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19.罪人の末路
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捕縛された罪人たちがどうなったかと言えば。
ヴェルム侯爵は、罪を重ねすぎたこともあり、財産没収のうえで侯爵家は取り潰しとなった。ヴェルム侯爵自身は炭鉱での終身労働刑に処されたそうだ。
ご家族は関与していなかったため、処罰は下されなかったが、財産もない状態ではどうすることもできず、夫人のご実家に戻られたという。
学院長は、もちろんその職を解かれ、身分剥奪の上、五年の労働刑となった。
ヴェルムとは違う炭鉱での労働となるそうだ。
そして、ダニエルは――――。
処罰を言い渡される場に、わたしと叔父も同席させてもらった。
初めて会う元父は随分とくたびれていたが、人好きをするような見た目だった。
笑顔で耳にいい話でもされたら騙される人がいるのもわからないでもない。
元父は、わたしを見て、呆けた顔をしていた。
「ビアトリス……?」
確かにわたしは母の生き写しだとは言われるが、この男は、その母が亡くなったから公爵家に乗り込んできたことを忘れたのだろうか。
「初めまして。クリスティア・バートンですわ」
「…っ!ああ、そうか。お前がクリスティアか」
お前とか言われたくないのですが。
「よく来てくれた。陛下に言ってくれないか。私はお前の父親で、悪いことなどしていないということを」
この男は一体何を言っているのか。
この期に及んで、悪いことをしていないなどとよく言えたものだ。
「ご自分がしたことをわかっていないのですか?」
「親が娘の婚約者を決めて何が悪い!」
もしや、捕まった理由が勝手に婚約話を進めたことだとでも思っているのか。
言いたいことは山ほどあるが、何よりもまず、どうしても言っておきたいことがある。
「あなたはわたくしの親でもなければ、公爵家の人間でもありません」
「なっ!どういうことだ!」
「お前とビアトリスは七年前に離縁してるんだよ」
「そんなのは知らない!」
「再三に渡る呼出要請を無視したのはお前だろう。旦那不在とはなったが、陛下から許可をいただいて離縁を成立させたのだ」
「何を勝手に!」
「勝手なのはお前だ。仕事もせず、家にも帰らず、愛人のところに入り浸っているとなれば離縁も当然だ。そのうえ、ビアトリスが亡くなった途端に公爵家に寄生するなど常識を疑うぞ。恥を知れ」
まさか、離縁したことさえ知らなかったとは。
書面は送っていたが、それすらも見ていないということか。
「さっきから偉そうに何なのだ!だいだい、離縁したというならば、なぜその時にビアトリスは出て行かなかったのだ!バートン公爵は私なのだぞ!」
「お前は何を言っているのだ。お前が公爵になったことなど一度もない。入り婿には爵位継承権がないのを知らんのか」
「は?」
本気で驚いているダニエルに、わたしたちはため息をつくしかなかった。
「とにかく、お前は公爵家の人間ではないし、実家からも絶縁されているから平民だ。それを踏まえたうえでの処罰となる。しかと聞け」
「待ってください!私はヴェルム侯爵に騙されていたのです!」
陛下が処罰の話に移してくれたかと思えば、今度は言い逃れですか。
本当に往生際の悪い男だ。
「ほう?ならば、なぜ婚約話が広まったときにヴェルムのところに行った?」
「は、…………。そ、れは、確認のために」
「その婚約に関係のないヴェルムに何を確認するのだ」
「そ、それは………」
「もうよい。あの日お前たちが話していたことも、企んでいたこともすべて把握しておる。更に偽証を重ねるのか?」
陛下にそう言われ、数々の証拠を突き付けられて、逃げ道がないことを悟ったダニエルは、遂に項垂れた。
どうやら、ダニエルは、以前から公爵を名乗り、公爵印を使って、各所で詐欺まがいのことをしていたようだ。
平民が貴族を偽証して罪を犯すなど言語道断。
