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第15話 復活のS 後編
しおりを挟む「おいおい、ウルセーな! せっかく、こちとらが気持ちよく寝てたのに起こしやがって……てめぇ、誰だ?」
大騒ぎで起こされた一反木綿が不機嫌そうに悪霊を睨んでいた。
「一反木綿、逃げるのじゃ !」 ぬらりひょんが、一反木綿も逃がす為に悪霊に向かって行った。
しかし、格闘を苦手としている ぬらりひょんは悪霊に捕らえられてしまった。
「喜べ!お前ほどの生体エネルギーを吸収すれば、俺様はかなり上級悪魔に近づくことができる!この俺様の役に立つのだ、嬉しいだろう?」
「てめぇ、確か……セバスチャンだったかよ。卑怯だねぇ、男だったら正々堂々と戦いやがれ!」 江戸っ子らしく怒る一反木綿。
「誰が、セバスチャンだ ! 俺様の名は競留字尾様だ ! もっとも、その薄い頭に脳ミソは詰まって無いようだから覚えていられないのだろうが 」
頭に血が登る一反木綿だったが、ぬらりひょんの表情を見て歯を食い縛りながら我慢した。
◇
一反木綿の表情を見たぬらりひょんは、微かに頷き、自分の意志で力を込めてセルジオの拘束を振りほどくよう、力を振り絞った。
「一反木綿、早くしろ!」ぬらりひょんは叫んだ。
一反木綿はすぐに動き出した。自分の体を細く伸ばし、セルジオを絡め取るように巻きつけようとした。
「セバスチャン、いやセルジオとかいうお前さん、これでどうだい!?」
セルジオは一瞬戸惑いを見せたが、すぐに笑い声で返した。
「愚か者よ、俺様にそんな手が通用するものか!」
セルジオは力を込めて一反木綿を引き裂こうとした。しかし、一反木綿は予想外の行動に出た。
一反木綿はセルジオの目を直接狙い、強烈な閃光を放った。これはぬらりひょんと合図を交わした策略の一環だった。
この突発的な光により、セルジオは一瞬視界を失い、動きを鈍らせた。
「今だ、ぬらりひょん!」叫んだその瞬間、ぬらりひょんは蓄えていた力を一気に解放し、セルジオの拘束から飛び出した。
「これで終りだ!」ぬらりひょんは己の全力を込めた一撃を叩き込んだ。その衝撃はセルジオの消耗した身体に容赦なく響き渡り、彼を地面に叩きつけた。
セルジオは床に倒れ込み、何とか起き上がろうとするも、そのエネルギーはもう尽きかけていたように見えた。
「どうして、俺様が……」セルジオの声は次第に弱々しくなっていく。
ぬらりひょんは安堵の息を吐き、油断をせぬよう自らの力を周囲に張り巡らせ、セルジオを完全に封印する為に瓢箪を探した。
一反木綿は微笑みながらぬらりひょんの方へと戻ってきた。
「さすが、ぬらりひょんの爺だ。でも、少しは俺っちも役に立っただろ?」
ぬらりひょんは笑って一反木綿を見ながら頷いた。「もちろんじゃとも。一反木綿、お主がいてくれて助かったわい。これで一件落着じゃな」
さて、静けさを取り戻した妖怪屋敷……瀕死のセルジオを横にして紫金紅葫蘆を探していると、
「し、しまったぁ~! ま、まさかこの俺様がちくしょー!」
悔しがるセルジオを見て、からかってやろうとした一反木綿は油断して近づいてしまった。
「なんちゃって! がっかりしたかな ?」
驚いている一反木綿を瞬時に吸収したセルジオ
「ぶるぁぁぁ、マヌケめ ! 吸収してやったわ」
◇
ぬらりひょんは一反木綿の消失に驚愕した。
「一反木綿!」ぬらりひょんはすぐさまセルジオに向かって駆け寄った。しかし、セルジオは再び勢いを取り戻し、その笑い声が屋敷中に響き渡った。
「ハッ! 俺様の中で力を貸してもらうぜ、一反木綿よ!」
ぬらりひょんはその場に立ち尽くし、信じられないという表情でセルジオを睨みつけた。妖怪仲間が次々に吸収されていく様を目の当たりにし、怒りが込み上げてくる。
「ぬらりひょん、どんな手を使ってもお前を吸収して俺様の力に変えてやるぞ!」
しかし、ぬらりひょんは冷静さを取り戻し、心の中で何かを決意した。彼は一瞬、屋敷の奥へと視線を向け、その意図をセルジオに悟られぬよう小さく微笑んだ。
「お前さん、確かに強い悪霊じゃが、儂を甘く見るではないぞ。儂にはまだ頼りになる仲間が残っておるからのう。」
その言葉にセルジオが呆気に取られている隙を見て、ぬらりひょんは手に極力の妖力を込めて、再度攻撃の準備を始めた。
「では、もう一度試してみるがよい。これ以上、儂の仲間に手を出すことは許さぬ。覚悟するんじゃ !」
セルジオは挑発されたことに逆上し、全力でぬらりひょんに襲い掛かった。その強大な力は屋敷全体を揺るがすものだったが、ぬらりひょんは揺らぐことなく、妖力を駆使して応戦した。
その時、屋敷の奥から他の妖怪たちが集まり始めた。サファイア、タマ、タヌキ娘、ダイフクモチが、それぞれの力を持ってセルジオの側面を攻撃し始める。ぬらりひょんの策は単なる時間稼ぎではなく、仲間を集めて共に戦う戦略だったのだ。
「これで今までの借りを返してもらうよ、悪霊!」サファイアが叫ぶ。
「みんなの力を合わせる時でござる!」「ぬらりひょんを助けるわよ!」他の妖怪たちも声を合わせる。
セルジオは数の利に押され始めた。彼の中で吸収されていた邪気は急速に収束し始め、彼自身の動きが鈍くなっていく。それでもセルジオは再び狂気の笑い声を上げたが、その声は次第にかすれていった。
「くっ、この俺様がこんな奴らに……だが、絶対に逃げはしないぞ!」
ぬらりひょんは力を結集し、セルジオを再び紫金紅葫蘆に封じ込める計らいを成功させる決意で満ちていた。
「仲間たちの力と共にお前を封印し、福岡田の家の平和を取り戻すのじゃ!」
ぬらりひょん、そして屋敷の妖怪たち全員の力が一つになる時……セルジオは完全に押され、力尽きた。
最終的に、紫金紅葫蘆の中に再び封印されたセルジオの姿は薄れ、屋敷には静寂が戻った。ぬらりひょんは息を切らしながら、堂々と佇む。
「これにて一件落着。みな、お疲れであった。しかし、これでまた一つ、絆が深まったような気がするのう。」
妖怪たちはその言葉に微笑み返した。福岡田家には平穏が戻り、彼らは再び日常に戻る準備をしていたのだった。
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