15 / 753
蜜水⑮ BL風味注意
しおりを挟む
どれだけそうして居ただろう、何も考えられずに撫でられ続けていた。
ーダンダンダンー
「とーさまー!あーけーてー!とーさまー!」
ーダンダンバンッー
キャスバルにとって、この静かで満たされた時間はエリーゼのけたたましい叫び声で終わりを告げた。
父の手が離れ、僅かに寂しさを感じるが多分それどころではないのだろう。
ーバンッバンッバンッー
「あけてー!あーけーてー!とーさまー!あけてー!」
ーバンッバンッバンッー
「アレク、早く開けてくれ!」
恐らく平手で思いっきり叩いているのだろう、手を傷めているかも知れない。
こんなに慌てて叫んでいるのだ、何かあったのかも知れない。
父の慌てているように、キャスバルも慌てた。
アレクが慌てて扉を開けると、転がるようにエリーゼが入ってきた。
「とーさまー!キャス兄さまとケンカしないでー!」
エリーゼは、そう叫ぶとわぁわぁと泣き出した。
ハインリッヒが抱き上げ、落ち着かせようとしてもエリーゼは父の胸をバシバシと叩いていた。
エリーゼの小さな手の平は真っ赤になって、見るからに痛そうなのにそれでも止まらなかった。
父もキャスバルもアレクも、この賢いエリーゼが心配して転がり込んできたのは蜜水の事だと予想した。
なぜ父と兄が争うと思ったのか?疑問に思うより、エリーゼの抗議が必死過ぎて3人は困っていた。
ーコンコンー
「失礼致します。」
軽いノックの後、フェリシアの侍女エミリが扉を開け入ってきた。
当然フェリシアが後に続いている。
「あぁ、ここにいたのね。エリーゼ、お父様を困らせてはダメよ。」
フェリシアはソッと近付くと、いまだ泣きながら暴れるエリーゼの頭を撫でた。
「いらっしゃい。」
母フェリシアの一言でエリーゼは暴れるのを止め、母に手を伸ばした。
父はゆっくりとエリーゼを母に渡すと、あからさまにホッとした。
「エリーゼ、どうしたの?さっきまで、あんなにご機嫌だったのに。」
小さな妹はエグエグと泣きべそをかき、むくれた顔で父を見ていた。
「みつ…ヒッ……すいは……フッ……キャス兄さま……ッ……と……ヒッ……レイッ……に……ちゅくッ……た………ふ……うーぅ…ぅあーッ」
エリーゼはキャスバルとレイの為に作ったのだと訴えて泣いている、と大人達は理解した。
自分達は有用性の高さ故に、エリーゼの気持ちを置いてきぼりにしてしまった。
「ぅあーッ!キャス兄さまとレイのためにッちゅくッたのにーぃ!とーさまーがとりあげたー!」
噛んでるし、勘違いしていた。
恐らく、自室に戻って暫くしてから気がついたのだろう。
気がついて直ぐにキャスバルの部屋に向かったのだろう。
キャスバルが部屋に居ないと知って父の部屋にやって来たのだ。
蜜水を取り返そうとしているかも知れない兄を心配し、父がキャスバルに渡さないかも知れないと。
そんな不安がエリーゼの中で父とキャスバルが争っているかもと、駆り立て父の執務室に乱入してきたのだろう。
ーダンダンダンー
「とーさまー!あーけーてー!とーさまー!」
ーダンダンバンッー
キャスバルにとって、この静かで満たされた時間はエリーゼのけたたましい叫び声で終わりを告げた。
父の手が離れ、僅かに寂しさを感じるが多分それどころではないのだろう。
ーバンッバンッバンッー
「あけてー!あーけーてー!とーさまー!あけてー!」
ーバンッバンッバンッー
「アレク、早く開けてくれ!」
恐らく平手で思いっきり叩いているのだろう、手を傷めているかも知れない。
こんなに慌てて叫んでいるのだ、何かあったのかも知れない。
父の慌てているように、キャスバルも慌てた。
アレクが慌てて扉を開けると、転がるようにエリーゼが入ってきた。
「とーさまー!キャス兄さまとケンカしないでー!」
エリーゼは、そう叫ぶとわぁわぁと泣き出した。
ハインリッヒが抱き上げ、落ち着かせようとしてもエリーゼは父の胸をバシバシと叩いていた。
エリーゼの小さな手の平は真っ赤になって、見るからに痛そうなのにそれでも止まらなかった。
父もキャスバルもアレクも、この賢いエリーゼが心配して転がり込んできたのは蜜水の事だと予想した。
なぜ父と兄が争うと思ったのか?疑問に思うより、エリーゼの抗議が必死過ぎて3人は困っていた。
ーコンコンー
「失礼致します。」
軽いノックの後、フェリシアの侍女エミリが扉を開け入ってきた。
当然フェリシアが後に続いている。
「あぁ、ここにいたのね。エリーゼ、お父様を困らせてはダメよ。」
フェリシアはソッと近付くと、いまだ泣きながら暴れるエリーゼの頭を撫でた。
「いらっしゃい。」
母フェリシアの一言でエリーゼは暴れるのを止め、母に手を伸ばした。
父はゆっくりとエリーゼを母に渡すと、あからさまにホッとした。
「エリーゼ、どうしたの?さっきまで、あんなにご機嫌だったのに。」
小さな妹はエグエグと泣きべそをかき、むくれた顔で父を見ていた。
「みつ…ヒッ……すいは……フッ……キャス兄さま……ッ……と……ヒッ……レイッ……に……ちゅくッ……た………ふ……うーぅ…ぅあーッ」
エリーゼはキャスバルとレイの為に作ったのだと訴えて泣いている、と大人達は理解した。
自分達は有用性の高さ故に、エリーゼの気持ちを置いてきぼりにしてしまった。
「ぅあーッ!キャス兄さまとレイのためにッちゅくッたのにーぃ!とーさまーがとりあげたー!」
噛んでるし、勘違いしていた。
恐らく、自室に戻って暫くしてから気がついたのだろう。
気がついて直ぐにキャスバルの部屋に向かったのだろう。
キャスバルが部屋に居ないと知って父の部屋にやって来たのだ。
蜜水を取り返そうとしているかも知れない兄を心配し、父がキャスバルに渡さないかも知れないと。
そんな不安がエリーゼの中で父とキャスバルが争っているかもと、駆り立て父の執務室に乱入してきたのだろう。
108
お気に入りに追加
6,716
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる