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秘密
皇の告白
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『神言の間』とは、御所の最深部に設けられているという部屋である。
――そんな表現が示すとおり、そこにどう行けば至るのか?、どのような場所なのかを知るのは、極々僅かな者だけ。
入る事が許されるのは、代々の皇と代々の大巫女、同じく代々の三大国の国守――そして、これまた代々の刀聖だけだ。
そう――神言の間とは、皇が各国守や大巫女、刀聖と一対一で、会談するための場所なのである。
サトコの言葉を請け、ソウタと彼女は、主殿の玉座の後ろにある、豪奢な門を抜け――その先の、煌びやかに装飾された通路を進んでいた。
もちろん、門より奥は、既に聖域の一種なので、通路を歩むのは、当の2人だけ――つまり、"二人っきり"である。
「~~♪」
そんな、神聖な場所へと向うには、不釣合いな笑顔で――サトコが歩いている理由は、言わずもがなではあったが。
「――なあ、サトコ?」
ソウタも、二人きりである事を利して、くだけた口調で声を掛けた。
「俺――着替えた方が、良かったんじゃないか?、戦場支度のまんまってのはさ……」
義兵たちに支給された、粗末な皮具足のままである事を気にして、ソウタは顔をしかめる。
「あらぁ?、そんなコトを気にする刀聖なら、皇だけにでも、自分が刀聖である事を、明かしているのではありませんか?」
サトコは得意気に、皮肉っぽくそう応じた。
「やっぱ、怒ってるのか……隠してた事」
「当たり前ですっ!」
ソウタが、愚痴っぽく独り言を漏らすと、耳聡くそれを聞いていたサトコは、クルッと振り返り、彼の鼻先にビシッと人差し指を立てる。
「刀聖と皇は、古の世からの世界の要――継承者は、必ず一度は皇を訪ねるべき慣わしっ!
なのに、三年有余の間も、それを行わずっ!、よぅ~やくっ!、訪ねて来たのかと思えば……なんとっ!、その事を隠すだなんてぇ~!、恐らく、前代未聞の刀聖なのでしょうねっ!」
サトコは、引きつった笑顔をして、そう捲くし立てる。
「――言ったろ?、俺は、継承を承服したつもりはねぇと思ってたし、観念したとしても、自分は、刀聖としてまだまだ半人前――皇に、面と向って名乗るのは、憚られたってのが正直なトコだ。
そんな思いがあってのコトなんだから、どうか許して欲しい……」
ソウタは、まったく反論はせずに、サトコへ向けて深く頭を垂れた。
「うっ……そんな風に、素直に謝られてはぁ……」
サトコは、ポォッと頬を赤らめると、困惑して目を逸らす。
「あっ、あのよぉ……俺も、一つ良いか?」
目線が合わなくなった途端、ソウタは何だかモジモジと、恥ずかしがる素振りを見せて――
「――その、この指輪……きゅっ!、求婚の証だってのは……本当、なのか?」
――左手に着けた、金糸龍の指輪を翳し、サトコに問うた。
「!?、!!!!!!!!!!!!!、~っ!!!!!!!!」
――サトコは、顔を真っ赤して、後退りしながら狼狽する。
「どっ!、どうしてっ……?!」
「――カッ!、カオリさんから尋ねられた……みっ!、未来の皇夫、なのだろうってな。
この指輪は、その証だとも……」
サトコの返答に、ソウタも顔を紅潮させて、照れながら答える。
(~~~~~~~~~~~っ!!!!!!、カオリぃ~っ!)
サトコは、カオリの顔を思い浮かべ、苦悶の表情を浮かべる。
一連のリアクションを終えた二人は、お互い、軽く深呼吸をし――
「――とりあえず、歩きましょう……もっと、大事な話のための、"神言の間"なのですから……」
サトコは、とりあえず前進を薦めた。
そうして数十歩、二人は無言のまま進むが――やはり、お互い気が気ではない……
「――何も、告げずに、指輪を渡した事については……私も謝ります」
そう――口火を切ったのは、背を向けたままのサトコの方だった。
「それとぉ……私が、あなたを、好いているのもぉ……本当、です」
――渾身の、愛の告白も付けて。
「あっ……」
あまりに躊躇の無いサトコの告白に、ソウタは困惑を示す声音を漏らす。
「もう、返事の類は、要らなくなってしまいましたね。
私は――あなた以上に、刀聖という、この世界の要たる理を、憎んでいるのかもしれません」
サトコは、辛辣な表情でそう言い、通路の装飾を見据える。
「……ごめん」
ソウタも、彼女が言う事の意味を察し、深くうな垂れた。
「――ふうっ、逆に、良かったのかもしれませんねぇ?
