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13.王への報告
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とりあえず、現状でお互いに話せることは話してしまったので、今日のところは解散することにした。
ロン様に婚約証明書が偽造だという説明をするべきではあるのだけど、詐欺か共犯か、この婚約の背景がわからない限りはその説明はまだ早いと判断して、話を終わらせることにしたのだ。
「今日はお時間をいただいてしまって申し訳ありませんでしたわ」
「いえ、こちらこそ、クリスティア様には身に覚えのない婚約の話を公にしてしまって、申し訳ございませんでした」
いや、公にしたのはアリス嬢であって、ロン様ではない。
だから、ロン様は気にしないでほしいことを伝え、こちらでも事実確認をしておくことを約束した。
「あの、私は、しばらく学院を休学します。噂に耐えきれる自信がないので」
確かに、食堂での話は既に広まっているだろう。
偽造だとは伝えなかったものの、今日の話で婚約話の真偽はわからなくなっただろうし、どう答えていいかもわからない噂に振り回されるくらいなら、休学したくなるのも仕方ないかもしれない。本来おとなしそうな方だし。
わたしはあずかり知らぬことだったとは言え、この偽造婚約の契約をしたのは生物学上の父で、噂を広めたのは生物学上の異母妹だ。
ロン様が休学されている間のフォローはきちんとしようと思う。
そうして、ロン様はオルライト様が送り届けることになり――わたしたちが集まったレストランに残っている馬車は王家とファニス侯爵家のものだけなのだ――、わたしたちは王宮に向かうことになった。
オルライト様は、たぶん、わたしたちが陛下に報告しに行くことを見越して、ロン様のお送りを買って出てくれたのだろう。デキる人だ。
王宮に着いた後は、殿下が話を通してくれたため、それほど待たずに陛下にお会いすることができた。どうやら、ちょうど叔父と話していたようで、叔父も一緒にいて驚いたけれど。
叔父が防音結界を張った途端、話し始めたのは陛下だった。
「クリスティアと男爵の息子との婚約の話が広まったというのは本当か?」
「父上、婚約の話はご存じだったのですか?」
確かに、陛下の口ぶりでは知っていたように聞こえる。
「ダニエルのところには影を放っておる。だから報告はあったが、口外しないことになっていたという話に安心して、男爵家の関わりを探っていたのだ。それが、まさかこんなに早く広まるとはな」
なるほど。陛下や叔父は既にこの偽造婚約の裏を探っていたのか。
わたしが気づいたくらいだから、陛下たちが気づかなかったはずがない。
それで、とっくに動いていたというわけだ。
「クリスティア。いつも報告が遅くてすまんな」
叔父からはそう謝られたけれど、アリス嬢が学院に通っていたことも、今回のことも、アリス嬢が無用な行動をしなければ、報告が遅くても問題はなかったのだ。本当に、あの娘は余計なことばかりしてくれる。
「クリスティアには別邸を貸してもらうだけで、こんなに関わらせるつもりはなかったのだ。本当にすまない。あろうことか、ダニエルが会ったこともない娘を利用するなどとはな。しかも、嘘でも大公家との婚約をなかったことにするなど、思いもよらなかった」
陛下にまで謝られてしまった。
さらっとした謝罪だとは言え、王様に謝られるのは、小娘には負担が大きいのでこれっきりにしてほしい。
にしても、陛下の言葉を聞いて改めて思ったけれど、あの男は、バレなければ何をしてもいいとでも思ったのだろうか。
大公家まで敵に回すなんて正気の沙汰ではないのだけれど。
「まあ、でも、息子から婚約話が広まったことを聞いた男爵がどう動くかで、関わりもはっきりわかるだろう。その動きを待って、こちらも動き始める予定だ」
動き始めるということは、事態は意外と進展しているのだろう。
であるならば、早く片付くことを願うのみ。
