授かり相手は鬼畜上司

鳴宮鶉子

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ゼネコン御曹司の奥さん候補

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『杉瀬さん、Cタイプの間取り設計、OKでたよ。後、住宅機器設備の件、オプションでグレードあげる案、採用されたよ!!』

神崎チームのミーティング。
サブリーダーの堂本さんからの伝達。
拓磨君は設計に集中したいとチームミーティングには滅多に出てこない。

『杉瀬さん、メーカーとの交渉お願いね』

「はい、任せて下さい」

就業時間中は自分の家で仕事をしてる。

『オプションの設備機器、価格値切ってね』

「……はい」

意匠設計チームに配属されてから半年、拓磨君と付き合い始めてからは3ヶ月。
就業中に拓磨くんと対面した事はない。

『内装までに金が回らないからね。デベロッパーがマンションの価格を下げるからキツい。安全面とか考えると外装に予算かけないといけない。施工不備が出てしまったらうちの信用がガタ落ちになる』

ギリギリの予算で安全なタワーマンションの設計をしないといけない。

『久保工が低価格なタワーマンションを次々と建ててる。あれ、安全面大丈夫なのか?』

私も初期設計に携わっていた久保工のタワーマンションブランド“クラウドタワー”。
ブランド化させて24棟建てる制約で友住不動産と契約し、円高の時に買い込んでいたコンクリートや鉄剤などの建築材料があるから低価格を可能にした。

将生くんと“クラウドタワー”開発設計プロジェクトに参加していた時の事を思い出した。
元義両親が大学生だった私と将生くんに勉強になるからとプロジェクトに参加させてくれて、夫婦の新居予定だからと内装に関して提案をさせてくれた。

私が将生くんと東京大学建築学科に進んだ時点から、元義両親は私に対して嫁教育を始めてた。

私が子供ができない身体と知った時の義両親の落胆した表情。
義両親を失望させた事に対しての申し訳なさからくる罪悪感。

不妊症発覚から離婚までの辛かった日々を思い出し、気持ちが塞ぐ。

『マンション建設施工数、久保工がトップからな。タワーマンション施工も進出してきて、今、勢いがある』

堂本主任のたわいない話を聞いているのがとても辛かった。

『神崎も32歳だろ。来年あたり神崎工務店に戻ると思うし、馬島ヤバー』

「神崎係長、……神崎工務店の御曹司なんですか!?」

『そうだよ。修行と嫁探しで馬島建築で働いてる』

神崎不動産は西日本トップの建築施工会社。
その地に合った求められた建築物を建てるから派手さはない。
だけど、国内だけでなく海外からも評価されてる。

『神崎、結婚前提で付き合ってる彼女いるみたい。杉瀬さん、もしかして狙ってた?』

拓磨くんもまさかの会社を背負う御曹司と知り、ショックだった。
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