手酷く断わられて、失恋するより……理のせいに出来た方が楽でしょう?
皇の立場を、ありがたく思ったのは……コレが初めてです」
サトコは、ニヤリと笑いながら、涙を一筋垂らした。
「おっ!、俺は、そんな事、一言も……」
ソウタが、弁明を企むと、サトコは手早く涙を拭い――
「"まだ言っていない"『だけ』――でしょう?
あなたが、私の事を、異性として意識していないのは、あからさまに解っていたコト……だから、その気を引こうと渡した、求婚の指輪だったのですが、意味を伝え忘れるという、とんだ愚行をしてしまいました」
――また、クルっと振り向いて、屈託無い笑顔を見せた。
「そっ、そりゃあそうだろう……天下を見守る皇様を、素直に恋愛対象として見れる男だなんて……そうは居ないと思うぜ?、俺みてぇな、下々の者がさぁ……」
ソウタは、サトコの笑顔に照れながら、そこから目線を外してつぶやく。
「――そうかしら?、先世皇夫である私の父は、牛追いの牧夫でしたよ?
歴史を振り返っても、皇夫との身分差は、何時の世も不問……」
「そっ、そりゃあまあ、そうだけどよぉ……」
ソウタの反論は、アッサリと敗北した。
「実る事は成らずとも――あなたへの恋心を告げられて、今は良かったと思います……ありがとう、ソウタ」
サトコは、そう言って、正直な心境を吐露し――
「――でも、指輪の『本来の意味』は、以前も言ったとおりなのですから、皇が、深く信頼を置く、一廉の武士として、受け取っていてくださいね?
まあ、民の皆には、間違った解釈を抱く者も居るのが、少々面倒かもしれませんが♪」
――とも言って、カオリたちの顔を思い浮べ、苦虫を噛んだ。
「……ああ、解った」
ソウタは、サトコの言葉に照れながら、それだけを言って、口を結んだ。
丁度、そのタイミングに――先を行くサトコが、ふいと立ち止まった。
「着きました――ここが、"神言の間"の入り口です」
サトコが立ち止まった先には――先程の門よりも、豪奢な観音扉が有り、その左右には、何やら2つずつ、円形状の鏡の様なモノがはめられていた。
「ん?、界気鏡が……二つずつ?、しかも、やたらと小せぇな……」
ソウタは、訝しげにそう言って、円形状の鏡を指差す。
「これより先は、この部屋自体が一つの神具――その神具を模したのが、皆がよく知る"界気鏡"なのです。
さて、部屋そのものが神具が故に、入るには、鍵となる別の神具を示さなければ成らない……」
サトコは、そう呟いて、徐に懐を弄り、首飾り状の物を取り出した。
その首飾りの先には、黄色く輝く宝玉らしきモノが着いている。
「――これは、代々の皇に継承されてきた神具、黄玉眼。
これが、この扉を開ける"一つ目の鍵"です」
サトコが、黄玉眼を左側の鏡を近づけると、キィィィィィンッと、鏡から小刻みに震える様な音が聴こえ、鏡面が黄金に輝き始めた。
「――!?、この音……それに、この光りは……」
「ええ、あなたが言う、継承の際に見かけたという"光刃の柄が放つ光"も、この様なモノでしたでしょう?
これが、神具の起動を示す光りです」
サトコは、そう告げると、今度はソウタに目を向けて――
「ソウタ、光刃を納めたまま、光の刀の本体――つまり、柄を右側の鏡へ向けて翳してください。
それが、二つ目の鍵となるので」
――と、詳しく説明をしながら促した。
「……こう、か?」
ソウタは、サトコに言われたとおり、柄から刀身を外して右の鏡へと翳す。
「あっ、そうではなくて……光刃の輩出口を、鏡に向けて頂けますか?」
「……ん?、こう?」
再び訝しげに、ソウタが輩出口を鏡に向けると、今度は鏡が白く輝き、点滅でもするように、直ぐ様、黄金に輝き出す。
『――黄玉、及び、光刃を認証……起動フェイズ3、4をスキップ。
最終フェイズ、皇統認証をお願いします』
――と、これまでとは少し、字体が違う文字で、文章らしきモノが、左側の鏡に表示された!
