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2 弟の彼女
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十五年ぶりの、あまりにもドラマティックな再会によるハイテンションと、久しぶりの心地いい酔いの勢いとに任せて、奈瑠はあの日、勇樹の家に転がり込むことを半ば強引に認めさせた。
冷静になってみると、よくもあんな大胆なことが言えたものだと思うし、勇樹に悪い気もするけれど、撤回することは考えなかった。これで実家に戻らなくてすむという思いと、少しの間でも、また昔みたいに姉弟楽しく過ごせるのではないかという期待が、心のどこかに芽生えていた。
「やだ。また誰だかわかんなかった。どうしたの?」
一週間後、引っ越しの手伝いに現れた勇樹はまた感じが違っていた。メガネをかけていない。無精髭も生やしていない。髪も小ざっぱりしている。
「やっと髪切りに行く時間できたから」
そう言いながら段ボールの積み上げられた部屋を見渡した。
「メガネは? コンタクトにしたの?」
「普段は元々コンタクトなの」
「髭は?」
「見りゃわかるでしょ。剃ったよ。この前会った時はずっと忙しいのが続いてて、前の晩もほぼ徹夜だったんだ。だから頭もぼうっとしてて、スマホも置き忘れちゃたりしたんだと思うんだよな」
「そうだったんだ? カメラマンっぽく見せるためにわざと無精髭とか生やしてかっこつけてんのかと思ってた」
「かっこつけてるって何だよ。だいたい姉ちゃんの『カメラマンっぽく』の基準がわかんないよ」
「そっかあ。ただ小汚かっただけだったんだあ」
「引っ越しやめる?」
「勇樹くんめっちゃイケメン。天才」
「わかればいい」
あの日はアルコールの力もあって長いブランクなど物ともせずに盛り上がったのだったが、その後連絡を取りあっていたとはいえ、改めて一週間ぶりに会うとなんとなく気恥ずかしい。それは向こうも同じように感じているらしく、お互いわざと憎まれ口をきいたりしてごまかしていたが、忙しない作業に追われるうち、そんなぎこちなさは消えていった。
「姉ちゃん荷物多すぎだろ」
長年の女の一人暮らしは、思った以上に身軽ではなくなっていたようだ。
全ての荷物を運び出し、がらんとなった部屋は、まるで自分のようだと思った。
もう何もない。家族になるはずだった人も、仕事も、帰る場所も。でもここを出て行くことで、そんな現実とやっと少し向き合えるような気がした。
業者のトラックと勇樹のおんぼろステーションワゴンで向かった平屋の一軒家は、奈瑠の記憶の中のものよりも更に古びていた。考えてみれば当然だ。十五年以上前にはもうすでに古かったのだから。けれどこれはこれで味がある。とも、言える。
一時間ちょっと前に積み込んだ荷物をトラックから降ろし、居候する仮住まいへと次々に運び入れていく。
勇樹が手際よく仕切ってくれて助かった。十五年ぶりに再会した弟は、思った以上に頼れる男に成長していた。
とりあえず使わない荷物は仏間に置いた。
すみません、しばらくの間置かせてください、と仏壇に手を合わせる。そしてベッドと、服など必要なものが入った段ボールだけ、奈瑠の使う部屋に運び入れた。
畳のすり減った四畳半の部屋はそれだけでいっぱいになったし、あまり日当たりもよくないけれど、贅沢は言えない。もっとも、今の奈瑠にとってはそれで十分だった。
暖かな日差しの注ぐ縁側に腰掛けて、缶コーヒーを飲みながら一息つく。
「家の中、けっこうきれいにしてるじゃない」
「姉ちゃん来るから片付けた」
「それはそれでエライ。あ、ねえ、あのすっごい数のペットボトルのキャップ、なんであんなもの集めてるの?」
台所を覗いたときに、ペットボトルのキャップだけが大量に入った大きなポリ袋がどーんと置いてあったのだ。
「あれ集めると、恵まれない国の子どもたちのワクチンとか、給食? とかになるんだって」
「キャップが? あれをどうするの?」
「スーパーの入り口にある回収ボックスに入れるんだよ。その後のことはどうなってそうなるのか知らないけど。どうせ捨てるなら人の為になる方がいいしね」
「へえ」
やさしい子だな、と思う。
「とか言いつつ、実はまだ回収ボックスに持って行ったことはない。集めるのは別にいいんだけど、持って行くのってなかなか面倒くさいっていうか。つい忘れちゃうし」
