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第43話 ゴーストハンター高島聖の任務記録:失われた神々と八岐大蛇の影 ⑧

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【高島聖side】


 「ぐおおお……い、いてえ……身体が超イテエエッ!!!」

チビを離して呻いているヒカリちゃん。
間違いないあれだけ膨大な霊力を使ってしまったゆえの霊体痛だろう、だけど……

「あがががががが!!!」

 転がりまわっているヒカリちゃんを見ると尋常じゃない痛みなのは間違いないだろう。
 可哀想だけど、意識があると余計に苦しむ事になるのでしゃがみ込んで首筋に手刀を叩き込み意識を刈り取った。

急がないと !
ホテルで霊体痛の薬を飲ませて安静にさせないといけない。
 霊体痛は霊力を使いすぎれば起きる症状だが、ヒカリちゃんの苦しみようは異常だ。 これはかなり深刻かも知れない。

「みー、みー !」

 チビが心配そうに鳴くが、ヒカリちゃんは呻くだけで何の反応も見せない。かなり深刻なダメージを受けているようだ。

 しょんぼりしているチビを無理やり抱き上げて車の元に戻って、迷う事無く山の中へと突っ込んで行った。


◇◇◇◇◇

【ミオside】

どこか判らない空の上空で一緒に飛んでいるメドーサに

「……どこまでついてくるの?」

異界を閉じた時点で別れるつもりだったのにまだ着いて来ているメドーサにそう尋ねる。メドーサはん?っと首を傾げてから

「方向がこっちなんだよ。 私の雇い主のね。もう少しで分かれるからそう邪険にしなくても良いだろう?」

方向が一緒とはとんでもない偶然……なのか?ただ着いて来ているだけの様な気もする

「しかし藤崎光って言うのはとんでもない才能の持ち主だね。知っていたのかい?」

並んで飛んでいるのだし、無視するのも悪いと思い。少しだけ自分の話しをすることにする

「……知っていた。あの少女の前世は神代と言う平安時代で指折りの陰陽師。その転生者が弱いわけがない」

ただ完全に転生しているわけではないし、まだまだ彼女が成長途中と言うことを加味すると……まだまだ成長途中と言う感じだろう。
今頃は酷い霊体痛で苦しんでいるはずだ。私が見極める為とは言え、彼女には少し悪いことをしたかもしれない。 若干の罪悪感を感じている。

「そうかい。いい話を聞けたよ……じゃあねミオ。またどこかで」

大きな街の上空で別れて降下していくメドーサ。確かこの街はあの少女の住んでいた街……どうやらこの平和そうな街にも中々強力な魔族が潜んでいるのかもしれない。

「……急ごう」

いくら私が八岐大蛇とは言え、あれだけの水神の力をいつまでも押さえ込む事は出来ない。
早く霊力を返さないと……流石に若干苦しい。平安時代にもあった神族の駐屯地、幽玄峰ゆうげんほうに向かう……私がここに来るのは初めてだが神代に話を聞いていたので場所は覚えていた。

「止まれい!主は「……うるさい」……がぼばああ!?」

門にそれぞれついている鬼の顔が怒鳴るので軽く水を打ちつけて黙らせる。騒がしいのは嫌いだから

「……お前達に用はない、それに直ぐ済む」

 目を閉じて竜気と霊力を同時に解放する。同じ龍族ならば判る筈……私の正体を……引き攣った顔をしている鬼の顔を見ていると

「何ようですか!八岐大蛇ッ!!!」

臨戦態勢で門を蹴り破る勢いで飛び出してくる赤髪の龍神。竜気も霊力も凄まじい……若干警戒しながら

「……敵対の意図はない」

万歳して敵対する意図はないと言うのを行動で示す。ここに来たのは奪った霊力を返す為だ。

「水神の祠を襲って回っていたのはどう言い訳するつもりですか?」

いつでも剣を抜けるように準備をしている構えている……竜気は向こうが少しばかり上。元々近接が苦手な私では勝てない相手だ……水もないし……分身体を操るのに大分消耗しているので戦うという考えはない。

「……その事は大変申し訳ないと思っています。目覚めたばかりで霊力の枯渇と知性が低下していました……そんな事をするつもりはありませんでした。ここに来たのは奪った神通力と霊力を返す為です」

両手を掲げ奪った神通力と霊力を球体にして武神に差し出す。若干警戒しながらも受け取る龍神。それと同時に私の身体が元の大きさに戻る。視界が急に低くなったのを感じていると、

「……なにか?」

観察している顔をしている龍神。顔を見上げる形になっているので中々見難い。

「随分と可愛らしくなりましたね ?
自分の霊力も差し出したのではないのですか ?」

まぁ、それもないわけではない。お詫びも兼ねて自分の霊力もいくらか差し出した。
 元々私は水を操るだけの霊力があればそれで充分……ある程度自分の姿を維持できるだけの霊力だけがあれば良い。霊力は徐々に回復するので最低限の霊力で充分。

「……お前には関係ない。それに元々はこっちが私の姿……」

 さっきまでは外観年齢は20くらいだったけど、今は本当の姿の10歳前後……こっちほうが動きやすくて便利だ。

「……これで私の罪はない。失礼する」

私の霊力も上乗せして返した。これで文句を言う水神はいない筈だ。

「待ちなさい」

「……なに?」

龍神は私の顔を見て、真剣な顔をしている。私の頭に浮かぶのは平安時代の武家の娘……

「……私は心に決めた人間がいるから」

「何の話ですか!?」

驚いた顔をしている龍神。?もしかして私の勘違い?だから一応聞いてみることにした

「……罪を許すから夜伽をしろと言うことじゃ?」

「違います !!」

顔を真っ赤にして怒鳴る龍神。なんだ……違ったのか。ほっと小さな安堵の溜息を吐く。

「貴方はどこに行くつもりですか ?
力が弱まったとは言え龍族。下手なところに行かれると困るのですが ?」

ああ、確かにそれはそうだ……私は水のゲートを作り出しながら、

「……私は1000年前に加護を授けた男がいる、その転生者の所に行く。敵対する気はない、ただあの少女がどうなるのか見たい。じゃあまた何処かで」

若干の好意があるのも認める。毛玉を助けるために迷いも無く飛び込んだ……それだけで好感を持てる。普通は妖怪を見捨てようとする退魔師が普通だからだ。

「ちょっ ! まさか、それって、エー……」

何か龍神が叫んでいた気もするけど……まぁ関係ないだろう。私は水を媒介にしたゲートで妙神山を後にし、神代が作ってくれた神社の御神体である龍神鏡の中に潜り込み眠りに落ちるのだった……


◇◇◇


ミオが眠りに落ちた頃、聖や光もホテルを借りていたのだが、

【高島聖side】

 

「あがががが」

 霊体痛で悶絶するヒカリちゃんの治療のために薬品を作っていたのだが、

「黒焦げのイモリとタマネギ人参。あとマンドラゴラの根、それにコレですよね。コカトリスの卵」

 マスクに手袋と言う完全防備の姿で紫色の煙を発生させる怪しい薬品を作っていて。殆ど動けないヒカリちゃんがその光景を見て小さく、アタシは死ぬのか?と呟いていたのだった……







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