「これって、神代文字――だっけ?」
「――そうです、私たちでは、どう読めば良いのか解らない……オオカミ様たちが、天船で使っていたとされている古代文字です」
サトコは、鏡に表示された文字を指先でなぞりながら、ソウタの問いに答えた。
「さて、後は――」
サトコがそう呟くと、護身用に懐に忍ばせている小刀を取り出し、その鯉口を切って――
「――くぅっ!」
――軽く、自分の指先を傷付けた!
「――っ!?、おいっ!」
ソウタは慌てて、サトコに手を差し伸べたが…
「大丈夫です、ご心配は無用……扉を開けるには、皇の血液を、鏡に塗る必要が……」
サトコは、ソウタを遮り、傷付けた指先を左側の鏡に擦り付ける
『――血液の付着を確認、DNA判定……クリア。
皇統認証、完了――扉、開きます』
またも、神代文字の文章が表示され、ゆっくりと微かな音と共に、神言の間への扉が開いて行く。
「では、入りましょう――皇と大巫女、三大国守、そして……刀聖にしか、開示されてはならない。
この世界の、秘密が眠る場所へと……」
サトコは、神妙な面持ちをソウタへと送り、彼を神言の間へと促した。
――明らかに、ツクモには似つかわしくない言葉が並ぶ、神代文字。
それが……"語り手や読み手には読めて、その意味を理解出来る"――いや、この際、あえて明かそう……"アルファベットで、綴られた英文”であったコト。
そして、意思持つ道具とされる"神具"と、血液を用いた身分確認――それらが示す、ツクモのような幻想世界には相応しくないテクノロジー。
アマノツバサノオオカミや、共に降り立ったとされている、ツクモの人々の祖先が――この世界に至る前に居た場所とは、案外、想像に難くない場所なのかもしれない……
――そんな表現が示すとおり、そこにどう行けば至るのか?、どのような場所なのかを知るのは、極々僅かな者だけ。
入る事が許されるのは、代々の皇と代々の大巫女、同じく代々の三大国の国守――そして、これまた代々の刀聖だけだ。
そう――神言の間とは、皇が各国守や大巫女、刀聖と一対一で、会談するための場所なのである。
サトコの言葉を請け、ソウタと彼女は、主殿の玉座の後ろにある、豪奢な門を抜け――その先の、煌びやかに装飾された通路を進んでいた。
もちろん、門より奥は、既に聖域の一種なので、通路を歩むのは、当の2人だけ――つまり、"二人っきり"である。
「~~♪」
そんな、神聖な場所へと向うには、不釣合いな笑顔で――サトコが歩いている理由は、言わずもがなではあったが。
「――なあ、サトコ?」
ソウタも、二人きりである事を利して、くだけた口調で声を掛けた。
「俺――着替えた方が、良かったんじゃないか?、戦場支度のまんまってのはさ……」
義兵たちに支給された、粗末な皮具足のままである事を気にして、ソウタは顔をしかめる。
「あらぁ?、そんなコトを気にする刀聖なら、皇だけにでも、自分が刀聖である事を、明かしているのではありませんか?」
サトコは得意気に、皮肉っぽくそう応じた。
「やっぱ、怒ってるのか……隠してた事」
「当たり前ですっ!」
ソウタが、愚痴っぽく独り言を漏らすと、耳聡くそれを聞いていたサトコは、クルッと振り返り、彼の鼻先にビシッと人差し指を立てる。
「刀聖と皇は、古の世からの世界の要――継承者は、必ず一度は皇を訪ねるべき慣わしっ!
