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婚約者の裏の顔
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インターンシップは夏休みが始まってからお盆休暇が始まるまでの3週間行われる。
8月に入ってからは大学生も参加し、希望者はお盆明けから8月末まで仕事をさせて貰える。
「……時給、高等専門学生は850円、大学生が980円、大学院生1050円。学歴でなんで差がつくの!!私達の方が仕事やってるのに、信じられん!!」
「……やっぱり、大学に編入した方がいいのかな」
「……私達に押し付けて、やってないのにやったふりされて、腹たった」
ランチタイム。オフィスビル内でなく、近くのファミレスにインターンシップ仲間と落ち合い、パスタを頬張る。
みんなサイト運営とひたすらプログラミングする業務についていて、納期とは関係なく仕事に打ち込む。
隼人率いる運営陣総回診で刃を向けられる事なく、アットホームな感じで業務についてた。
それが8月になり、大学生が30人やってきてイライラしてる。
社食で一緒に食事をするのが嫌だからと、1時間しかない休憩時間に徴収され、愚痴大会が始まった。
「あっ、藤宮ちゃん、女子大生が社長に迫ってたよ!!」
「うちの部署にきてるお嬢様大学の女子大生も、“教えて下さい”って指導係でなく社長に聞いてた!!」
「ーー まずくない!?」
鬼畜社長扱いされてそうな隼人だけど、開発チームに対して進行を把握してきめ細かい指導と対応をしてた。
なるべく社員に考えさせて自力でさせるために取締役総回診で厳しい態度をみせるも、愛の手を出し、無理な残業はさせず労働基準法は守っていて、その結果、隼人が夜中まで残ってシステムの開発やメンテナンスをしてた。
「左手薬指に指輪をはめていて、どこぞの御令嬢と婚約してるという噂があるのに、女性社員がかなり迫ってるね。全く相手にされてないけど」
インターンシップで私がエブサイトのオフィスにいて顔を合わせる事があっても、隼人は社長という立場があるから私を特別扱いしない。
「藤宮さん、社長の婚約者だって事はバラしてないの?」
「……言わないよ」
自分から名乗り出る事ではない。
開発チームSにインターンシップで入り、毎日ひたすらパソコンのキーボードを叩いてるメンバーとほぼ会話無しで与えられた仕事をしてる。
中条専務と相葉専務が指揮をとっていて、この2人は私が隼人の婚約者でエブリサイトの新しいサイト開発の外部設計と内部設定の一部までを手がけているのを知ってるのもあり、チームの仕事は関係無しに、私にその仕事を押し付けてきた。
運営陣が行ってる業務をこなしている私を見て、チームメンバーの15人はどよめいてた。
「ひたすらパソコンのキーボードを叩いてるから、社員さんと会話ないんだ……」
インターンシップでエブサイトにきてるのに、マンションの部屋でいつも黙々とさせられてる仕事をさせられ、私は不満を感じてた。
「奏音……体調でも悪かったのか?」
「……インターンシップで疲れて、家でパソコン開くのが嫌だったの」
土曜日の朝、隼人が仕事部屋のパソコンを開いて私を呼んだ。
今週1週間は、やるよういわれたwebサイトの構造設計をストライキのつもりで全く手をつけなかった。
そして、ベビードールを着ずにユニクロで980円で買ってきたルームウェアのプリントTシャツにショートパンツを履き、夜中に帰ってきた隼人が抱きしめて寝ようとするのを寝ぼけたふりして蹴飛ばし、朝も起きずにいた。
ーー 隼人は飼い猫に噛まれた気分だと思う。
隼人がエプリサイトを起業してから、ずっと、
『奏音、お願いしていい?』
『うん』
と、中学時代、中間テストや期末テストの前でも隼人に頼まれたwebサイトの開発の仕事を優先させてきた。