それに加えて今回のことがあったため、二十年の労働刑を言い渡されていた。
しかも、ヴェルムと同じ炭鉱だなんて、どんな目に遭うことやら。
ヴェルム侯爵は、罪を重ねすぎたこともあり、財産没収のうえで侯爵家は取り潰しとなった。ヴェルム侯爵自身は炭鉱での終身労働刑に処されたそうだ。
ご家族は関与していなかったため、処罰は下されなかったが、財産もない状態ではどうすることもできず、夫人のご実家に戻られたという。
学院長は、もちろんその職を解かれ、身分剥奪の上、五年の労働刑となった。
ヴェルムとは違う炭鉱での労働となるそうだ。
そして、ダニエルは――――。
処罰を言い渡される場に、わたしと叔父も同席させてもらった。
初めて会う元父は随分とくたびれていたが、人好きをするような見た目だった。
笑顔で耳にいい話でもされたら騙される人がいるのもわからないでもない。
元父は、わたしを見て、呆けた顔をしていた。
「ビアトリス……?」
確かにわたしは母の生き写しだとは言われるが、この男は、その母が亡くなったから公爵家に乗り込んできたことを忘れたのだろうか。
「初めまして。クリスティア・バートンですわ」
「…っ!ああ、そうか。お前がクリスティアか」
お前とか言われたくないのですが。
「よく来てくれた。陛下に言ってくれないか。私はお前の父親で、悪いことなどしていないということを」
この男は一体何を言っているのか。
この期に及んで、悪いことをしていないなどとよく言えたものだ。
「ご自分がしたことをわかっていないのですか?」
「親が娘の婚約者を決めて何が悪い!」
もしや、捕まった理由が勝手に婚約話を進めたことだとでも思っているのか。
言いたいことは山ほどあるが、何よりもまず、どうしても言っておきたいことがある。
「あなたはわたくしの親でもなければ、公爵家の人間でもありません」
「なっ!どういうことだ!」
「お前とビアトリスは七年前に離縁してるんだよ」
「そんなのは知らない!」
「再三に渡る呼出要請を無視したのはお前だろう。旦那不在とはなったが、陛下から許可をいただいて離縁を成立させたのだ」
「何を勝手に!」
「勝手なのはお前だ。仕事もせず、家にも帰らず、愛人のところに入り浸っているとなれば離縁も当然だ。そのうえ、ビアトリスが亡くなった途端に公爵家に寄生するなど常識を疑うぞ。恥を知れ」
まさか、離縁したことさえ知らなかったとは。
書面は送っていたが、それすらも見ていないということか。
「さっきから偉そうに何なのだ!だいだい、離縁したというならば、なぜその時にビアトリスは出て行かなかったのだ!バートン公爵は私なのだぞ!」
「お前は何を言っているのだ。お前が公爵になったことなど一度もない。入り婿には爵位継承権がないのを知らんのか」
「は?」
本気で驚いているダニエルに、わたしたちはため息をつくしかなかった。
「とにかく、お前は公爵家の人間ではないし、実家からも絶縁されているから平民だ。それを踏まえたうえでの処罰となる。しかと聞け」
「待ってください!私はヴェルム侯爵に騙されていたのです!」
陛下が処罰の話に移してくれたかと思えば、今度は言い逃れですか。
本当に往生際の悪い男だ。
「ほう?ならば、なぜ婚約話が広まったときにヴェルムのところに行った?」
「は、…………。そ、れは、確認のために」
「その婚約に関係のないヴェルムに何を確認するのだ」
「そ、それは………」
「もうよい。あの日お前たちが話していたことも、企んでいたこともすべて把握しておる。更に偽証を重ねるのか?」
陛下にそう言われ、数々の証拠を突き付けられて、逃げ道がないことを悟ったダニエルは、遂に項垂れた。
どうやら、ダニエルは、以前から公爵を名乗り、公爵印を使って、各所で詐欺まがいのことをしていたようだ。
平民が貴族を偽証して罪を犯すなど言語道断。
それに加えて今回のことがあったため、二十年の労働刑を言い渡されていた。
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