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第17話 運も実力のうち……とは云うけれど

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【藤崎光side】

 コンビニに寄り、ジュースやお菓子を買おうとして一番クジの広告に目が止まった。

 ──   魔王戦隊 ゴオニンジャー   ──

 日朝のヒーロー戦隊モノの景品が当たるクジだ。
 ふと、値段を見たら……「一回700円だとぉー !」と、口を付いてしまった。
 一応、『ハズレ無し』と書いてあるけど、高い!高いよ !  大人ならともかく、中学生のお財布には厳しい値段だ。

 アカインジャーの俳優、千葉流星のサイン入りブロマイドが欲しい……けど高い !

「アオインジャーの日高雄大のブロマイドが欲しい !」
「クロインジャーの川田祐貴のブロマイドが欲しい !」

 と、塁も聡子も好みが別れたけど相談した結果、一人一回ずつクジを引くことに成った。



 コンビニの店内は明るく、ポップな音楽が流れている。アタシたちはレジの横に設置された一番クジのコーナーに向かった。おそるおそる財布を取り出しながら、中学生にはちょっと高い700円を手に取る。

「よし、みんな準備はいい?」とアタシは仲間の二人を見た。塁も聡子も緊張しながらうなずく。

「じゃあ、アタシから引くよ !」そう言って、私はクジの筒に手を突っ込んだ。指先に感触を確かめつ、慎重に一本引き抜く。息を呑んで紙を開くと、『E賞』の文字が目に飛び込んできた。

「E賞かぁ…まあ、何かは当たるよね」と、少しがっかりしつもポジティブに考えることにした。

次に、塁が一歩前に出た。「私の番ね!」と宣言すると、自信満々にクジを引いた。結果は『B賞』 アタシは目を丸くして、「お、すごいじゃん!結構いいやつじゃない?」と声をかける。

塁はにやりと笑って、「これで日高雄大のグッズゲットのチャンスだ!」と上機嫌だ。

最後は聡子。
「なんか二人を見ると緊張するなぁ…」と少し照れた様子でクジに手を伸ばした。ドキドキしながら開くと、『H賞』と書かれていた。

「…………、聡子!それも結構良い賞だよね!」アタシたちはお互いの結果を祝って、早速景品と交換することにした。 決して、ショボいと言ってはイケナイ。

お店の人が親切に景品を出してくれて、それぞれのチョイスに応じて受け取った。私のE賞はゴオニンジャーの缶バッジセット、塁のB賞はヒーローたちのフィギュア、聡子のH賞は特製消しゴムだった。

全員が満足そうに一人不満そうに笑顔一人引きつった笑顔で店を出たで店を出た
「またチャレンジしようね!」と、次はどんなクジに挑戦しようかとワクワク一人しょんぼりしながら、コンビニを後にした。

◇◇◇

察知聡子さっち さとこside】

 皆と別れた後に家に帰ってから貯金箱のお金を全部出して金額を確認した私は家を飛び出した。
 お年玉などが入ったお金は預金通帳に入り、お母さんが預かっている。
 貯金箱に入っていたお金は3500円。 一番クジが5回は引ける金額だ。
 別に川田祐貴のグッズが欲しいワケじゃ無い……当たるなら欲しいけど。
 妖怪サトリの血を引くものとしては、やはり悔しい。
 何も考え無いでクジを引いたのが悔やまれる。
 私がH賞を引いた時、あきらかにレジのお兄さんは心の中で笑っていた。   アレは当たりを知っているからこその嘲笑ちょうしょうだろう。
 なんとしても見返してやりたい !  そう、決意をしてコンビニに向かった。



 コンビニに着くと、最初に目に入ったのは光と塁が去った直後の明るい店内だった。心の中の何かがが燃え、「今度こそ!」と気を引き締めてレジに向かった。

 お兄さんは私を見てちょっと驚いた様子だったけど、すぐに笑顔で対応してくれた。
「また挑戦するんですね」と言いながら、優しくレジを打ってくれる。わけもなく軽くムカつく。

 その日は贅沢に5回分、3500円を渡してクジを引くことにした。再び筒に手を入れ、一枚ずつ慎重に引き抜いた。心臓の音が大きくなっていく中で、結果に期待をしないよう心がけて、冷静を装おうとする。

最初のクジは『F賞』、次は『D賞』、続けて『C賞』……。少しずつ良い賞を引き当ている自分に、内心わずかな期待が芽生えてくる。お兄さんの視線を感じながら、残り二枚に集中した。

「これで終わりじゃない。絶対何かが来る。」

4枚目を開けると、『B賞』がまたしても姿を見せた。ついに、最後のクジに手を伸ばして引いたとき、その紙に書かれていたのは──『A賞』。

驚きと嬉しさが同時にこみ上げてきて、大きく息を吸い込む。信じられない思いで、お兄さんに紙を見せると、彼は心底嬉しそうに
「おめでとうございます!」と言ってくれた。

 心の中でやったぞと叫びながら、私は商品を交換するためにカウンターに向かった。A賞には、魔王戦隊ゴオニンジャーの特大ポスターとサイン入りのブロマイドセットが含まれている。ちょっとした夢のようなこの瞬間、全てを手に負った感覚が嬉しさとともに押し寄せてきた。

 この小さな勝利を胸に、また仲間と分け合う興奮を想像しつ、私は笑顔でコンビニを後にした。
 きっとこれを、みんなに見せるのが楽しみになるだろう。 それにしても、お兄さんはただの親切な人で、笑顔も本物だったのかも知れないと少し後悔しながら……

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