偽造婚約については、しばらくは、誰かに真偽を聞かれても話を濁すように言われて、この密談が終わった。
ロン様に婚約証明書が偽造だという説明をするべきではあるのだけど、詐欺か共犯か、この婚約の背景がわからない限りはその説明はまだ早いと判断して、話を終わらせることにしたのだ。
「今日はお時間をいただいてしまって申し訳ありませんでしたわ」
「いえ、こちらこそ、クリスティア様には身に覚えのない婚約の話を公にしてしまって、申し訳ございませんでした」
いや、公にしたのはアリス嬢であって、ロン様ではない。
だから、ロン様は気にしないでほしいことを伝え、こちらでも事実確認をしておくことを約束した。
「あの、私は、しばらく学院を休学します。噂に耐えきれる自信がないので」
確かに、食堂での話は既に広まっているだろう。
偽造だとは伝えなかったものの、今日の話で婚約話の真偽はわからなくなっただろうし、どう答えていいかもわからない噂に振り回されるくらいなら、休学したくなるのも仕方ないかもしれない。本来おとなしそうな方だし。
わたしはあずかり知らぬことだったとは言え、この偽造婚約の契約をしたのは生物学上の父で、噂を広めたのは生物学上の異母妹だ。
ロン様が休学されている間のフォローはきちんとしようと思う。
そうして、ロン様はオルライト様が送り届けることになり――わたしたちが集まったレストランに残っている馬車は王家とファニス侯爵家のものだけなのだ――、わたしたちは王宮に向かうことになった。
オルライト様は、たぶん、わたしたちが陛下に報告しに行くことを見越して、ロン様のお送りを買って出てくれたのだろう。デキる人だ。
王宮に着いた後は、殿下が話を通してくれたため、それほど待たずに陛下にお会いすることができた。どうやら、ちょうど叔父と話していたようで、叔父も一緒にいて驚いたけれど。
叔父が防音結界を張った途端、話し始めたのは陛下だった。
「クリスティアと男爵の息子との婚約の話が広まったというのは本当か?」
「父上、婚約の話はご存じだったのですか?」
確かに、陛下の口ぶりでは知っていたように聞こえる。
「ダニエルのところには影を放っておる。だから報告はあったが、口外しないことになっていたという話に安心して、男爵家の関わりを探っていたのだ。それが、まさかこんなに早く広まるとはな」
なるほど。陛下や叔父は既にこの偽造婚約の裏を探っていたのか。
わたしが気づいたくらいだから、陛下たちが気づかなかったはずがない。
それで、とっくに動いていたというわけだ。
「クリスティア。いつも報告が遅くてすまんな」
叔父からはそう謝られたけれど、アリス嬢が学院に通っていたことも、今回のことも、アリス嬢が無用な行動をしなければ、報告が遅くても問題はなかったのだ。本当に、あの娘は余計なことばかりしてくれる。
「クリスティアには別邸を貸してもらうだけで、こんなに関わらせるつもりはなかったのだ。本当にすまない。あろうことか、ダニエルが会ったこともない娘を利用するなどとはな。しかも、嘘でも大公家との婚約をなかったことにするなど、思いもよらなかった」
陛下にまで謝られてしまった。
さらっとした謝罪だとは言え、王様に謝られるのは、小娘には負担が大きいのでこれっきりにしてほしい。
にしても、陛下の言葉を聞いて改めて思ったけれど、あの男は、バレなければ何をしてもいいとでも思ったのだろうか。
大公家まで敵に回すなんて正気の沙汰ではないのだけれど。
「まあ、でも、息子から婚約話が広まったことを聞いた男爵がどう動くかで、関わりもはっきりわかるだろう。その動きを待って、こちらも動き始める予定だ」
動き始めるということは、事態は意外と進展しているのだろう。
であるならば、早く片付くことを願うのみ。
偽造婚約については、しばらくは、誰かに真偽を聞かれても話を濁すように言われて、この密談が終わった。
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