「それであそこまでたまっちゃったんだ?」
「山も積もればなんとかって言うだろ」
「山は積もらないけどね」
庭には隅の方に名前のわからない木が一本あるだけで、春だと言うのに、いくつか置いてある植木鉢にも花壇にも、花の類は一切無い。視界に入る緑色のほとんどは雑草だ。きっとおばあちゃんが亡くなってからはずっとこの状態なのだろう。
「俺ちょっと向こうで休憩してくる」
勇樹は飲みかけの缶コーヒーを持って立ち上がった。
「なんで?」
「ちょっとブレイク」
そう言うと自分の部屋に入り、ふすまを閉めた。
どうしたのだろう。急に機嫌を損ねたわけでもなさそうだけれど。奈瑠も立ち上がって後を追った。
「勇樹? 開けるよ?」
そっとふすまを開けると、勇樹はデスク前の椅子に座り、ちょうど煙草に火を付けたところだった。
「煙草なんか吸うの?」
軽く煙を吐きながらこちらを見返す表情がやけにアンニュイで、なんとなく男の色気さえ漂わせている。勇樹のくせに。
「この前は吸ってなかったじゃない」
「店は大抵禁煙でしょうよ。それに姉ちゃんが嫌がるかなと思って」
「じゃあなんで今日は吸うのよ」
「だからこっちに来て吸ってんじゃん。っていうか、これから一緒に暮らすんだから知っといてもらわないと」
これから一緒に暮らす。勇樹の口から出たその言葉がなんとなくくすぐったかった。
「時代は禁煙でしょ」
「いいの。俺は」
「早死にするよ」
「かもね」
煙草をくゆらす姿を見ていると、なぜか無邪気にかき氷を食べていた少年の頃の勇樹を思い出した。
「あんなにかわいかったのに」
思わずちょっと皮肉っぽくつぶやくと、ちらっと視線をよこした。そして「何だよわかったよ」と言って煙草を灰皿に押し付けた。
勇樹の部屋は日当たりもよく、奈瑠の部屋よりも広い。と言っても六畳ほどだろうか。ベッドの他にはパソコンの載ったデスクや、仕事関係の道具やファイルなどが並んだ棚が所狭しと置いてある。
「ねえ暗室ってないの? ドラマとかでやってるじゃない。液体につけたら写真が浮かび上がってくる、みたいな」
「あれ大変なんだぞ。設備とか薬品の処理とか。ドラマみたいに簡単にはいかないよ。それに仕事はほとんどデジタルだから。もちろんフィルムにはフィルムの良さがあるし俺も好きだけど、現像はプロに頼むね」
「そうなんだ? それにしてもなんで今まであっちの部屋使わなかったの? こんなにこの部屋にだけいろいろ詰め込んじゃって」
「落ち着くんだよ。この方が。ばあちゃんが生きてたときからこうだったから」
壁に何枚も飾ってあるのは勇樹が撮った写真だろうか。縁側で笑っているおばあちゃんの写真や、道端でこちらを睨みつける野良猫の写真。ポストカードになりそうな夕焼けの写真や、思いっきり変顔をしてみせる外国人の子どもの写真もある。そんな中に、勇樹が友達と思しき男女と一緒に写ったスナップ写真もあった。
「やだ勇樹若い! これいくつのとき?」
「大学三年」
「ってことは……七年くらい前? 七年でこんなに違うんだねー」
「うるさい」
「っていうかさ、他の二人は楽しそうなのに一人だけ冷めてない? この写真」
「俺は写真とか苦手なの」
「カメラマンなのに?」
「カメラマンは撮る方でしょ」
「まあそうだけど。でもかわいいよねー。このときに会いたかったよ」
勇樹はふん、と鼻で笑って、その写真を見つめていた。
「そうだ。姉ちゃんの部屋、電気の輪っか替えないといけないと思って買っといたんだった。ずっと使ってなかったから電球切れたままになってたんだよ」
勇樹は押入れを開けると、中から大きな電器屋の袋を取り出した。
「手伝おうか?」
「大丈夫」
奈留の部屋へと移動し、手を伸ばして電気の傘から古い蛍光灯の輪っかを取り外す。そして箱から新しいのを取り出して、今度は取り付ける。
「背高いと便利だね。昔はわたしより小っちゃかったのに」
「古い家だから天井低いんだよ」
「でも背高いじゃない。お母さんに似たのかな」
勇樹の母親も背の高い人だった。
「父親も高いんだ。何回かしか会ったことないけど。どっちの遺伝子だろうね」
新しい輪っかを二つ付け終わると、勇樹はひもを引っ張った。蛍光灯が白く光って、一瞬目の奥がチクッと痛い。
