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婚姻式の日 ~証立ての儀・グレース~

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あの長い婚姻式も済み、残すは証立ての儀だけ。

私は甘ったれで愚かな所もあるが、それでも可愛い息子にと最愛の親友であるフェリシア様の御息女を婚約者にと薦めた。
その願いは夫に聞き入れられ、末の王子の元に来る義理の娘に歓喜した。
それなのに………私の願いは可愛い末の息子によって、儚く消えた。
可愛いと信じていた息子は唯々愚かな甘ったれなだけの男だった。
母たる私の思いも願いも、一瞬で潰えた………
王子も第3となれば余程頑張らねば先行きも不安であろうし、暮らしぶりを落とす事も難しい。
シュバルツバルト家の豊かさは、侯爵家としては断トツであった。
それこそ並み居る公爵家と同等かそれ以上と、調べた貴族達も太鼓判を押して………
そんな詮無いことをツラツラと考えながら、王子宮の契りの間を見渡す事の出来る小部屋に向かう。

契りの間………証立ての儀で初夜を迎えた後、夫と交わる為の部屋……
その為だけの部屋だが、宣言した子供を産むまではその部屋以外で夫と会う事が出来ない。
いや…会えるのかも知れないが朝から晩まで公務に追われ疲れ果てた体で、僅かな時間を割いて子作りに励んでくれる夫に無理な願いは出来なかった。
契りの間より高い位置にある小部屋からは、契りの間は丸見えで何一つ隠せず誰1人隠れる事等出来ない。
王族全員で嫁いで来た娘が、真なる純潔の乙女である証……その純血を捧げたのか見定める為の小部屋。
契りの間もこちらの小部屋も煌々と灯りがともされ、明るい……何一つ誤魔化す事等出来ぬ程に。

契りの間を見下ろせば、部屋の中には息子達の従僕や私の侍女等が部屋に待機していた。
証立ての儀を滞りなく進める為の人員であり、万が一の為の護衛でもある。
息子達は2人ずつ従僕を出したらしく、6人の従僕がベッドの両脇に3人ずつ配置されている。
私の侍女は息子が出入りする扉の近くに居た。

「ふむ………グレースよ、第3とは言え久方ぶりに低位貴族の令嬢を王族に迎えるが……上手くいくかな?」

陛下は私の隣に立ち、部屋を見下ろしながら問いかける。

「分かりませんわ。私には知り得ませんわ。」

5代前・4代前に嫁いできた低位貴族の令嬢以来……か……
あのお二方によって、婚姻式はがらりと変わった。
より厳しく、更に閉ざされた……いや、懸念はずっと在ったのだろうな……だからこそ厳しくなったのか……
軽くため息をついて、夫の顔を見る。

「愚かな事だ………親心が分からんとは………」

夫は憮然とした表情で契りの間を見つめながら、隣に居る私が何とか聞こえる程小さな声で呟いた。
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