いわゆる学問の勉強するよりも情報システム開発の勉強をしたいと高等専門学校に通い、IT関係の国家資格取得もした。
隼人を無視し、全く使われてない私の部屋に入ると外出するために着替える。
週末は地下にある食品スーパーへ行く以外は引きこもってて、服なんて何度も脱ぐから、何も身につけてなかったりしてた。
「……奏音、どこにいくんだ!!」
「ショッピング。気晴らしに渋谷をぶらぶらしてくる」
「……ちょっと待て、俺も一緒にいく」
いつもの私と違うから焦ってる隼人が急いで着替えてくるといって、ナノユニバースーのTシャツと黒のチノパンを履いて出てきた。
「……時間も時間だから、先に昼食べに行って渋谷にいこうっか!!」
私の左手を握ると手をひいてマンションからでて、走りのタクシーを止めて乗り込むと渋谷駅側にある割烹 二長に連れていってくれて、懐石料理のコースを食べさせてくれた。
「……奏音、どこ行きたい?ネットで購入してるファッションブランドの店にいくか?」
お腹が膨れ料亭からでると、すぐに私の左手を握り若い女性が集まる渋谷107の方へ足を向ける。
私のご機嫌をとり、なるべく早く家に戻り仕事をさせようとしてる気がして、わざと我がままをいって、都内をぶらついた。
「……奏音、そろそろ帰ろう」
夏だから、19時すぎてもまだ外は明るい。
でも、私がまだ未成年で17歳だからか、夜遊びは許して貰えなくて、最後は走りのタクシーに乗せられ強制的に連れて帰られた。
「アルコールが入る飲食店に奏音を連れて入れるか!!」
マンションに戻ると隼人がスマホで注文を入れてたケイタリングがちょうど届いた。
「……いらない。もうシャワー浴びて寝る。今日、ゲストルームのベッド使うから」
「ーー奏音、俺、奏音を怒らせる事したか?」
「子供扱いしないで。後……私は仕事の道具じゃない。そっとしといて。じゃなかった、実家のマンションに戻るから!!」
隼人は何もわかってない。
私の保護者気取りで、私と一緒にいるのは仕事で使えるから。
それから私は、ゲストルームのベッドで眠り、週末、隼人がウチにいる時間は自分の部屋で過ごすした。
私が避けてるからか隼人は週末も昼前に目覚めたら仕事に出てた。
インターンシップで昼間は仕事をしていても、家では全く何もしなかった。
2週間、こんな生活を送った。
****
「奏音ちゃん、片桐と喧嘩してる?あいつ、最近、週末も会社にきて仕事していて、平日も社長室にずっとこもってるし……」
仕事をしてる時に、中条専務と相葉専務に呼び出され、ミーティング室に連れてかれた。
「……長く付き合ってると喧嘩もするわな。あいつの仕事のやり方は俺らもついていけないとこあるし。次々と新しいサイトを追加するなといってるのに聞かないからな。奏音ちゃんがやらないからと1人でやろうとしてる。しばらくほっとこう」
私が隼人に頼まれた仕事を家でしてない事だけ伝えた。
私が隼人の婚約者というのはたぶん知ってる。
当時15歳の私を引き取り、家に住まわせるのに婚姻届を書いた。
でも、未成年者の結婚には親の同意が必要で、両親が亡くなった私は20歳までは結婚できなかった。
法律改正で、成人年齢と結婚年齢がイコールになることで、民法改正案によって、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる事で、男女共に18歳になれば親の同意なしに結婚できるようになり、私の誕生日に籍をいれる事にはなってる。
私の親戚への説得に、普通では考えられないけど、隼人は弁護士をたてて、父と母の遺産を親戚に分配し、今後一切縁を断つという誓約書を交わし、話をつけた。
小さいけれど会社を経営してた私の両親の財産狙いで私を18歳まで引き取ろうとした親戚を私から引き離してくれた。
「奏音ちゃん、あいつ、奏音ちゃんの事を相当大事に思ってるから、だから、なるべく早めに仲直りしてあげて」