この前居酒屋ではぶつぶつ文句を言っていたくせに、片付けをしたり、電球を変えたり、奈瑠を迎えるためにいろいろとしてくれていることがうれしかった。
何にもない空っぽの自分に、居場所を与えてもらえたような気がした。
冷静になってみると、よくもあんな大胆なことが言えたものだと思うし、勇樹に悪い気もするけれど、撤回することは考えなかった。これで実家に戻らなくてすむという思いと、少しの間でも、また昔みたいに姉弟楽しく過ごせるのではないかという期待が、心のどこかに芽生えていた。
「やだ。また誰だかわかんなかった。どうしたの?」
一週間後、引っ越しの手伝いに現れた勇樹はまた感じが違っていた。メガネをかけていない。無精髭も生やしていない。髪も小ざっぱりしている。
「やっと髪切りに行く時間できたから」
そう言いながら段ボールの積み上げられた部屋を見渡した。
「メガネは? コンタクトにしたの?」
「普段は元々コンタクトなの」
「髭は?」
「見りゃわかるでしょ。剃ったよ。この前会った時はずっと忙しいのが続いてて、前の晩もほぼ徹夜だったんだ。だから頭もぼうっとしてて、スマホも置き忘れちゃたりしたんだと思うんだよな」
「そうだったんだ? カメラマンっぽく見せるためにわざと無精髭とか生やしてかっこつけてんのかと思ってた」
「かっこつけてるって何だよ。だいたい姉ちゃんの『カメラマンっぽく』の基準がわかんないよ」
「そっかあ。ただ小汚かっただけだったんだあ」
「引っ越しやめる?」
「勇樹くんめっちゃイケメン。天才」
「わかればいい」
あの日はアルコールの力もあって長いブランクなど物ともせずに盛り上がったのだったが、その後連絡を取りあっていたとはいえ、改めて一週間ぶりに会うとなんとなく気恥ずかしい。それは向こうも同じように感じているらしく、お互いわざと憎まれ口をきいたりしてごまかしていたが、忙しない作業に追われるうち、そんなぎこちなさは消えていった。
「姉ちゃん荷物多すぎだろ」
長年の女の一人暮らしは、思った以上に身軽ではなくなっていたようだ。
全ての荷物を運び出し、がらんとなった部屋は、まるで自分のようだと思った。
もう何もない。家族になるはずだった人も、仕事も、帰る場所も。でもここを出て行くことで、そんな現実とやっと少し向き合えるような気がした。
業者のトラックと勇樹のおんぼろステーションワゴンで向かった平屋の一軒家は、奈瑠の記憶の中のものよりも更に古びていた。考えてみれば当然だ。十五年以上前にはもうすでに古かったのだから。けれどこれはこれで味がある。とも、言える。
一時間ちょっと前に積み込んだ荷物をトラックから降ろし、居候する仮住まいへと次々に運び入れていく。
勇樹が手際よく仕切ってくれて助かった。十五年ぶりに再会した弟は、思った以上に頼れる男に成長していた。
とりあえず使わない荷物は仏間に置いた。
すみません、しばらくの間置かせてください、と仏壇に手を合わせる。そしてベッドと、服など必要なものが入った段ボールだけ、奈瑠の使う部屋に運び入れた。
畳のすり減った四畳半の部屋はそれだけでいっぱいになったし、あまり日当たりもよくないけれど、贅沢は言えない。もっとも、今の奈瑠にとってはそれで十分だった。
暖かな日差しの注ぐ縁側に腰掛けて、缶コーヒーを飲みながら一息つく。
「家の中、けっこうきれいにしてるじゃない」
「姉ちゃん来るから片付けた」
「それはそれでエライ。あ、ねえ、あのすっごい数のペットボトルのキャップ、なんであんなもの集めてるの?」
台所を覗いたときに、ペットボトルのキャップだけが大量に入った大きなポリ袋がどーんと置いてあったのだ。
「あれ集めると、恵まれない国の子どもたちのワクチンとか、給食? とかになるんだって」
「キャップが? あれをどうするの?」
「スーパーの入り口にある回収ボックスに入れるんだよ。その後のことはどうなってそうなるのか知らないけど。どうせ捨てるなら人の為になる方がいいしね」
「へえ」
やさしい子だな、と思う。
「とか言いつつ、実はまだ回収ボックスに持って行ったことはない。集めるのは別にいいんだけど、持って行くのってなかなか面倒くさいっていうか。つい忘れちゃうし」
「それであそこまでたまっちゃったんだ?」
「山も積もればなんとかって言うだろ」
「山は積もらないけどね」
