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第13話 腐女子は増殖する

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【藤崎光side】

「師匠 !おはようございます 」

 頭でも打ったのだろうか、意地川塁いじかわ るいが朝の挨拶をしてきた。

「師匠 ! 師匠の愛飲のブルーベリーヨーグルトジュースを買ってきました」 ……いや、確かにアタシが好んで飲んでいるけど、何でアンタが知っているのよ !
 奴の狙いは何だ ? 意地川塁の視線はアタシの鞄に向いている。 さては、新たな同志の誕生なのか !?
 この間、プレゼントしたエロイラストが気に入ったのだろう。  腐女子仲間が増えるのなら大歓迎だ。
 小説を書くとエースくん達には言ってしまったけど、どちらかと云うとイラストの方が得意だった。
 普通なら漫画を描こうと云うことに成るのだけど、私は背景画や車などの無機物が苦手だったのだ。
 エロ漫画家を目指すにしても、それは不味いだろう。
つい、口から出任せを言ってしまったが、小説を書くと云うのは我ながら良い案だと思う。
 ヨムカクの創作論でも読んで参考にしよう。

「師匠、師匠……」 と意地川塁がアタシをユサユサと揺するので、彼女が買ってきたジュースのお礼代わりに昨日の夜に描いた✕✕✕が✕✕✕するシーンのブツを渡すと嬉しそうに抱えて教室を出て行った。
 頼むから自分の部屋とかで見てくれよ、決して授業中に見て先生に見つかったりしないでくれよ、と祈った。


◇◇ 昼休み ◇◇

 給食も食べ終わり、スマホでWeb小説の今日のBL小説の更新を確認しようとしたら、意地川塁が一人の女の子を連れてきた。

「スイマセン、師匠。  せっかくの聡子さとこにバレてもうた !  『バラさない代わりに師匠を紹介しろ !』とウルサイので連れて来てもうたねん 」

 意地川塁……塁が申し訳なさそうな顔をしている横でニヤニヤしている聡子と呼ばれた女の子。

「どうも、察知聡子さっち さとこです。
 有名なスケベ師匠に会えて嬉しい……」

「あっ、師匠。 聡子は妖怪サトリの血を引いているから、何も考え無いでくださいね 」

 何も考え無いと、いきなり言っても無理 !
 無心に成ろうとすると、逆にいろいろイケナイ妄想が始まってしまう始末だ。
 小説で書こうてした、あのシーンやこんなシーンなど妄想が止まらなかった。

 ブホッ !  察知聡子が鼻から噴水のような鼻血を出して、パタンと倒れてしまった。

 エッ? エッ ?  どうしたのよ !

「流石、師匠 !  妖怪サトリも師匠の手にかかれば形無しですね !」 塁が興奮して言っているが、ワケわかんないよ ! 

 その騒ぎを聞きつけたのか、クラスの生徒達が注目しているのが分かる。

「ついに、スケベ師匠の犠牲者か !?」
「奴の頭の中では、どんなスゴい妄想が……」
「スケベ師匠」「スケベ師匠」……はい、はい、もうスケベ師匠でいいですよ。
 いつまでも、察知聡子を転がして置くワケにはいかないので起こしてやろうとしたら、いきなりアタシの手を握り、

「師匠、私を弟子にしてください !」

「いえ、おかまいなく 」と逃げようとしたのだけど、手を離してくれない。

 ヒソヒソと周りのクラスメイト愚民が本人を前にして噂話をしている。

「スケベ師匠、どんな卑猥ひわいなことを考えていたのかしら !?」
「口では言えないことよ」
「ああ、知らない間にスケベ師匠の弟子が増えていく」
「スケベ師匠」「スケベ師匠」「スケベ師匠」「スケベ師匠」「スケベ師匠」「スケベ師匠」「スケベ師匠」

 えーぃ、ウルサイ!  芸術は、何時だって大衆には理解出来ないんだよ !

「うわぁ、ヒカリの仲間が増えるんや!」

「んで、ヒカリ。 弟子にすっのだっちゃ?」

「ヒカリ……期待させて待たせるのは可哀想ですよ。 早く返事をしてあげなさい」

 右京、ネイ、真雪までが呆れたようにアタシを見ている。

「わかった、わかったから手を離して !  弟子にするから離しなさい !」

 こうして、腐女子仲間が増えたのだけど……何か違う !
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