大切にされてるのはわかる。
でも、それは愛してるという気持ちじゃない。
喧嘩は長期化し、インターンシップは終わり、お盆休みに入ろうとしてた。
8月に入ってからは大学生も参加し、希望者はお盆明けから8月末まで仕事をさせて貰える。
「……時給、高等専門学生は850円、大学生が980円、大学院生1050円。学歴でなんで差がつくの!!私達の方が仕事やってるのに、信じられん!!」
「……やっぱり、大学に編入した方がいいのかな」
「……私達に押し付けて、やってないのにやったふりされて、腹たった」
ランチタイム。オフィスビル内でなく、近くのファミレスにインターンシップ仲間と落ち合い、パスタを頬張る。
みんなサイト運営とひたすらプログラミングする業務についていて、納期とは関係なく仕事に打ち込む。
隼人率いる運営陣総回診で刃を向けられる事なく、アットホームな感じで業務についてた。
それが8月になり、大学生が30人やってきてイライラしてる。
社食で一緒に食事をするのが嫌だからと、1時間しかない休憩時間に徴収され、愚痴大会が始まった。
「あっ、藤宮ちゃん、女子大生が社長に迫ってたよ!!」
「うちの部署にきてるお嬢様大学の女子大生も、“教えて下さい”って指導係でなく社長に聞いてた!!」
「ーー まずくない!?」
鬼畜社長扱いされてそうな隼人だけど、開発チームに対して進行を把握してきめ細かい指導と対応をしてた。
なるべく社員に考えさせて自力でさせるために取締役総回診で厳しい態度をみせるも、愛の手を出し、無理な残業はさせず労働基準法は守っていて、その結果、隼人が夜中まで残ってシステムの開発やメンテナンスをしてた。
「左手薬指に指輪をはめていて、どこぞの御令嬢と婚約してるという噂があるのに、女性社員がかなり迫ってるね。全く相手にされてないけど」
インターンシップで私がエブサイトのオフィスにいて顔を合わせる事があっても、隼人は社長という立場があるから私を特別扱いしない。
「藤宮さん、社長の婚約者だって事はバラしてないの?」
「……言わないよ」
自分から名乗り出る事ではない。
開発チームSにインターンシップで入り、毎日ひたすらパソコンのキーボードを叩いてるメンバーとほぼ会話無しで与えられた仕事をしてる。
中条専務と相葉専務が指揮をとっていて、この2人は私が隼人の婚約者でエブリサイトの新しいサイト開発の外部設計と内部設定の一部までを手がけているのを知ってるのもあり、チームの仕事は関係無しに、私にその仕事を押し付けてきた。
運営陣が行ってる業務をこなしている私を見て、チームメンバーの15人はどよめいてた。
「ひたすらパソコンのキーボードを叩いてるから、社員さんと会話ないんだ……」
インターンシップでエブサイトにきてるのに、マンションの部屋でいつも黙々とさせられてる仕事をさせられ、私は不満を感じてた。
「奏音……体調でも悪かったのか?」
「……インターンシップで疲れて、家でパソコン開くのが嫌だったの」
土曜日の朝、隼人が仕事部屋のパソコンを開いて私を呼んだ。
今週1週間は、やるよういわれたwebサイトの構造設計をストライキのつもりで全く手をつけなかった。
そして、ベビードールを着ずにユニクロで980円で買ってきたルームウェアのプリントTシャツにショートパンツを履き、夜中に帰ってきた隼人が抱きしめて寝ようとするのを寝ぼけたふりして蹴飛ばし、朝も起きずにいた。
ーー 隼人は飼い猫に噛まれた気分だと思う。
隼人がエプリサイトを起業してから、ずっと、
『奏音、お願いしていい?』
『うん』
と、中学時代、中間テストや期末テストの前でも隼人に頼まれたwebサイトの開発の仕事を優先させてきた。
いわゆる学問の勉強するよりも情報システム開発の勉強をしたいと高等専門学校に通い、IT関係の国家資格取得もした。
隼人を無視し、全く使われてない私の部屋に入ると外出するために着替える。
