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討伐の旅 8
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俺は呼ばれるままに昼食を取った、あんなに味気なかっただろうか?食べているのに、不思議といつもの満足感も満腹感も無かった。
ただ出された物を食べて飲んで、空になった食器が下げられ俺は自室に戻ってきた。
ぼんやりと外を眺めてると。従僕が何人かの騎士を連れてやって来た。
それぞれ剣や丸盾、鎧等を手にしている。
俺の武装だった………何も考える事も出来ず、騎士達に次々と武装を装着される。
革や金属で出来た武装は重く、動く事もままならない。
嫌だ嫌だと逃げ回った剣が、やけに重く感じる……こんな重い物を振るなんて出来ない。
「では、参りましょう。」
従僕の声に頷き、ついて行く。
長い廊下……いつもなら、この廊下を澱むこと無く歩いて行けるのに重い武装を纏って歩く事がこんなに大変だとは思わなかった。
先を歩く従僕は歩き出してすぐに、その歩調を緩めゆっくりと先導していく。
顔に当たる少し冷えた空気が心地良い、既に武装の下のシャツやパンツは汗で湿って来ている。
王宮の幾つかある出口の一つの扉が開かれる。
従僕は脇に下がり、俺は外へと出て行く……眼前に佇むのは多くの兵士達と馬、幾つもの荷馬車。
数歩進むと、シュタインが1頭の馬を連れ近寄って来る。
「殿下、こちらが殿下の馬です。どうぞ、お乗りになって号令を掛けて下さい。」
俺は言われるままに馬に乗った、重かったが何とか乗れてホッとした。
普段乗っている馬とは違う、これが軍馬なのかと感心する。
大きな体、重い武装を付けているにも関わらずビクともしない。
俺は顔を上げ、真っ直ぐ兵士達を見やる。
「では、出立する!」
オォォォォー!!
兵士達の鬨の声が俺の弱い心を震わす。
そしてゆっくりゆっくりと行進していく………俺は、シュタインの後を付いて馬に揺られて行く。
長い兵士の行列が王都に続く緩やかな坂をゆっくりと下って行く。
「殿下、大丈夫です。私達が殿下をお守りするんです、もっと私達を信じて下さい。」
シュタインの言葉に、俺はどんな顔で兵士達を見ていたのか不安になった。
「信じている……信じていなければ、俺はここに居ない。」
「さすがです。殿下、私は殿下の味方です。どんな窮地も私が側に居る限り、私は殿下を守り抜きます。」
そう何度も言ってくれるシュタインに、何とか笑顔を向ける。
そんな俺を見て、ニカッと笑いウンウンと頷く。
「そうそう、殿下!笑顔で王都を抜けるのです。大丈夫だと、任せろと笑顔で行くのです。笑わなくったって、笑顔を浮かべて行くだけで見ている者達は安心しますからな!」
俺は前を向いて、ぎこちないだろう笑顔で進んで行く。
シュタインを信じて……共に行く兵士達を信じて。
ただ出された物を食べて飲んで、空になった食器が下げられ俺は自室に戻ってきた。
ぼんやりと外を眺めてると。従僕が何人かの騎士を連れてやって来た。
それぞれ剣や丸盾、鎧等を手にしている。
俺の武装だった………何も考える事も出来ず、騎士達に次々と武装を装着される。
革や金属で出来た武装は重く、動く事もままならない。
嫌だ嫌だと逃げ回った剣が、やけに重く感じる……こんな重い物を振るなんて出来ない。
「では、参りましょう。」
従僕の声に頷き、ついて行く。
長い廊下……いつもなら、この廊下を澱むこと無く歩いて行けるのに重い武装を纏って歩く事がこんなに大変だとは思わなかった。
先を歩く従僕は歩き出してすぐに、その歩調を緩めゆっくりと先導していく。
顔に当たる少し冷えた空気が心地良い、既に武装の下のシャツやパンツは汗で湿って来ている。
王宮の幾つかある出口の一つの扉が開かれる。
従僕は脇に下がり、俺は外へと出て行く……眼前に佇むのは多くの兵士達と馬、幾つもの荷馬車。
数歩進むと、シュタインが1頭の馬を連れ近寄って来る。
「殿下、こちらが殿下の馬です。どうぞ、お乗りになって号令を掛けて下さい。」
俺は言われるままに馬に乗った、重かったが何とか乗れてホッとした。
普段乗っている馬とは違う、これが軍馬なのかと感心する。
大きな体、重い武装を付けているにも関わらずビクともしない。
俺は顔を上げ、真っ直ぐ兵士達を見やる。
「では、出立する!」
オォォォォー!!
兵士達の鬨の声が俺の弱い心を震わす。
そしてゆっくりゆっくりと行進していく………俺は、シュタインの後を付いて馬に揺られて行く。
長い兵士の行列が王都に続く緩やかな坂をゆっくりと下って行く。
「殿下、大丈夫です。私達が殿下をお守りするんです、もっと私達を信じて下さい。」
シュタインの言葉に、俺はどんな顔で兵士達を見ていたのか不安になった。
「信じている……信じていなければ、俺はここに居ない。」
「さすがです。殿下、私は殿下の味方です。どんな窮地も私が側に居る限り、私は殿下を守り抜きます。」
そう何度も言ってくれるシュタインに、何とか笑顔を向ける。
そんな俺を見て、ニカッと笑いウンウンと頷く。
「そうそう、殿下!笑顔で王都を抜けるのです。大丈夫だと、任せろと笑顔で行くのです。笑わなくったって、笑顔を浮かべて行くだけで見ている者達は安心しますからな!」
俺は前を向いて、ぎこちないだろう笑顔で進んで行く。
シュタインを信じて……共に行く兵士達を信じて。
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