孕まされ婚〜こんな結婚したくなかった〜

鳴宮鶉子

文字の大きさ
上 下
8 / 10

結婚拒否した結果

しおりを挟む
このままでは戌の日に籍を入れて夫婦になってしまう……。

仕事中は常にわたしを横に置いてるけれど、家では食事の時以外はわたしが部屋に逃げるから桐谷とは話をしない。

会社帰りに、毎日桐谷家御用達の料亭 縁 で栄養満点の身体に優しい料理を頂く。
桐谷と向き合い、無言で食事をする。

仕事中も仕事に関する会話しかなく、桐谷はわたしと全く会話がなくプライベートも各自自由行動。
桐谷はわたしとの関係がこんななのに、夫婦になって子供を一緒に育てて幸せなんだろうか。

「……桐谷、わたしとプライベートで全く会話なくて各自自由行動なのに、夫婦になって子供を育て幸せになれると思う?
結婚辞めよう。子供の父親は桐谷だから、週末に合わせたりするから……」

料亭 縁で食事をしている時に、思い切って桐谷に行った。

この関係で夫婦になっても生活が息苦しいだけで、協力して子供を育てるなんて、無理。

「辞めない。美結と夫婦になって一緒に子供を育てる」

「わたし達、会話もなくてプライベート各自自由行動なのに、夫婦なんて、無理でしょ」

「……そんな事ない。大学時代から9年間、俺達、良い関係を築けてた。
俺が美結が誰か他の男に取られると思って、お前に子供を作って、既成事実を作って俺から離れないようにした。
俺は……どんな手を使っても美結が欲しかった。
美結……大事にする。だから、俺の奥さんになって。
……好きなんだ」

切なそうな表情でわたしを見つめ桐谷は言った。

「……美結、俺と向き合って、美結をこの世で1番幸せな奥さんにするから。だから、夫婦になって恋愛しながら子育てをして、家族になろう」

桐谷はわたしの事を愛してくれてる。
大学入学してから学科が同じで興味ある分野が同じで、気づいたらいつも一緒にいた。
車に詳しい桐谷。トミタの86に乗っていて、よく峠をドライブに連れて行って貰って、よく飲みにも行ってた。

桐谷がいう通り……友達として上手くいってた。

「………わかった」

結婚を取りやめにしたかった。
でも……桐谷と男友達として過ごした9年間は確かに毎日楽しかった。

桐谷が酔い潰れたわたしを抱いたことな幻滅して関係が崩れたけれど……。

でも桐谷がわたしを抱いたのがわたしの事が好きすぎてしでかした事で、桐谷と向き合い、将来を真剣に考える事にした。


戌の日、名古屋市内にある伊奴神社(いぬじんじゃ)に桐谷と両親達とお参りへ行った。
御祭神に「スサノオノミコト」と「オオトシノカミ」と「イヌヒメノカミ」を祀っていて、「イヌヒメノカミ」が安産、子授けにご利益がある神様とされていることと、犬は多産でお産が軽く安産なことから、桐谷がここの神社に決めた。

安産祈願の後、名古屋市内にある5つ星の料亭 清川 の個室で、お清めしていただいた腹帯を桐谷がわたしの少し出てきたお腹に巻いた。

「結婚式を省略する事になり、申し訳ございません」

「いえいえ、美結が妊娠悪阻で4ヶ月入るまで体調が優れなかったから仕方がないです。うちの娘が嫌がってたので気持ちを汲んで下さりありがとうございます」

料亭での食事の前に形式で結納を交わし、婚姻届に桐谷、わたしが名前等を記入した後に、桐谷の父、わたしの父の順で証人欄にサインした。

「美結、婚姻届を出したらあなたも桐谷の姓になるのだから、遥翔さんと名前で呼びなさい」

母に桐谷の事を下の名で呼ぶよう、咎められた。

「お母さん、長い間友人として付き合っていて名字で呼び合ってた仲だから、なかなか名前で呼ぶのは難しいと思います。夫婦になりますがまだ友達の関係から抜けてないです。これから恋人になり夫婦として家族になっていくので温かい目で見守って下さったらありがたいです」

桐谷……遥翔がわたしの母にそう言ってくれた。

わたしと遥翔はまだ距離感がある。

友達から友達以下になり、それなのに恋人通り越し夫婦になるから新婚夫婦のラブラブ感が全くない。

両親達はその事に気づいてる。

でも、お腹の中に芽生えた命の事を考え遥翔がわたしを大事にし愛してるからなんとかなると思ったようだった。

戌の日のお祝いの食事会を終え、わたしの両親を名古屋駅まで送った後、刈谷市役所に婚姻届を提出して、わたしと遥翔は夫婦になった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

終わりにできなかった恋

明日葉
恋愛
「なあ、結婚するか?」  男友達から不意にそう言われて。 「そうだね、しようか」  と。  恋を自覚する前にあまりに友達として大事になりすぎて。終わるかもしれない恋よりも、終わりのない友達をとっていただけ。ふとそう自覚したら、今を逃したら次はないと気づいたら、そう答えていた。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

社長はお隣の幼馴染を溺愛している

椿蛍
恋愛
【改稿】2023.5.13 【初出】2020.9.17 倉地志茉(くらちしま)は両親を交通事故で亡くし、天涯孤独の身の上だった。 そのせいか、厭世的で静かな田舎暮らしに憧れている。 大企業沖重グループの経理課に務め、平和な日々を送っていたのだが、4月から新しい社長が来ると言う。 その社長というのはお隣のお屋敷に住む仁礼木要人(にれきかなめ)だった。 要人の家は大病院を経営しており、要人の両親は貧乏で身寄りのない志茉のことをよく思っていない。 志茉も気づいており、距離を置かなくてはならないと考え、何度か要人の申し出を断っている。 けれど、要人はそう思っておらず、志茉に冷たくされても離れる気はない。 社長となった要人は親会社の宮ノ入グループ会長から、婚約者の女性、扇田愛弓(おおぎだあゆみ)を紹介され――― ★宮ノ入シリーズ第4弾

カモフレ

鳴宮鶉子
恋愛
カモフレ

処理中です...