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婚姻式の日 ~証立ての儀・グレース~

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ーコンコンー
ー失礼致します。ー

室内に入室を知らせるノックと声が聞こえる。
とうとう、あの娘が入室してくるのだ……
あの娘に付いた侍女頭が片手にガラス瓶を手に入って来た。
そして侍女頭の後をあの娘は質素な身なりで入って来た。

「なんだ、あの恰好は?」

夫の呟きに私達も驚きを隠せなかった。
決して暖かいとは言い難い、契りの間に簡素の夜着1枚で来るなど……せめてもう1枚羽織れば……
それだけでは無い、まるで平民の着る如く簡素な作りの物を着て来るなど輿入れした令嬢とは思えぬ程………
どうにもおかしい、調査では王都でのドゥルテ男爵は人品卑しいが男爵としては税も納め商売もそこそこだと………令息がいるが社交嫌いで領地から出てこないとか………
離れた領地故、あちらにまで人をやって無かったが今一度調べ治させた方が良い気がする。
何かがおかしい……あの娘に対しては、引っかかる。
我が息子に関しては、細かく調べさせ対処するしかあるまい。

ーあぁ、マリアンヌ待っていたよ。ー
ージークフリート様、その……今から初夜を迎えるのですよね?なんで、こんなに人が居るのですか?ー

やはり、あの娘は分かってなかった……
室内から響く声には、不安と不満が滲み出ている。

ー当たり前だろう。今からマリアンヌが守り通してきた純潔を王家に……俺に捧げるんだ。その純血を皆に知らしめる為の儀式なんだぞ。ー
ーえ?嘘でしょう?ー

ー嘘なもんか、ほら、上に父上も母上も兄上達や義姉上達もいるぞ。今からマリアンヌの純潔を俺が奪うんだ。純潔を奪った証を皆に知らしめてやっと、可愛いマリアンヌは俺の妻だと認められるんだ。ー
ーう……そ………そんな………やだぁっ!こんなっこんな皆の前でなんて聞いてないっ!やめさせてよぉっ!ー

離宮で何度も教えたと報告された。
儀式は中断されることも王の宣言まで誰1人退室されることも許されない厳しいものだと何度も教えられた筈なのに………あの娘は………

ー知らないっ!こんなの知らないっ!出て行かせてよっ!王子なんでしょぉっ!ー
ーおいっ!お前達!マリアンヌをベッドの上に引き上げろ。マリアンヌ、聞き分けない事言うな。俺の妻だと認められたくないのか?ー
ーやだぁ!離しなさいよぉっ!王子妃なのよっ!あんた達より偉いのよ!ねぇ、離して!離してよっ!ー

ギリ………眼下に居る2人の醜さに奥歯が鳴る。
優しく諭し言い含める事もしない息子と、どうにか嫌な事から逃げだそうとする義娘。
更に強引に儀式を進めようとする悪手をうつなど、虫酸が走る。
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