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元彼上司に隙を突かれ

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結弦がわたしの課の課長になって良かったは、エンジン制御ECUに関して詳しい人が上についた事でスムーズに開発が進む事。

「理子、ここ、直しといて」

トミタでバイトをしていた時に結弦の元でパワートレイン開発部のエンジン制御ECUを組み込む業務についていたわたし。
大学院時代もエンジン制御ECUのシステム開発についてを学んでた。
でも、まだまだ半人前で自分では納得のプログラムを組んでたつもりでも、それが不具合を起こしたりしていて、頭を抱えてしまう。
既存のエンジン制御ECUのシステムを見て日夜研究をし、一部プログラムをかき変えたりして開発業務に取り組んでる。

結弦に直すように言われたエンジン制御ECUの動作を確認し、速度などを変更して調整していく。

「ここはこんな感じがベストだな」

いつのまにかわたしの背後に来て、マウスを持ってるわたしの手に手を置き、結弦がシステムのプログラムを訂正した……。

燃料をエンジンにタイミングよく、そして最適に噴射するために電子制御を行うのがエンジン制御ECU。
燃焼をコントロールすることでエンジン本来の性能を高め、高出力化や燃費向上を実現する。

そのシステムを開発するのがわたしの仕事だけど、できあがった車のエンジンに関する知識はないから、これで大丈夫か不安だったりした。

だから、結弦がデンタに転職してきてわたしの課の課長になった事は仕事の面ではありがたかった。

「理子、ホンタのパワートレイン生産開発部から電話でエンジン制御ECUのシステムが上手く機能してないってクレームきたから今から栃木に行くから着いてこい」

「橘課長、お一人で行かれて下さい。それか工藤くんか樋口くんを連れて行って下さい」

ホンダホンタのパワートレイン生産開発部から電話があり、工藤くんが結弦に青い顔して慌てて取り次いだから何か問題が起きたのはわかった。

「理子、お前が担当してた、CRSでのシステムエラーだ。理子が対応するのが筋だろ。俺は上司として着きそう。ああだこうだ言っていないで、ホンタのCRSのシステムをノートパソコンに入れろ。直ぐに出発する」

わたしが組んだCRSのシステムに問題があったとわかり慌ててノートパソコンにCRSのシステムを入れノートパソコンのケースにノートパソコンを入れ準備をする。

高速道路を取って車で5時間かかるから急いで会社を出て、ホンタのフィッツに乗り込んで出発した。

朝の10時に連絡を受けたから16時にホンタに着く予定で、結弦の運転でホンタのパワートレイン生産開発工場へ向かった。

車の助手席でノートパソコンを開いて、CRSのシステムのプログラムを確認していく。

わたしが見てもどこに問題があるかわからない。
ただ、最近何度か結弦に訂正される3箇所が問題な気がした。

「次のサービスエリアで昼飯を取ろう」

13時過ぎに結弦が声をかけてきて、新東名高速道路 駿河湾沼津SA 上りで、休憩を取ることにした。

「せっかくだ、海鮮丼を食べて行こう」

納品したエンジン制御ECUに問題があって栃木にあるホンタのパワートレイン生産工場に向かってるのにサービスエリア内のご当地グルメを堪能しようとしてる結弦。

お昼時が過ぎた2時だったから直ぐに注文した海鮮丼がきて急いで口の中に頬張る。

「ゆっくり食べろ。ホンタでの仕事はすぐに終わるから焦らなくてもいい」

結弦に奢って貰った1番高い2500円の豪華な海鮮丼。
結弦に怒られたから味わって完食した。

ホンタのパワートレイン生産開発工場には16時過ぎに着き、結弦が問題のエンジン制御ECUのシステムを開いて、わたしが問題があるところと思った3箇所を訂正た。

1時間ほどでエンジン制御ECUのシステムは問題なく稼働するようになった。


「帰りはわたしが運転します」

ホンタからの帰り、結弦が運転席に乗ろうとしたのを止めた。
これからまた5時間車を運転させるのは申し訳ない。
結弦はわたしの上司に当たるから本来は行きもわたしが運転しないといけなかった。

「俺が運転する。理子には助手席に座っていて欲しい。思ったより時間がかかったし早く帰ろう」

わたしが運転すると言ってるのに結弦が運転席に乗り込み、仕方がなくわたしは助手席に座った。

行きと違ってノートパソコンを開いてシステムのプログラムを確認する必要もなく、ただ助手席に座って無いといけないのがつまらなくて苦痛だった。

結弦は上司で元彼、そして結弦はわたしに対して好意を持ってる。
だから仕事で2人きりになった時にどう接したらいいか悩んだ。

結弦に関して、上司と部下の関係に戻った事で仕事に関しては尊敬してる。
でも、だからといってまた結弦とまた付き合うかといったら、その気は無い。

結弦と付き合ってる時、よく週末にドライブに連れて行ってくれた。
時に泊まりがけで、ちょっと遠くに観光と美味しいものを食べに連れて行ってくれて、8歳年下のわたしを結弦は可愛がってくれてた。

結弦と付き合っていた時の事を車を運転する結弦の横顔を眺めながら思い出してたわたし。

気がついたら眠ってしまってた。

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