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命短し恋せよ乙女 ⑨

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【蝶子side】

 帰り道、周りの声が聞こえてきた。

「あの娘、可愛くね ?」

「おっ、マジだ 」

 当然でしょう、蝶子ちゃんは可愛いんだから !

 結局、丸一日を無駄に過ごして終わっちゃったなぁ。
 情報も聞き出せなかったし、釘もさせなかった。


  ── 「すみません、すみません !
 連れていかないでください。
 この娘は、友達なんです 」 ──


 本当は、あんな娘は敵じゃないから、どうでもいいんだけどね……

 ちょっと、いいヤツなのがムカつく !



◇◇◇◇◇

 翌日、教室に入ると佐江内が一人でスマホを見ていた。

 いや、嵐くんとスマホで何か、やり取りをしている。

 おのれ、佐江内 !  油断も隙もない !

「おはよう、嵐くん。佐江内さん。
 何をしているのかなぁ~ ? 」

 仲の良いフリをして佐江内に後ろから抱きついた。
 本当は嵐くんに抱きつきたいけど、警戒させるだけだから我慢した。
 佐江内のスマホを覗き込むと、どうやら料理のレシピを交換していたようだった。
 色っぽい話しでは無いからと安心しては、いけない。
 むしろ警戒するべきだ。
 趣味が合うと云うことは、友情から愛情に変化してもおかしくないからだ。

 おのれ、佐江内、 ウブなフリして策士だったか !

「おはようございます。 夜野さん 」「蝶子、おはよう」

 スマホには、ハロウィンの料理レシピが載っている。
 まさか、蝶子ぬきでハロウィンパーティーをやる気じゃぁな……

「文化祭の料理のことで相談していたんです。
 嵐くんは『パンプキンミートパイ』を提案してくれたんですが、家庭科室のオーブンを一人占めは出来ないので説得していたんですよ 」

「いや、だからって、型で抜いた『オバケおにぎり』じゃぁ、面白みに欠けるだろうよ 」

 うぐぅ、わたしに女子力を見せつけるつもりね !
 そっちがその気なら、

「料理班の人たちだって、文化祭を見て回りたいでしょうから『ケーキ屋ケンちゃん』で、マカロンとかクッキーとかを買ってきた方が良くない ?」

 わたしが意見を言うと、

「珍しく良いことを言うじゃないのさ、アフロ……蝶子 」

「そうですね。  教室でつくるとなると、保健所に許可を取らなくてはイケナイから、今から許可を取るとなると難しいかしら ?」

 英里香ちゃん、明日菜ちゃんが援護射撃してくれた !
 普段、蝶子ちゃんのことを煙たがっていたのは、仲良くしたかった裏返しだったのね。
 由利凛ちゃんも助けてくれたのも……

 ── いやいや、エリス英里香アテナ明日菜も本気で、アフロディーテを嫌っていたわよ。
 まして、アノ異世界の邪神ユリリン由利凛は私を罠にかけて、ペットのクラーケンのエサにされるところだったのよ ! ──

 オバサンアフロディーテが騒いでいた。

 負け犬の遠吠えね。  だから、アナタは駄女神だと言うのよ !

 ── キィィィー !  私の分体のクセに本体である私を侮辱するなんて、誰に似たのかしら !
 覚えておきなさい、蝶子 ! ──

 本当に五月蝿うるさいオバサンよね。
 今は、それどころじゃないんだから !
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