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下衆男に着いて行くとろくなことがない side 心結

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「心結、あんたももう、28になるんだから、そろそろ結婚したらどうなの?
だから、母さんは大学院まで通わせたくなかったのよ」

日曜日。
唯一の休みの日の昼過ぎに起きてきたわたしに、母さんが小言を言う。

「スーパーゼネコンに入社して、仕事ができる男を捕まえて結婚するんじゃなかったの?
ってか、あんた、休みの日に、昼過ぎまで寝てるって、デートする相手とかいないの?
母さん、30歳過ぎても独身とか、許さないからね」

母の毒舌が耳が痛くて、部屋に戻って、身支度を整え、出かける事にした。

わたしも、本来は大島建設で有望な建築設計士と知り合い、結婚したいと思っていた。

なのに、食堂で涼真を回し蹴りした逸話が本社中に広まって、社内でわたしを恋愛対象にする男性は居なくなった。

わたしも涼真みたいに、コンパに参加したらいいんだけど、涼真みたいな不誠実な男をがいると思うと、虫唾が走り無理。

社内もコンパも無しなら、どこに出会いを求めばいいかわたしは途方に暮れた。

「よっ、心結、あれっ、1人?」

会いたくない人No.1の涼真に、本屋で遭遇して、思いっきり引きつった顔をしてるわたし…。

手には、昔に読んで面白かった携帯小説の書籍本…。
 
「へぇ…、お前ってこんな小説を読むんだ。《エリート上司とLOVE設計》…」

わたしの手から書籍化された携帯小説を奪ってペラペラめくる涼真。

オートドックスな純愛小説を立ち読みしているのを見られ、焦る。

「欲求不満か、お前」

小説の内容が内容だから、言われてしまった…。

たぶん、わたしは真っ赤な顔をしてると思う。
涼真から小説を取り上げ、購入せずに元に戻し逃げるように書店を出た。

着いてくる涼真…回し蹴りされたいのか?

さすがに、人通りが多い街中で回し蹴りはできないからひたすら無視。

「心結、飯食って行かない?こないだオープンした俺が設計したレストランのオーナーにコース料理無料券を2枚貰ったんだ」

わたしがひたすら無視してるのに、涼真はわたしを食事に誘ってくる。

涼真は、ワンナイトLOVE皇子で下衆男だけど、建築デザインに関しては天才的才能を持ってる。

自由参加の社内コンペで、よく建築デザインが選ばれてる。
コンパに行かずに、コンペの建築デザインを書いとけと言いたくなる…。

確か、新宿駅の側に新オープンした、三つ星レストランで修行していたシュフの店で、週末は予約が3ヶ月待ちと噂で聞いた。

「そのレストラン、無料券持ってても入れないよ。予約が取れないって聞いた事ある」

「ちょっと早い時間なら大丈夫。行くならレストランに電話かけるけど、どうする?」

最近、まともな物を味わってないわたしは悩んだ。
昼過ぎまで寝ていたわたしに、昼ご飯なんて用意されてなく、昨日の夕方にサンドイッチを流し込んだ以降、何も食べてなかった。

「しかも、このコース、1人3万円。絶対に自腹では食べに行かない高級料理だけど、どうする?」

「……行く。連れて行って下さい」

食い意地に負けてしまった…。

涼真は、ニヤッとしてiPhoneをポケットから取り出し、レストランに電話をかけた。

「心結、1時間後の16時半に予約したから。夕食には早いけど、昼過ぎまで寝てて、昨日の夕方から何も食べてないんだろ?」

わたしの行動パターンを把握してる腐れ縁な幼馴染。
たまに、わたしの部屋に、隠しカメラを仕掛けてるんじゃないかと思ってしまう言動をするから、気持ち悪く思ってしまう。


涼真に連れられ、話題のレストランに向かう。
斬新な白を基調とした神殿ぽい西洋風のレストランを見て、圧巻されたを
仕事においては、涼真の能力の高さを実感してしまった。
涼真がデザインした建築物を実際に足を運んで見たのは初めてだった。

「須藤さん、いらっしゃい。どうぞ」

オープン前だったのもあり、予約した時間まで外で待つつもりが、シュフが自ら出てきてくれて、席まで案内してくれた。

1人3万円もするコース料理が運ばれてきて、見た目の美しさから、頬っぺたが落ちちゃうぐらいの美味しさに、感動した。

「お前……、よく食うな」

結構な量なのにぺろっと全部たいらげていくわたしを見て、涼真は呆れていた。

太るぞと言いたいのを、絶対に堪えてる……。

コンパに参加する女性人は、少食な自分を見せて可愛く見せたいのと、スタイルを維持するために食べるのを我慢しているだけ。

わたしは、我慢なんてしない。

美味しいものを食べるのが唯一のストレス発散方法だから……。

ストレスの原因の1つの涼真に誘いに乗ったんだから、満腹で苦しくても、コース料理を全てたいらげる。

後半のデザートも美味しく頂くわたし。
11品をぺろっと全部たいらげたわたしにシュフは嬉しそうだった。

女性の大半は半分以上残すらしい。

美味しいフランス料理に、サービスと赤ワインをボトルで1本付けてくれて、さらに涼真が白ワインをボトルで1本注文してくれたから、いい感じで酔いもきていた。

ワインとは…危険な飲み物。
ビールやカクテルならまだ、酔いはこなかったと思う。
ワインを1本、涼真はあまり呑んでなかった気がするから、1本半も呑んで、呑まされてしまった。

食事を終えてレストランを出たのが18時45分。
それから、JRに乗って帰るのが面倒臭いから、高額収入の涼真に『タクシー代を出して』とおねだりではなく脅して、タクシーに乗ったのは覚えてる。

わたしは、やらかしてしまった。

ワンナイトLOVE男の前で、お酒なんて飲んだらいけない。

酒は呑んでも呑まるるな。


疲れとワインのアルコールで、朝までぐっすり眠ったわたし。

目覚めると…ここは???

なんで、涼真の部屋なわけ???

服を確認すると、乱れてはいるけど、ちゃんと着てるわたし。

セーフ!!

涼真のベッドを占領して、寝てたわたし。
涼真が、どこにいるかと、辺りを見渡してもいない。
リビングにいるのかもと、ベッドから降りようと、足を下ろす。

「いてーー」

ベッドの下で、涼真はうつ伏せで伸びてた。
わたしが涼真を踏んづけていて、悲鳴をあげた涼真。

「お前が暴れたせいで、身体中、打撲だらけだ!!」

涼真がシャツを脱ぐと、腹や腕に青い痣。

「あんた……、まさかヤロウとして……」

「返り討ちにあったよ。
てか、俺ら、高校生の時にお互い初体験でやった仲だろ。
減るもんじゃないし、やらせろよ。
お前も、本屋で如何わしい小説を買おうとしてただろ?
本で読むより、実際やる方が気持ちがいいって?
俺、高校生の時より上手くなってるからさ」

悪びれもせずに、わたしを犯そうとしたワンナイトLOVE下衆男への制裁、みなさんならどうします?

→回し蹴り
→ビンタ
→急所にキック

はい、フルコースで、涼真に制裁を加えました。
最期の急所にキックで機能しなくなればいいのに。

かなり痛かったらしく、蹲る涼真。

時計の針を見たら午前5時で、今日は仕事があるから、慌てて、隣の我が家に帰った。

下衆男に着いて行くとろくなことがない。
次は、いくら美味しいものが食べれるからと、着いていかない。



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