野営地に連れ込みました。私も一緒に行きます。ー
!!!ミヒャエルの野営地に魔物がいる?しかも群れで?
俺は飛び起き、いまだ解いてなかった武装のままで良かったと部屋を飛び出した。
「シュタイン!ミヒャエルの野営地が襲われているって……」
俺の目の前にシュタインと一緒に居たのは、エリーゼの兄だった……冷たい美貌と男らしい引き締まった体の美丈夫………姦しい城勤めの女達が遊びでも良いから抱かれたいと話していた次期侯爵………俺の苦手な男がそこに居た。
「殿下……えぇ……キャスバル様からのお話では、そのように今聞いた所です。」
「シュタイン、悪いが出遅れるのは嫌なんでな行かせて貰う。」
そう冷たく言い捨て、早足で俺の前から遠ざかる。
「殿下、あちらは危ないです。どうか、こちらでお待ち下さい。私は隊長です、報告の義務もありますから行かねばなりません。」
外に出ようと踵を返すシュタインの背に向かって、つい叫んでしまった。
「ミヒャエルは俺の友人なんだ!心配なんだ!一緒に行かせてくれ!」
俺の叫びに立ち止まったシュタインはチラリと振り返った、苦々しい顔で……
「分かりました……ですが、必ず皆の前に出て来ないで下さい。皆の後ろに居る事をお約束下さい。」
「分かった。」
シュタインは俺の希望を受け入れ、連れて行ってくれた。
馬に乗ってミヒャエルの野営地で見たのは、屈強な兵士達と次々と倒される大きな牙を持つ猪と引き裂かれた天幕…………そして人間の一部だったと思われるグチャグチャに踏み荒らされた肉片と赤黒く染まった地面。
獣臭と血と肉の匂いに俺は耐えきれなくて、宿で食べた食事を吐き出した。
ゲエゲエと吐き出し口元を袖で拭って、改めて野営地を見渡すと一際大きな牙を振るう巨大な猪が居た。
その巨大な猪と戦っているのはエリーゼの兄達だ………
あんな巨大な猪と戦うなんて…………
「エリーゼ様………」
シュタインの驚きに満ちた、小さな……本当に小さな叫びに俺はシュタインの視線の先……あの巨大な猪を見る。
居た………巨大な猪の背に乗り、何度も剣を突き刺しては抜いてを繰り返していた。
大きく振りかぶって………グラリと………倒れる!
「エリーゼ!」
思わず叫んでしまった。
エリーゼは倒れる事無く、攻撃を続けていた。
エリーゼは絶え間なく攻撃し続けていた……そして………そしてエリーゼが飛び降りて少ししたら、巨大な猪は音を立てて倒れた。
ミヒャエルが亡くなった事よりも、エリーゼが魔物と戦っていた事の方が驚いた。
今頃マリアンヌは一人寂しく過ごしているだろう……愛し合って婚姻してのに、早々に討伐隊として旅立った俺を心配してるだろう………
薄暗く埃臭い安宿は、酷く惨めな気分になる。
…………?ドカドカと激しい足音がする……一体何事だ?
ーシュタイン、重要な案件だ。野営地に女は入れるな!魔物からすればご馳走らしい。それと俺達の野営地から村を挟んだ向こうに魔物の群れが居るとの情報だ、心当たりはあるか?俺は今から向かう所だ。ー
ーキャスバル様!女が魔物を呼ぶと言う事ですね、心当たりはあります。同道しているクズイ子爵令息がこの村の娼婦を野営地に連れ込みました。私も一緒に行きます。ー
!!!ミヒャエルの野営地に魔物がいる?しかも群れで?
俺は飛び起き、いまだ解いてなかった武装のままで良かったと部屋を飛び出した。
「シュタイン!ミヒャエルの野営地が襲われているって……」
俺の目の前にシュタインと一緒に居たのは、エリーゼの兄だった……冷たい美貌と男らしい引き締まった体の美丈夫………姦しい城勤めの女達が遊びでも良いから抱かれたいと話していた次期侯爵………俺の苦手な男がそこに居た。
「殿下……えぇ……キャスバル様からのお話では、そのように今聞いた所です。」
「シュタイン、悪いが出遅れるのは嫌なんでな行かせて貰う。」
そう冷たく言い捨て、早足で俺の前から遠ざかる。
「殿下、あちらは危ないです。どうか、こちらでお待ち下さい。私は隊長です、報告の義務もありますから行かねばなりません。」
外に出ようと踵を返すシュタインの背に向かって、つい叫んでしまった。
「ミヒャエルは俺の友人なんだ!心配なんだ!一緒に行かせてくれ!」
俺の叫びに立ち止まったシュタインはチラリと振り返った、苦々しい顔で……
「分かりました……ですが、必ず皆の前に出て来ないで下さい。皆の後ろに居る事をお約束下さい。」
「分かった。」
シュタインは俺の希望を受け入れ、連れて行ってくれた。
馬に乗ってミヒャエルの野営地で見たのは、屈強な兵士達と次々と倒される大きな牙を持つ猪と引き裂かれた天幕…………そして人間の一部だったと思われるグチャグチャに踏み荒らされた肉片と赤黒く染まった地面。
獣臭と血と肉の匂いに俺は耐えきれなくて、宿で食べた食事を吐き出した。
ゲエゲエと吐き出し口元を袖で拭って、改めて野営地を見渡すと一際大きな牙を振るう巨大な猪が居た。
その巨大な猪と戦っているのはエリーゼの兄達だ………
あんな巨大な猪と戦うなんて…………
「エリーゼ様………」
シュタインの驚きに満ちた、小さな……本当に小さな叫びに俺はシュタインの視線の先……あの巨大な猪を見る。
居た………巨大な猪の背に乗り、何度も剣を突き刺しては抜いてを繰り返していた。
大きく振りかぶって………グラリと………倒れる!
「エリーゼ!」
思わず叫んでしまった。
エリーゼは倒れる事無く、攻撃を続けていた。
エリーゼは絶え間なく攻撃し続けていた……そして………そしてエリーゼが飛び降りて少ししたら、巨大な猪は音を立てて倒れた。
ミヒャエルが亡くなった事よりも、エリーゼが魔物と戦っていた事の方が驚いた。
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