上 下
51 / 751

婚姻式の日 ~王子妃後宮~

しおりを挟む
私はダリアに問いただす。

「今回の婚姻式について、帝国から何かありましたか?」

ダリアは緩く首を振ると、微妙な面持ちで私を見つめた。

「特別な事はありません。ただ、第5皇子が現在単身旅行中で訪れる可能性が高いと一ヶ月前の報告の返信にありました。」

第5皇子ね………皇室に対して敵意や害意は無いが、執着が薄く臣籍降下を望んでる……とか……少し浮き世離れした方のようだと聞き及んでいる……

「第5皇子殿下………可能性が高いか……私の娘に接触する可能性はあるかしら?」

率直な疑問だ、シルヴァニア家とゴルゴダ家は婚姻関係を持つ事を避けてきた。
まるで時が来るまで血を混ぜぬ様にするかの如く……だが………何故だか、エリーゼと皇子の運命は重なるのではないのか?と感じる。

「分かりません。」

ダリアの答えは最もだ。
私が薄らと感じる事を最下位のダリアに分かる筈も無かった。
ふむ……明後日には王都を離れる予定故、ダリアを使ってキャロライン妃と繋がりを深めるか。

「キャロライン妃殿下、私は明後日には王都を離れる予定でおります。せっかく親しくなれそうですのに、残念で御座います。」

反応を見た具合で決めましょうか。
キャロライン妃は少し驚いた様子で私を見ると、直ぐさまダリアを見た。
僅かばかり思案すると、ニコリと微笑んだ。

「そう、王都を離れる予定ですのね。それは残念ですわ、でも私の元にはダリアが居ますわ。文や言伝のやり取りは出来ましょう、私の方からダリアに頼む事も多々あるでしょう。」

私もニコリと微笑む。
確かにキャロライン妃殿下は皇太子殿下の血を引いてらっしゃる。

「有難きお言葉。では、これより私の事はフェリシアとお呼び下さいませ。キャロライン妃殿下。」

キャロライン妃は少女の様にクスクスと笑うと小さく頷いた。

「分かりましたわ、フェリシア様。では私の事はキャロラインと、わざわざ妃殿下など付けなくて良いですわ。」

思ったより砕けた仲になれそうで、嬉しくなる。

「ありがとうございます、キャロライン様。つまらない相談事でもお話になられるだけで、気が晴れる事は良くある事ですわ。お気軽に文なり下さいませね。」

私の言葉を聞いて笑みが深くなる。

「勿論ですわ。」

今日はこれだけで構わないだろう。

「さて、長々と申し訳ありません。そろそろ王妃陛下の元に戻らねば、詰まらぬ邪推を為れかねませぬ故これで失礼致します。」

「フェリシア様、どうか私を末永く見守って下さいませ。」

…………帝都から遠く離れた地で、人質同然と思い過ごしてきたであろう皇女殿下。
力添えして当たり前なのに、心寂しかったのだろうか?

「勿論で御座いますよ、キャロライン様。」

その言葉に軽く頭を下げたキャロライン様と深々と頭を下げたマーガレット。
ダリアだけがそっと2人の背後で頷き、手で小さく合図を送ってくる。
2人を手助けして欲しい。
了解。と素早く手で合図を送る。

「では、失礼致します。」

挨拶をして、キャロライン妃の居室から下がり来た道を戻る。
さて、どうやってグレースを丸め込もうか?
小さな忍び笑いを漏らすと、エミリが隣にやってきて同じように忍び笑いをこぼした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】豊穣の聖女な私を捨てない方がいいと思いますよ?あっ、捨てるんですか、そうですか・・・はーい。

西東友一
恋愛
アドルド王子と婚約し、お祝いに必要だからと最高の景色と最高の料理のために、花々や作物に成長魔法を掛けろと言われたので、仕方なく魔法をかけたら王子に婚約破棄されました。 あの~すいません、私の魔法の注意事項をちっとも聞かなかったですけど、私はいなくなりますよ? 失礼します。 イラストはミカスケ様(イトノコ様)の物を使用させていただいてます。(7/8より) 私は見た瞬間感動しました。よろしければ、絵師様も応援してあげてください。 ※※注意※※ ・ショートショートから短編に変更です。まだ私の実力ではショートショートは難しいようです。  25話以内に収まる予定です。お忙しい皆様本当にごめんなさい。 ・一部過激性的表現と思われるかもしれません。 ・ざまぁへのための布石で、不快な思いをされる方がいるかもしれません。 ・朝見るものじゃないかも。深夜にアップするので深夜に見てください?いや、皆さんは目が肥えているから大丈夫かも? ・稚拙な内容でこんな程度で、ここまで注意書きするなよって、なるのが一番申し訳ないかもです。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

悪役令嬢は可愛いものがお好き

梓弓
恋愛
『前世にプレイした乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました……。 例に漏れず、最終的には悪事を糾弾されて死亡するというキャラ。 でもそんなのはごめんです! ヒロインをいじめるつもりはありません。 引きこもります。 前世の趣味は、ゲーム、読書、モノ作りというインドアな乙女でしたから、問題無しです!』 悪役令嬢として生を受けた少女が、死亡フラグを回避するために引きこもります。 しかし、自分の趣味に邁進するにつれて何故か周りを巻き込んで行き、避けていたヒロインや攻略キャラとも関わりができてしまいます。 果たして、シオンに平穏な日々は訪れるのでしょうか……?

男装の公爵令嬢ドレスを着る

おみなしづき
恋愛
父親は、公爵で騎士団長。 双子の兄も父親の騎士団に所属した。 そんな家族の末っ子として産まれたアデルが、幼い頃から騎士を目指すのは自然な事だった。 男装をして、口調も父や兄達と同じく男勝り。 けれど、そんな彼女でも婚約者がいた。 「アデル……ローマン殿下に婚約を破棄された。どうしてだ?」 「ローマン殿下には心に決めた方がいるからです」 父も兄達も殺気立ったけれど、アデルはローマンに全く未練はなかった。 すると、婚約破棄を待っていたかのようにアデルに婚約を申し込む手紙が届いて……。 ※暴力的描写もたまに出ます。

迅速な婚約破棄、迅速な復讐、迅速な…

小砂青
恋愛
婚約者と親友が浮気していた。 そう知ったあとの私たちの行動は実に迅速だった。

幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。 そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。 頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります! エメルロ一族には重大な秘密があり……。 そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。

3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい

エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。 だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい 一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。

処理中です...