なのに、三年有余の間も、それを行わずっ!、よぅ~やくっ!、訪ねて来たのかと思えば……なんとっ!、その事を隠すだなんてぇ~!、恐らく、前代未聞の刀聖なのでしょうねっ!」
サトコは、引きつった笑顔をして、そう捲くし立てる。
「――言ったろ?、俺は、継承を承服したつもりはねぇと思ってたし、観念したとしても、自分は、刀聖としてまだまだ半人前――皇に、面と向って名乗るのは、憚られたってのが正直なトコだ。
そんな思いがあってのコトなんだから、どうか許して欲しい……」
ソウタは、まったく反論はせずに、サトコへ向けて深く頭を垂れた。
「うっ……そんな風に、素直に謝られてはぁ……」
サトコは、ポォッと頬を赤らめると、困惑して目を逸らす。
「あっ、あのよぉ……俺も、一つ良いか?」
目線が合わなくなった途端、ソウタは何だかモジモジと、恥ずかしがる素振りを見せて――
「――その、この指輪……きゅっ!、求婚の証だってのは……本当、なのか?」
――左手に着けた、金糸龍の指輪を翳し、サトコに問うた。
「!?、!!!!!!!!!!!!!、~っ!!!!!!!!」
――サトコは、顔を真っ赤して、後退りしながら狼狽する。
「どっ!、どうしてっ……?!」
「――カッ!、カオリさんから尋ねられた……みっ!、未来の皇夫、なのだろうってな。
この指輪は、その証だとも……」
サトコの返答に、ソウタも顔を紅潮させて、照れながら答える。
(~~~~~~~~~~~っ!!!!!!、カオリぃ~っ!)
サトコは、カオリの顔を思い浮かべ、苦悶の表情を浮かべる。
一連のリアクションを終えた二人は、お互い、軽く深呼吸をし――
「――とりあえず、歩きましょう……もっと、大事な話のための、"神言の間"なのですから……」
サトコは、とりあえず前進を薦めた。
そうして数十歩、二人は無言のまま進むが――やはり、お互い気が気ではない……
「――何も、告げずに、指輪を渡した事については……私も謝ります」
そう――口火を切ったのは、背を向けたままのサトコの方だった。
「それとぉ……私が、あなたを、好いているのもぉ……本当、です」
――渾身の、愛の告白も付けて。
「あっ……」
あまりに躊躇の無いサトコの告白に、ソウタは困惑を示す声音を漏らす。
「もう、返事の類は、要らなくなってしまいましたね。
私は――あなた以上に、刀聖という、この世界の要たる理を、憎んでいるのかもしれません」
サトコは、辛辣な表情でそう言い、通路の装飾を見据える。
「……ごめん」
ソウタも、彼女が言う事の意味を察し、深くうな垂れた。
「――ふうっ、逆に、良かったのかもしれませんねぇ?
手酷く断わられて、失恋するより……理のせいに出来た方が楽でしょう?
皇の立場を、ありがたく思ったのは……コレが初めてです」
サトコは、ニヤリと笑いながら、涙を一筋垂らした。
「おっ!、俺は、そんな事、一言も……」
ソウタが、弁明を企むと、サトコは手早く涙を拭い――
「"まだ言っていない"『だけ』――でしょう?
あなたが、私の事を、異性として意識していないのは、あからさまに解っていたコト……だから、その気を引こうと渡した、求婚の指輪だったのですが、意味を伝え忘れるという、とんだ愚行をしてしまいました」
――また、クルっと振り向いて、屈託無い笑顔を見せた。
「そっ、そりゃあそうだろう……天下を見守る皇様を、素直に恋愛対象として見れる男だなんて……そうは居ないと思うぜ?、俺みてぇな、下々の者がさぁ……」
ソウタは、サトコの笑顔に照れながら、そこから目線を外してつぶやく。
「――そうかしら?、先世皇夫である私の父は、牛追いの牧夫でしたよ?
歴史を振り返っても、皇夫との身分差は、何時の世も不問……」
「そっ、そりゃあまあ、そうだけどよぉ……」
ソウタの反論は、アッサリと敗北した。
「実る事は成らずとも――あなたへの恋心を告げられて、今は良かったと思います……ありがとう、ソウタ」
サトコは、そう言って、正直な心境を吐露し――
「――でも、指輪の『本来の意味』は、以前も言ったとおりなのですから、皇が、深く信頼を置く、一廉の武士として、受け取っていてくださいね?