庭には隅の方に名前のわからない木が一本あるだけで、春だと言うのに、いくつか置いてある植木鉢にも花壇にも、花の類は一切無い。視界に入る緑色のほとんどは雑草だ。きっとおばあちゃんが亡くなってからはずっとこの状態なのだろう。
「俺ちょっと向こうで休憩してくる」
勇樹は飲みかけの缶コーヒーを持って立ち上がった。
「なんで?」
「ちょっとブレイク」
そう言うと自分の部屋に入り、ふすまを閉めた。
どうしたのだろう。急に機嫌を損ねたわけでもなさそうだけれど。奈瑠も立ち上がって後を追った。
「勇樹? 開けるよ?」
そっとふすまを開けると、勇樹はデスク前の椅子に座り、ちょうど煙草に火を付けたところだった。
「煙草なんか吸うの?」
軽く煙を吐きながらこちらを見返す表情がやけにアンニュイで、なんとなく男の色気さえ漂わせている。勇樹のくせに。
「この前は吸ってなかったじゃない」
「店は大抵禁煙でしょうよ。それに姉ちゃんが嫌がるかなと思って」
「じゃあなんで今日は吸うのよ」
「だからこっちに来て吸ってんじゃん。っていうか、これから一緒に暮らすんだから知っといてもらわないと」
これから一緒に暮らす。勇樹の口から出たその言葉がなんとなくくすぐったかった。
「時代は禁煙でしょ」
「いいの。俺は」
「早死にするよ」
「かもね」
煙草をくゆらす姿を見ていると、なぜか無邪気にかき氷を食べていた少年の頃の勇樹を思い出した。
「あんなにかわいかったのに」
思わずちょっと皮肉っぽくつぶやくと、ちらっと視線をよこした。そして「何だよわかったよ」と言って煙草を灰皿に押し付けた。
勇樹の部屋は日当たりもよく、奈瑠の部屋よりも広い。と言っても六畳ほどだろうか。ベッドの他にはパソコンの載ったデスクや、仕事関係の道具やファイルなどが並んだ棚が所狭しと置いてある。
「ねえ暗室ってないの? ドラマとかでやってるじゃない。液体につけたら写真が浮かび上がってくる、みたいな」
「あれ大変なんだぞ。設備とか薬品の処理とか。ドラマみたいに簡単にはいかないよ。それに仕事はほとんどデジタルだから。もちろんフィルムにはフィルムの良さがあるし俺も好きだけど、現像はプロに頼むね」
「そうなんだ? それにしてもなんで今まであっちの部屋使わなかったの? こんなにこの部屋にだけいろいろ詰め込んじゃって」
「落ち着くんだよ。この方が。ばあちゃんが生きてたときからこうだったから」
壁に何枚も飾ってあるのは勇樹が撮った写真だろうか。縁側で笑っているおばあちゃんの写真や、道端でこちらを睨みつける野良猫の写真。ポストカードになりそうな夕焼けの写真や、思いっきり変顔をしてみせる外国人の子どもの写真もある。そんな中に、勇樹が友達と思しき男女と一緒に写ったスナップ写真もあった。
「やだ勇樹若い! これいくつのとき?」
「大学三年」
「ってことは……七年くらい前? 七年でこんなに違うんだねー」
「うるさい」
「っていうかさ、他の二人は楽しそうなのに一人だけ冷めてない? この写真」
「俺は写真とか苦手なの」
「カメラマンなのに?」
「カメラマンは撮る方でしょ」
「まあそうだけど。でもかわいいよねー。このときに会いたかったよ」
勇樹はふん、と鼻で笑って、その写真を見つめていた。
「そうだ。姉ちゃんの部屋、電気の輪っか替えないといけないと思って買っといたんだった。ずっと使ってなかったから電球切れたままになってたんだよ」
勇樹は押入れを開けると、中から大きな電器屋の袋を取り出した。
「手伝おうか?」
「大丈夫」
奈留の部屋へと移動し、手を伸ばして電気の傘から古い蛍光灯の輪っかを取り外す。そして箱から新しいのを取り出して、今度は取り付ける。
「背高いと便利だね。昔はわたしより小っちゃかったのに」
「古い家だから天井低いんだよ」
「でも背高いじゃない。お母さんに似たのかな」
勇樹の母親も背の高い人だった。
「父親も高いんだ。何回かしか会ったことないけど。どっちの遺伝子だろうね」
新しい輪っかを二つ付け終わると、勇樹はひもを引っ張った。蛍光灯が白く光って、一瞬目の奥がチクッと痛い。
この前居酒屋ではぶつぶつ文句を言っていたくせに、片付けをしたり、電球を変えたり、奈瑠を迎えるためにいろいろとしてくれていることがうれしかった。
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