週末は地下にある食品スーパーへ行く以外は引きこもってて、服なんて何度も脱ぐから、何も身につけてなかったりしてた。
「……奏音、どこにいくんだ!!」
「ショッピング。気晴らしに渋谷をぶらぶらしてくる」
「……ちょっと待て、俺も一緒にいく」
いつもの私と違うから焦ってる隼人が急いで着替えてくるといって、ナノユニバースーのTシャツと黒のチノパンを履いて出てきた。
「……時間も時間だから、先に昼食べに行って渋谷にいこうっか!!」
私の左手を握ると手をひいてマンションからでて、走りのタクシーを止めて乗り込むと渋谷駅側にある割烹 二長に連れていってくれて、懐石料理のコースを食べさせてくれた。
「……奏音、どこ行きたい?ネットで購入してるファッションブランドの店にいくか?」
お腹が膨れ料亭からでると、すぐに私の左手を握り若い女性が集まる渋谷107の方へ足を向ける。
私のご機嫌をとり、なるべく早く家に戻り仕事をさせようとしてる気がして、わざと我がままをいって、都内をぶらついた。
「……奏音、そろそろ帰ろう」
夏だから、19時すぎてもまだ外は明るい。
でも、私がまだ未成年で17歳だからか、夜遊びは許して貰えなくて、最後は走りのタクシーに乗せられ強制的に連れて帰られた。
「アルコールが入る飲食店に奏音を連れて入れるか!!」
マンションに戻ると隼人がスマホで注文を入れてたケイタリングがちょうど届いた。
「……いらない。もうシャワー浴びて寝る。今日、ゲストルームのベッド使うから」
「ーー奏音、俺、奏音を怒らせる事したか?」
「子供扱いしないで。後……私は仕事の道具じゃない。そっとしといて。じゃなかった、実家のマンションに戻るから!!」
隼人は何もわかってない。
私の保護者気取りで、私と一緒にいるのは仕事で使えるから。
それから私は、ゲストルームのベッドで眠り、週末、隼人がウチにいる時間は自分の部屋で過ごすした。
私が避けてるからか隼人は週末も昼前に目覚めたら仕事に出てた。
インターンシップで昼間は仕事をしていても、家では全く何もしなかった。
2週間、こんな生活を送った。
****
「奏音ちゃん、片桐と喧嘩してる?あいつ、最近、週末も会社にきて仕事していて、平日も社長室にずっとこもってるし……」
仕事をしてる時に、中条専務と相葉専務に呼び出され、ミーティング室に連れてかれた。
「……長く付き合ってると喧嘩もするわな。あいつの仕事のやり方は俺らもついていけないとこあるし。次々と新しいサイトを追加するなといってるのに聞かないからな。奏音ちゃんがやらないからと1人でやろうとしてる。しばらくほっとこう」
私が隼人に頼まれた仕事を家でしてない事だけ伝えた。
私が隼人の婚約者というのはたぶん知ってる。
当時15歳の私を引き取り、家に住まわせるのに婚姻届を書いた。
でも、未成年者の結婚には親の同意が必要で、両親が亡くなった私は20歳までは結婚できなかった。
法律改正で、成人年齢と結婚年齢がイコールになることで、民法改正案によって、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる事で、男女共に18歳になれば親の同意なしに結婚できるようになり、私の誕生日に籍をいれる事にはなってる。
私の親戚への説得に、普通では考えられないけど、隼人は弁護士をたてて、父と母の遺産を親戚に分配し、今後一切縁を断つという誓約書を交わし、話をつけた。
小さいけれど会社を経営してた私の両親の財産狙いで私を18歳まで引き取ろうとした親戚を私から引き離してくれた。
「奏音ちゃん、あいつ、奏音ちゃんの事を相当大事に思ってるから、だから、なるべく早めに仲直りしてあげて」
大切にされてるのはわかる。
でも、それは愛してるという気持ちじゃない。
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