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足枷が指輪に

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「杉宮さん、突然なんだけど、来月から東京本社内の研究センターに行ってくれ」

センター長から呼び出され、東京本社への異動言い渡され、唖然とする。

来月からと言われても困る。
今月は後5日しかないのに、仕事をしながら賃貸マンションを契約して引っ越すなんて、無理だ。

社長、副社長、専務が、祖父、祖母、叔父なのもあり、身内の蓮翔くんが可愛いのもあり、パワハラ的な異動を私に突きつけてきた。

断りたくても断れない。

つくば研究センターは本社研究センターが見つけ出した有効性が期待される化合物の解析追究と非臨床実験を行っていて、薬品として製品化させ人による臨床試験は東京本社研究センターが行っている。
大学や病院とも連携して研究を行っていて、創薬研究の最前線で最先端の技術と知識に触れる事ができる東京本社研究センターに、私は希望を出してた。
だから、異動できる事は大変光栄な事。
だけど、私の創薬研究員としての能力を買われてでなく、創業者一族の身内の恋人だからというのが納得できなかったりする。

金曜日の夕方。蓮翔くんは私のマンションにブルーのアルファロメオのスポーツクーペでなく、ブラックのメルセデスAMGで迎えにきた。
トランクには段ボールとガムテープ、クーラーBOXが入っていて、それを持って私の部屋に入ると、引越し作業を始めた。


「思ったより荷物あるな。必要最低限だけ持ち出そう」

持ち運ぶのは、薬学の本類と衣類とお気に入りの食器類にiPadとノートパソコンぐらい。
段ボールに詰めこみ、それを蓮翔くんがトランクと後部座席に積み込んでいく。
冷蔵庫の中身をクーラーBOXに入れ、引越し準備は終了。
電化製品のコンセントを抜いて、4年間暮らした賃貸マンションからでる。

「……蓮翔、これから蓮翔のマンションでお世話になるならもう逃げれないし、足枷つけなくてもいいよね?」

「そうだな。じゃあ、これからはこれを左薬指につけて!!」

ポケットから取り出された長方形のアクセサリーケースをパカっと開けると指輪が3つ。
フルサークルのエタニティリングと大小のマリッジリングがあった。

「俺から逃げないって誓えるならつけれるよね。結婚指輪と婚約指輪。籍は凛子のお父さんから承諾得てないからまだ入れないけど、俺達が付き合い始めた日には入れたいな」

私の気持ちは置いてけぼりにし、蓮翔くんは私と結婚する気満々でいる。

逃げても捕獲され、足枷で繋がれ監禁される。

大人しく左手を差し出し、指輪を2つつけられ、蓮翔くんの左薬指にお揃いのプラチナリングをはめた。

これで、多少なり自由が保障されるならいい。
足枷だけは、もうはめられたくない。

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