まあ、民の皆には、間違った解釈を抱く者も居るのが、少々面倒かもしれませんが♪」
――とも言って、カオリたちの顔を思い浮べ、苦虫を噛んだ。
「……ああ、解った」
ソウタは、サトコの言葉に照れながら、それだけを言って、口を結んだ。
丁度、そのタイミングに――先を行くサトコが、ふいと立ち止まった。
「着きました――ここが、"神言の間"の入り口です」
サトコが立ち止まった先には――先程の門よりも、豪奢な観音扉が有り、その左右には、何やら2つずつ、円形状の鏡の様なモノがはめられていた。
「ん?、界気鏡が……二つずつ?、しかも、やたらと小せぇな……」
ソウタは、訝しげにそう言って、円形状の鏡を指差す。
「これより先は、この部屋自体が一つの神具――その神具を模したのが、皆がよく知る"界気鏡"なのです。
さて、部屋そのものが神具が故に、入るには、鍵となる別の神具を示さなければ成らない……」
サトコは、そう呟いて、徐に懐を弄り、首飾り状の物を取り出した。
その首飾りの先には、黄色く輝く宝玉らしきモノが着いている。
「――これは、代々の皇に継承されてきた神具、黄玉眼。
これが、この扉を開ける"一つ目の鍵"です」
サトコが、黄玉眼を左側の鏡を近づけると、キィィィィィンッと、鏡から小刻みに震える様な音が聴こえ、鏡面が黄金に輝き始めた。
「――!?、この音……それに、この光りは……」
「ええ、あなたが言う、継承の際に見かけたという"光刃の柄が放つ光"も、この様なモノでしたでしょう?
これが、神具の起動を示す光りです」
サトコは、そう告げると、今度はソウタに目を向けて――
「ソウタ、光刃を納めたまま、光の刀の本体――つまり、柄を右側の鏡へ向けて翳してください。
それが、二つ目の鍵となるので」
――と、詳しく説明をしながら促した。
「……こう、か?」
ソウタは、サトコに言われたとおり、柄から刀身を外して右の鏡へと翳す。
「あっ、そうではなくて……光刃の輩出口を、鏡に向けて頂けますか?」
「……ん?、こう?」
再び訝しげに、ソウタが輩出口を鏡に向けると、今度は鏡が白く輝き、点滅でもするように、直ぐ様、黄金に輝き出す。
『――黄玉、及び、光刃を認証……起動フェイズ3、4をスキップ。
最終フェイズ、皇統認証をお願いします』
――と、これまでとは少し、字体が違う文字で、文章らしきモノが、左側の鏡に表示された!
「これって、神代文字――だっけ?」
「――そうです、私たちでは、どう読めば良いのか解らない……オオカミ様たちが、天船で使っていたとされている古代文字です」
サトコは、鏡に表示された文字を指先でなぞりながら、ソウタの問いに答えた。
「さて、後は――」
サトコがそう呟くと、護身用に懐に忍ばせている小刀を取り出し、その鯉口を切って――
「――くぅっ!」
――軽く、自分の指先を傷付けた!
「――っ!?、おいっ!」
ソウタは慌てて、サトコに手を差し伸べたが…
「大丈夫です、ご心配は無用……扉を開けるには、皇の血液を、鏡に塗る必要が……」
サトコは、ソウタを遮り、傷付けた指先を左側の鏡に擦り付ける
『――血液の付着を確認、DNA判定……クリア。
皇統認証、完了――扉、開きます』
またも、神代文字の文章が表示され、ゆっくりと微かな音と共に、神言の間への扉が開いて行く。
「では、入りましょう――皇と大巫女、三大国守、そして……刀聖にしか、開示されてはならない。
この世界の、秘密が眠る場所へと……」
サトコは、神妙な面持ちをソウタへと送り、彼を神言の間へと促した。
――明らかに、ツクモには似つかわしくない言葉が並ぶ、神代文字。
それが……"語り手や読み手には読めて、その意味を理解出来る"――いや、この際、あえて明かそう……"アルファベットで、綴られた英文”であったコト。
そして、意思持つ道具とされる"神具"と、血液を用いた身分確認――それらが示す、ツクモのような幻想世界には相応しくないテクノロジー。
アマノツバサノオオカミや、共に降り立ったとされている、ツクモの人々の祖先が――この世界に至る前に居た場所とは、案外、想像に難くない場所なのかもしれない……
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