授かり相手は鬼畜上司

まさかの妊娠

子供ができない身体なのに、毎月必ず紅い蜜が溢れ出る月の時は来ていた。

拓磨くんに毎日抱かれてるからホルモンバランスがおかしくなって生理が遅れてるのか、もしくは、閉経。
閉経してしまってもおかしくない身体。
5ヶ月ほど生理がきてなく、急に匂いに敏感になり、料理を作ろうとしたら気持ち悪くなり、胃がムカムカして食事も受け付けなくなった。
拓磨くんに結婚前提に付き合っている御令嬢がいるのではと頭によぎり、嫉妬できる立場ではないのにもやもやして、ストレスで胃がやられてしまった。
拓磨くんのご飯は作っても、自分のご飯は食べれないから作らない。

食べられない。
お酒も飲めない。
気休めにサプリメント飲むのが精一杯。

生理がこない事に対して煩わしさがなく、いつでも情事ができるから都合がいいと思っていたけれど、あまりの体調不良に以前お世話になっていた産婦人科に足を運んだ。

「……妊娠してますね。胎児の大きさから、20週と2日だね。産むならうちはお産は対応してないから別の産院探してね。堕胎するなら後……１2日以内に決断し、中期中絶になるから2泊3日入院になるから」

卵巣年齢45歳で妊娠不可能と診断された私がまさかの妊娠していた。

産まない選択はない。
だけど、拓磨くんに妊娠した事を打ち明けて夫婦になって子育てする気にはなれなかった。

「拓磨さん、札幌に住んでいる祖父が脳梗塞を起こして寝たきりになり、高齢の祖母では看護が難しいので、私、来月から札幌に移住します。仕事はリモートワークで続けます」

大学時代に両親を交通事故で亡くし、私にとって唯一の肉親は札幌にいる父方の祖父母だけ。

「……看護できる家族は他にいないのか？」

「……いません」

祖父は健在。
札幌には父の弟夫婦に妹夫婦、祖父母の兄弟がいる。

「……なら、仕方がないな」

嘘も方便
こんな虚言を社会人がしたらいけないけれど、妊娠を悟られず拓磨くんから離れるにはこの方法しかない。

札幌に移住してから退職する方向で仕事を引き継いでいき、子供が産まれる前に拓磨くんと関係を断とうと私は目論む。

マンションは家具家電付きの賃貸に出し、必要最低限の衣服以外は処分し、月末まで居らず週終わりに札幌に発った。