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ただの友達に戻ろう
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「将生くん、なんでここにいるの?建設設計本部から営業部に異動になったの?」
次期社長の将生くんがモデルルームで営業をするはずがない。
デベロッパー(マンションは分譲する会社)から施工を依頼され建設するだけ。
「建設設計本部でタワーマンションの意匠設計してるよ。ここの責任者に“杉瀬結衣”って子から見学予約入ったら連絡して欲しいとお願いしてた。なかなか来てくれないから、2度と会う事ができないかもって諦めかけてた」
ーー 2度と会いたくなかった、私は。
「結衣、今、馬島建設の建設設計部にいるんだろ?」
「……なんで知ってるの」
「……人づてに知った。内装設計に携わる部署で住宅設備機器の設計に携わってるって聞いた」
大学も学部学科も同じだったから、共通の友人は多い。
「結衣が居なくなって俺、身体が半分なくなった気がした。子供ができない事で俺の両親から離婚するよう迫られ結衣が苦しそうだったから解放してあげないといけないと思ったが、……後悔してる。結衣がそばにいないと、俺、ダメだ」
モデルルーム見学に来て元夫と再会し、復縁を求められてる事に焦る。
「……内装視察に来ただけで購入するつもりはないので帰ります。同業者に見せるの嫌でしょ」
「見てって。結衣に見て貰いたい。内装は馬島に負けてないから」
将生くんが私の手をとり、模型ルームに案内してくれた。
住居は憩いの場。キッチンスペースも広く、設備のグレードも高い。収納スペースも使い勝手がよさそうだった。
「結衣、久保工に帰ってきてくれないか。跡取りの重圧が苦しいなら再婚は求めないから」
「……ごめんなさい。久保工には戻りたくない。将生くんと離婚したし、将生くんの傍にはいられない」
元嫁が再就職なんて、できない。
「じゃあ、友達として付き合って欲しい」
両手を掴まれ、目をじっと見つめられ、金縛りにあったように動けない。
「毎週金曜日、帝王ホテル銀座のレインボーライオンに行くから来て、待ってる」
次の来場者に商談ブースを空け渡さないといけないのもあり、外では人目がある事から、解放された。
私が帝王ホテル銀座のレインボーライオンの会員で常連という事を将生くんは知ってる。
もしかしたら私がレインボーライオンでワンナイトラブの相手探しをしてる事と若いバーデンダーをセフレにしてる事を知ってるかもしれない。
「レインボーライオンには2度と行けないわ」
将生くんと別れてからずっと狂ったようにワンナイトラブの相手を探して関係を持ってたけど、今はまったくしてない。
“彼”のおかげ。
お酒を呑んで泣いてる同業者の私に話しかけてくれて、仕事やプライベートな話をじっくりと聴いてくれて慰めてくれた“彼”に、私は救われた。
“彼”のおかげで正気に戻れた。
狂っていた私を正気に戻してくれた“彼”に逢いたい。
次期社長の将生くんがモデルルームで営業をするはずがない。
デベロッパー(マンションは分譲する会社)から施工を依頼され建設するだけ。
「建設設計本部でタワーマンションの意匠設計してるよ。ここの責任者に“杉瀬結衣”って子から見学予約入ったら連絡して欲しいとお願いしてた。なかなか来てくれないから、2度と会う事ができないかもって諦めかけてた」
ーー 2度と会いたくなかった、私は。
「結衣、今、馬島建設の建設設計部にいるんだろ?」
「……なんで知ってるの」
「……人づてに知った。内装設計に携わる部署で住宅設備機器の設計に携わってるって聞いた」
大学も学部学科も同じだったから、共通の友人は多い。
「結衣が居なくなって俺、身体が半分なくなった気がした。子供ができない事で俺の両親から離婚するよう迫られ結衣が苦しそうだったから解放してあげないといけないと思ったが、……後悔してる。結衣がそばにいないと、俺、ダメだ」
モデルルーム見学に来て元夫と再会し、復縁を求められてる事に焦る。
「……内装視察に来ただけで購入するつもりはないので帰ります。同業者に見せるの嫌でしょ」
「見てって。結衣に見て貰いたい。内装は馬島に負けてないから」
将生くんが私の手をとり、模型ルームに案内してくれた。
住居は憩いの場。キッチンスペースも広く、設備のグレードも高い。収納スペースも使い勝手がよさそうだった。
「結衣、久保工に帰ってきてくれないか。跡取りの重圧が苦しいなら再婚は求めないから」
「……ごめんなさい。久保工には戻りたくない。将生くんと離婚したし、将生くんの傍にはいられない」
元嫁が再就職なんて、できない。
「じゃあ、友達として付き合って欲しい」
両手を掴まれ、目をじっと見つめられ、金縛りにあったように動けない。
「毎週金曜日、帝王ホテル銀座のレインボーライオンに行くから来て、待ってる」
次の来場者に商談ブースを空け渡さないといけないのもあり、外では人目がある事から、解放された。
私が帝王ホテル銀座のレインボーライオンの会員で常連という事を将生くんは知ってる。
もしかしたら私がレインボーライオンでワンナイトラブの相手探しをしてる事と若いバーデンダーをセフレにしてる事を知ってるかもしれない。
「レインボーライオンには2度と行けないわ」
将生くんと別れてからずっと狂ったようにワンナイトラブの相手を探して関係を持ってたけど、今はまったくしてない。
“彼”のおかげ。
お酒を呑んで泣いてる同業者の私に話しかけてくれて、仕事やプライベートな話をじっくりと聴いてくれて慰めてくれた“彼”に、私は救われた。
“彼”のおかげで正気に戻れた。
狂っていた私を正気に戻してくれた“彼”に逢いたい。
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